研究課題別中間評価結果

 
1.研究課題名
準結晶の創製とその物性
2.研究代表者名
蔡 安邦 (金属材料技術研究所 主任研究官)
3.研究概要
 結晶、アモルファスに次ぐ第3の物質として「準結晶」が発見されたが、その原子配列、磁気配列、電子物性、力学特性等に関して全貌が未だ明らかでない。本研究では新しい準結晶合金の開発および高品質大形単準結晶の育成を行ない、それを用いてX線、電子線、中性子線回折実験、電子顕微鏡直接観察、電気伝導度、帯磁率、原子振動の測定、圧縮試験等を行なって準結晶の構造、物性、力学特性を含めた全貌の解明を目指している。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 当研究チームは以前から新準結晶物質の開発に成果を挙げ、他から注目されている存在である。当研究では、新しい準結晶物質の創製および良質大形単準結晶の作成が研究進捗の鍵を握るものとして特にそれらに力を入れている。当チームが以前に発見したAl-Pd-Mn、Al-Ni-Co系に続く新物質としてZn-Mg-RE(希土類元素)系の準結晶、更にはCd-Mg-RE系準結晶を創製し、また種々の準結晶の良質大形単結晶の育成にも成功した。これらの良質試料を用いた実験から種々の成果が挙がっており、研究が予定通り順調に進んでいる。
 当チームは研究代表者を中心に良く纏まって活発に研究を進めており、特に若手の活躍が目に付く。新しく発見した準結晶系物質を対象に加え、準結晶構造の解明、物性研究等をこれまでと同様に推し進めて行く。また、特異な構造を有する準結晶物質の用途を視野に入れ、応用面の開発を同時に進める。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 準結晶試料に関する成果としてはZn-Mg-RE(希土類元素)系の創製、その系の様々な組成を持つ準結晶の作製、それに続く新準結晶Cd-Mg-RE系の創製、またAl-Pd-(Fe,Ru,Os)、Al-Ni-Co、Al-Cu-(Fe,Co)、Al-Pd-(Mn、Re)、Zn-Mg-Ho、Zn-Mg-Y等の系についての単準結晶の育成である。当研究チーム作製の単準結晶は良質且つ大型である。これらの単準結晶を用いて種々の精密な実験を行なった。その結果から、準結晶の原子配列構造に関する有用な新概念を導出した。また、希土類元素を構成要素にもつ準結晶の特異な磁気構造を明らかにした。力学特性では準結晶変形機構を圧縮実験および計算シミュレーションによって詳細に追究した。
 新たに創製したCd-Mg-RE系の相図を系統的に調べている。これにより準結晶の研究対象が更に広がる。この系の発見は世界の準結晶研究者の目を再た当研究チームに引き付けることになろう。新準結晶物質の開発、準結晶の原子配列構造に関する最先端的研究ならびに新概念の提唱、準結晶の磁気構造に関する研究、準結晶変形機構の研究などが世界の準結晶研究分野に与えてきたインパクトは大きい。今後は更に準結晶構造に関する新概念の検証を進めて原子配列に関する理解を深め、また特異な物性の探索を進めること等から一層の成果が期待できる。それに並行して準結晶物質の応用面の開発にも期待が持てる。
4−3.総合的評価
 当研究チームは準結晶の研究でこれまでに幾多の優れた成果を挙げており、世界の準結晶研究において果たす役割は極めて大きい。新準結晶物質の作製、良質単準結晶の育成、準結晶構造の解明、物性研究、変形機構の解明の全てにおいて最高のレベルにあり、世界の準結晶研究の牽引役としてその発展に果たしている役割は極めて大きい。

  戻る