研究課題別中間評価結果

1.研究課題名
地球環境保全のための国際的枠組みのあり方
2.研究代表者名
佐和隆光 (京都大学経済研究所 教授)
3.研究概要
 1997年の第3回気候変動枠組み条約締結会議(COP3)でCO2削減目標が定められ、京都メカニズムと称される枠組みが議定書として定められた。わが国が本目標を達成するためには、開発すべき技術の検討・評価を踏まえた、国際協力の枠組み作りが必要となる。本研究では、技術評価を行い、すでに提案されている国際協力の枠組みの長短と実現可能性を理論的かつ実証的に解明し、効率的かつ公正な国際協力の枠組みを構想し提案する。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 京都議定書に盛り込まれた排出権取引、共同実施、クリーン開発メカニズム等の国際制度の制度設計について、主として政治経済学的観点からゲーム理論、実験経済学、制度論、モデル分析等により、枠組みのあり方を研究してきた。成果は、第4回気候変動枠組み条約締結会議(COP4)をはじめとして、第5回気候変動枠組み条約締結会議(COP5)の準備会合、本会議等で報告されている。一方、国際協力の視点からはアジアの発展途上国経済と環境問題の関わりをモデル分析により明らかにしてきた。技術戦略では、長期・マクロの視点から地球温暖化防止の技術戦略をモデル分析により評価してきた。成果は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:国連の組織)の特別報告書等にあげられている。今後、国際制度設計と技術戦略の二軸に焦点を絞って、日中韓共同研究によるクリーン開発メカニズム(CDM)の実証的研究、京都メカニズムに関わる、理論的分析による具体的提案、技術戦略に関わる具体的提案としての、開発・投資・エネルギー戦略及び、技術移転のあり方をモデルを超えて、基本的なシナリオとして設定、評価する。いずれも、欧米、アジアの研究者と交流を深めつつ、わが国の代表的研究集団として、気候変動枠組み条約締結会議をはじめ、世界的な場で積極的に成果を問う。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 国際制度設計においては、理論的分析の成果として、実験経済学を中心に国際的な認知を得ている。実証的研究としてクリーン開発メカニズムに関わる日中韓共同研究は基本的な枠組みについて地歩を固め終え、3国の産・官・学の注目を集めた。また、技術戦略評価ではモデル分析を中心にIPCC等の報告書等において研究成果の寄与が認められる。今後は、気候変動枠組み条約締結会議を中心に、理論的、実証的な京都メカニズムに関わる研究成果のアピールと、技術戦略のモデル分析を超えた、具体的戦略シナリオの提案が期待される。先進国戦略の例えばアーリーアクションといった視点に関して、本プロジェクトの独自戦略が提起され、その評価が国際的に定評のある主張と比肩される認知度が期待される。
4−3.総合的評価
 国際制度設計と技術戦略の二軸において、システム科学的、社会科学的シアプローチの活用、やや地域的に限定されるが国際的活動の充実、認知等それなりに成果をあげており、焦点も絞られてきている。今後はさらにターゲットを明確に絞り、世界的に定評・言及を得ている主張と比肩し、対置、認知されるような具体的提言を目標にして研究に拍車をかけることが期待される。

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