研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
低次元超構造のコンビナトリアル分子層エピタキシー
2.研究代表者
鯉沼 秀臣(東京工業大学 応用セラミック研究所 教授)
3.研究概要
 この研究は人工的に設計された組成、超格子、ナノデバイス等についてコンビナトリアル手法による超高速合成法を開発し、よって新たな物質機能を組織的に探索することを目的とする。また並行して、得られた集積膜の高速評価法や高速材料設計のための計算化学プログラムを新たに開発し、新物質とその機能探索の効率を画期的に高めていく。
 コンビナトリアル材料探索の3要素の一つである 「高速合成」については、東工大Aグループが中心となって、レーザMBE手法とコンビナトリアルマスク機構とを組み合わせた、「コンビナトリアルレーザMBE」および「コンビナトリアル超格子作成」装置の試作機を完成した。また「計算設計」については、東北大グループを中心に、大規模系の結晶成長過程をシミュレーションする方法や、化学反応をシミュレーションする計算方法の開発を行なっている。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 有機・薬学の分野で考案されたコンビナトリアルケミストリーを無機・薄膜材料に適用し、特に重要なコンセプトとして操作上問題の多い焼結プロセスを同一チャンバー内で行なって、人為的エラーを伴わない方式を具現化し、当初の狙い通り完成させたことは特筆に値する。この「高速合成」に対し、共同研究者らとタイアップして「高速評価」「計算設計」も軌道にのせた。この延長として平成11年6月より無機材研先導プログラムに活用が決まり、広範な無機材料の材料革命が期待できる。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 コンビナトリアルレーザMBEを世界に先駆けて完成させ、系統的な無機薄膜合成を可能にした。現在までに試料サイズが1mmから2-3mmの試料を10〜15mm角の基板に〜10個集積できる技術を確立している。また、走査型RHEEDシステムを用いた超格子作成では、「高速評価」の一つとして新しく開発された『一括X線回折装置』によって、周期構造等を迅速に調べることができた。また有機材料への応用として、東工大Bグループを中心に、有機π電子ポリマーについて真空蒸着とマスキングの組合せによる積層薄膜ライブラリーを作成した。 これらの優れた着想と具現力、それによる新概念の提起は評価が高い。現在までは装置開発とその性能チェックに重点があったが、今後は本来の目的たる超構造材料、多機能積層材料等の開発に移る。今開発中のレーザ発振材など新材料発掘の期待は高い。
4−3.総合的評価
 非常にアクティブな研究集団で、コンビネーションもよく、今後の無機材研プログラムとも相まって、無機材料、電子材料の革新に大きな仕事が出る予感がある。材料開発の面で応援していきたい。

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