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分子イメージング研究プログラム

PDからのメッセージ

21世紀、国民が科学技術に期待することのひとつは健康です。本プログラムでは、この社会ニーズに応えるため、病気の早期診断や新薬開発の迅速化などを目的とした分子イメージング研究の拠点整備を行い、日本の医療に貢献したいと思います。
分子イメージング研究は、身体に負担をかけずに、タンパク質や化合物などの生体中にある特定分子の分布を画像として計測する手法やその応用の研究です。例えば、この手法で生体中の、ある種のブドウ糖分子の分布画像を計測すると、癌細胞にはブドウ糖が集中するため、癌の早期診断や領域把握に役立ちます。
分子イメージングの計測手法は、特定分子に印を付ける薬剤(分子プローブと呼びます)技術、印の付いた分子を生体外から計測する撮像技術、その撮像画像を解析する情報処理技術の三つから成っています。現在、世界中でさまざまな技術が研究されておりますが、本研究プログラムでは、印をつける薬剤として主に放射性同位元素を使い、撮像技術としてPET(Positron Emission Tomography:陽電子断層撮影法)を使った技術を中心に研究を進めます。それはこの研究が、今後十年間の分子イメージング研究全体を牽引し、特に社会貢献が大きいと考えるからです。

分子イメージングでは、特に新しい分子プローブ探索が重要で、有効な分子プローブにより生命活動をになう分子の挙動などをつかみ、生命の本質にせまると共に個人に最適な医療の実現につながると考えています。今後、世界に先駆けた研究を行うため、次のような方針で、研究拠点を整備し、日本の医療に貢献する成果を出してまいります。

「創薬候補物質探索拠点」と「PET疾患診断研究拠点」の2拠点を整備。

 新薬開発の迅速化と費用削減などに向けて研究を行う「創薬候補物質探索拠点」、病気の早期診断や治療経過評価等につながる研究を行う「PET疾患診断研究拠点」を整備します。平成17年度に公募を行い、多数の応募の中から、審査検討会により、それぞれ(独)理化学研究所、(独)放射線医学総合研究所が採択されました。

学際的研究の場の構築。

 分子イメージング研究では、上に述べたように多くの領域の技術が必要なため、薬学、化学、医学、工学、理学など、多分野の研究者が協調して学際的な研究ができる拠点を創り、研究を加速いたします。具体的には、学際研究に適した形で、人材、組織、建物・設備などを整えてまいります。

大学連携による人材育成。

 今後、社会的に要請が急増する、分子イメージング領域の人材を育成する体制、制度を、大学を含めて整えてまいります。例えば、大学院に分子イメージングの特別コースを設置して、研究拠点との間で、学生、研究者、教員の交流を行います。

外に開かれた研究拠点の構築。

 欧米政府は数年前から分子イメージングに巨額な研究資金を投入しており、既に世界的大企業も積極策を取り始めております。日本医療の薬や機器などの全面的海外依存を避けるため、2期にわたる科学技術基本計画の成果や物つくり力など、我が国固有の強みを生かして高付加価値イノベーションを一刻も早く達成することが必要です。そのため、2つの研究拠点はグローバルな視点を持つ、国内外に開かれた、広く研究者が利用できる場として、ここを核にした産学官のオールジャパン体制を狙います。