研究課題別中間評価結果

 
1.研究課題名
サンゴ礁によるCO2固定バイオリアクター構築技術の開発
2.研究代表者名
茅根 創 (東京大学大学院理学系研究科 助教授)
3.研究概要
 サンゴ礁は、光合成/石灰化を通じて活発に炭素(CO2)循環に関わっている。本研究は、サンゴ礁生態系についてフィールド調査を行い、CO2循環を明かにすることにより物質循環モデルを構築することを目的としている。8、9年度においては、サンゴ礁海水中のCO2計測装置の開発を実施し、10年9月から1年間にわたり石垣島白保において裾礁型サンゴ礁について通年観測を実施した。次に、11年11月からは、保礁型サンゴ礁であるパラオ諸島において通年観測に着手しているところである。
4.中間評価結果
4−1.研究の進捗状況と今後の見込み
 海水中のCO2濃度を計測するための可搬式の自動連続計測装置を開発した。小型化を成功させた一つの要因は、気体透過膜型の平衡器の実用化にあった。これらの計測器を搭載した総合型計測システム「クレスト号」(小型船上に設置)を石垣島白保サンゴ礁上に係留して、1998年9月〜1999年9月窓の1年間のCO2変動について通年観測に成功した。通年観測で測定した項目は、海水・大気CO2濃度のほか、水温、塩分、溶存酸素、流れ、水位、光量子、気象などの物理量である。また、その間に研究者が現場において集中観測を5回行い、全炭酸、アルカリ度、栄養塩、有機物などを測定した。
 パラオサンゴ礁の観測のために、計測器を海中設置型の自動計測装置を開発した。現在、
これらの計測装置を使用して、パラオサンゴ礁の通年観測を進行させているところである。これらの結果を合わせて、サンゴ礁によるCO2固定について、一般化をはかって行く予定である。
4−2.研究成果の現状と今後の見込み
 石垣島白保サンゴ礁における通年観測において、サンゴ礁海水中のCO2濃度は、日中200μatmから600μatmまで、きわめて大きな日周変動を繰り返していることを通年計測できた。基本的に、日中のはCO2濃度は低下は光合成に、夜間の上昇は呼吸に対応している。さらに、冬季にはCO2濃度は低く、夏季には高いという明瞭な季節変化があることが明らかになった。白保サンゴ礁群の純光合成生産は、40‐120mmolCm−2 d−1 、石灰化生産は170mmolCm−2 d−1 である。
 パラオサンゴ礁においては、陸域―ラグーンーサンゴ礁―外洋というスケールでの炭素などの収支について明らかにし、一般化をはかる予定となっている。
 今後、(1)生態系―物理モデルの構築:サンゴ礁における一般的な構成要素の決定、(2)炭素循環モデルの構築:CO2濃度変化の循環モデルによる説明、(3)生態系―炭素循環モデルの構築:栄養塩までを含んだ循環モデルの構築、(4)モデルの一般化などについて研究を進める予定である。
4−3.総合的評価
 サンゴ礁について、炭素循環メカニズムの解明が進んでいることが評価できる。計測装置の開発についても評価できる。ただし、純一次生産力(NPP:光合成生物による有機物生産量(炭素固定量)と生物自信の呼吸により消費される炭素量との差)についての考察を深めて行く必要がある。また、バイオリアクタ−提案を纏めることが課題である。

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