研究課題別中間評価結果

 
1.研究課題名
生体機能分子の設計と精密分子認識に基づく反応制御
2.研究代表者
齋藤 烈(京都大学大学院工学研究科 教授)
3.研究概要
 この研究では最新の分子科学的手法を結集して、1)全く新しいタイプの遺伝子治療剤として、任意のDNA配列をタ−ゲットとするDNAアルキル化剤のデザイン、2)遺伝子診断のためのミスマッチ検出試薬の開発、3)種々の非天然人工DNAの合成と応用、4)DNAの光電子移動の研究、5)光を用いる遺伝子操作手法の開発、6)坑がん剤の増強剤の開発、を行なっている。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 齋藤チームは、遺伝子治療や遺伝子診断に必要な超機能分子(DNA)に関する研究で、分子の構造特異性をうまく認識する、あるいは操作する手法の開発を行なっているが、当初の計画を上回るスピードで新しい試薬開発等がなされた。チームのコンビネーションも良くDNA関連の「化学」が生まれようとしている。今後任意の配列でDNAをアルキル化するドラッグの開発や、新しい概念に基づく遺伝子診断法の開発へ進むことになるが、一層の進展が期待できる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 今まで、すでに既知の効率よい活性アルキル化分子をもとに、新しい塩基配列を認識する分子を組み込んだ系をデザインし、自身がhead to tailに自己会合し任意のサイトをダブルアルキル化するドラッグの開発に成功した。これらのいくつかは天然物をはるかに越える坑がん活性を持ち、新しい生理活性物質として医薬品やバイオテクノロジーへの展開も期待される。また、将来に不可欠な遺伝子診断法を確立するためのミスマッチ検出法(SNPs)として、GGミスマッチを特異的に認識する分子の開発に成功している。
さらに、DNAの光電子移動の研究でも、大阪大学グループとの共同でその電子移動メカニズムを世界に先駆け理論的に解明した。
 この分野は世界中で多くの研究者が競合しあっているが、世界的にも一歩リードしているといえる。製薬企業や診断薬メーカーも非常に注目している成果である。制がん剤はもとよりコンビケミストリーの応用によるアッセイ法の開発や、簡易診断法の開発等指呼の距離に入った。
4−3.総合的評価
 独自な発想から生み出された遺伝子の認識や操作に関する概念は、今後この分野の重要な鍵になると考えられる。今後はバイオテクノロジーの中の化学のトリデの構築を目指し、関係企業等との連携も加味して、日本産の技術に仕上げて欲しい。

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