研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
新世代型低負荷環境保全技術による廃棄物のエネルギー化・再資源化
2.研究代表者名
野池達也 (東北大学工学部 教授)
3.研究概要
 都市廃棄物の易分解性廃棄物(廃水、生ゴミ、汚泥)と難分解性廃棄物(廃プラスチック)について、その再資源化およびエネルギー化を行う。易分解性廃棄物は、水素発酵で水素ガスを回収し、残渣は、重金属除去ののちコンポスト化する。廃プラスチックは化学製品等に資源化する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 有機性廃棄物(おから、米糠、小麦ふすま)および高濃度炭水化物含有の製麺廃水からの水素回収を行い、それぞれ水素収率(mol/mol hexose)は2.5(おから)1.3(米糠)1.7(小麦ふすま)を得ている。嫌気性水素発酵細菌の各種嫌気性環境からの探索では、有用な菌の単離・同定に成功した。又、嫌気性消化汚泥から水素発酵細菌群の回収を行い、熱処理によって水素発酵汚泥への改質に成功した。水素収率を高めるため、水素発酵と光合成を2段階工程とする高水素収率プロセスの開発を進めている。水素生産後の残渣からの重金属除去では、pH低下と基質添加、基質無添加での鉄酸化細菌の評価を行い、水銀耐性菌については、遺伝子工学的手法による、特性の解明と耐性強化への応用を検討している。残渣のコンポスト化を高温下で効率的に進めるため、耐熱性酵素の探索、遺伝子取得と安全性を評価、確保するため、下水汚泥、コンポストからの病原細菌やウィルスの定量的検出法と安全性評価手法を研究している。難分解性廃棄物については廃プラスチックのアルカリ処理による原燃料化の実験的な見通しを得た。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 水素回収率は今のところ46%(水素発酵12%、光合成34%)だが、今後、見通しとして、66%(水素発酵20%、光合成46%)が得られると予想している。水素発酵の前駆物質として炭水化物のみならず、脂質、タンパク質から水素生成機能を有する嫌気性水素発酵細菌の単離・同定に成功した。各種重金属除去細菌による重金属溶出条件の解明、水銀耐性菌の水平伝播遺伝子による分子育種等についても見通しを得ている。コンポスト化のための高温環境下で活性保持の耐熱性酵素と遺伝子の取得に成功し、今後は、安全性確保を含む、実用的見地の研究成果が望まれる。廃プラスチックは原燃料化について実験的には7割方見通しを得ているが、経済性評価を含む実用化条件検討を必要とする。
4−3.総合的評価
 微生物利用による水素生産技術の開発という微生物工学分野では、ほぼ、研究目標に対して、所期の成果をあげつつある。有用細菌類の探索、単離、同定や水銀耐性菌の遺伝子工学的特性等、興味深い結果も得られている。課題としては、従来技術との対比における優位性の確立、実用性を保証しうるシステム技術としての組み立てと、その見通し等、実用化を念頭においた、検討が望まれる。適当な段階で研究範囲の焦点を絞る必要がある。

戻る