研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
ヘテロ原子間結合活性化による新物質・新反応の開拓
2.研究代表者
田中 正人(物質工学工業技術研究所 部長)
3.研究概要
 機能材料や機能物質としての有用性が期待されるにもかかわらず、分子レベルでの金属錯体との反応性の研究が比較的少ないヘテロ原子(周期律表13族から17族に属する原子)を含む物質群につき、その反応性を検討し、それを応用して新規な触媒的合成反応、機能材料用素材、機能性高分子化合物等を開拓する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 このチームは基本的には遷移金属錯体を用いてヘテロ原子の活性化を試み、当初のもくろみ通り世界的にも類例の少ない種々のヘテロ元素間の結合開裂反応を開拓した。反応系が広がって分散的に見えるが、今後ターゲットを絞って幾つかの材料に絞り込み、共同研究的展開が進めば、これらの要素研究が意味を持つと思われる。反応で得られた新規物質の評価に関し、サンプルの供与による他研究機関とのジョイントを積極的に考えて良い時期にきた。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 今までに、金属−ヘテロ原子間結合の形成・反応挙動の解明に関し、(1)遷移金属錯体を用いるリン化合物の活性化、(2)14族カルコゲニド化合物の活性化、(3)ホウ素とケイ素またはスズの導入反応、(4)高配位オリゴシランの合成、(5)ヒドロシランの反応、(6)ビスマス化合物の創製とテーマを区分して多彩な研究がなされ、将来的実用に繋がる触媒反応や素材の開発に一部成功している。特に遷移金属錯体触媒によるホスホン酸ジエステルなどのアルキン類への効率的な付加反応(ヒドロホスホリル化反応)を開発し、ビニルリン化合物を合成することに成功した。
 この付加反応系は従来のラジカル付加型反応とは選択性において差があり、独創的な仕事として評価される。今後難燃剤や農薬等へ工業化も検討されようとしている。
4−3.総合的評価
 当初の研究計画(狙い)より、その後の研究進展が加速度的で、扱う元素が増え、かつ反応挙動の検討も増加したので、焦点が定まっていないと見られやすいが、今後機能材料としての有用性を他研究機関と共同で押さえることにより、インパクトの高い成果へと結実する可能性を持っている。期待したい。

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