ピックアップ論文紹介

書誌情報
Curr Biol. 2011 Jan 11;21(1):45-52.
著者
Ruiz S, Panopoulos AD, Herrerías A, Bissig KD, Lutz M, Berggren WT, Verma IM, Izpisua Belmonte JC.
論文概要

 ヒトES細胞は増殖速度が速く、主にS期(DNA合成期)とM期(有糸分裂期)から構成されるユニークな細胞周期を示す。短いG1期(M期とS期の間)は分化因子への応答を抑制するなど、ES細胞の細胞周期制御と未分化状態の維持は密接な関係があると考えられているが、その詳細に関しては未だ不明な点が多い。そこで、著者らはiPS細胞作成時のリプログラミングと細胞周期制御機構に着目し、細胞増殖とリプログラミング効率との関連を明らかにした。


書誌情報
Cell Stem Cell. 2010 Dec 3; 7(6): 671-681.
著者
Neveu P, Kye MJ, Qi S, Buchholz DE, Clegg DO, Sahin M, Park IH, Kim KS, Daley GQ, Kornblum HI, Shraiman BI, Kosik KS.
論文概要

体細胞からiPS細胞へのリプログラミングには様々な方法が開発されているが、そのゴールである「多能性」はある程度の均一性が保たれた状態であると考えられていた。この論文の著者らは、ヒトES細胞やヒトiPS細胞を用いてmicroRNA (miRNA)の発現プロファイルを解析し、その発現パターンからヒトiPS細胞とヒトES細胞はそれぞれ二つのグループに分類できることを見出した。さらにこれら二つのグループでは、p53ネットワークの活性化状態が異なることが示され、多能性とmiRNAの発現パターン、そしてp53ネットワークの活性化レベルに相関を見出した。


書誌情報
Cardiovasc Transl Res. 2010 Nov 19. [Epub ahead of print]
著者
Montserrat N, Bahima EG, Batlle L, Häfner S, Rodrigues AM, González F, Belmonte JC.
論文概要

ブタはマウスやラットなど齧歯類に比べて生理学的にヒトに近く、さらにサルよりも倫理的に扱いやすいという利点から、ブタiPS細胞は再生医療への応用が期待されている。しかし、これまでのブタiPS細胞の作製には時間がかかることや、レトロウイルスおよびレンチウイルスでの導入が困難であると報告されている。そこでBelmonteらは、ブタ成体の耳から採取した線維芽細胞に、CAGによって発現制御を受け、Oct4、Sox2、Klf4、c-MycおよびGFPをコードするポリシストロニックプラスミド(pCAG-OSKMG)をシングルトランスフェクションし、さらにフィーダー細胞を用いない条件下でブタiPS細胞の樹立に成功した。


書誌情報
Nature. 2011 Feb 3;470(7332):105-109. Epub 2010 Dec 12.
著者
Spence JR, Mayhew CN, Rankin SA, Kuhar MF, Vallance JE, Tolle K, Hoskins EE, Kalinichenko VV, Wells SI, Zorn AM, Shroyer NF, Wells JM.
論文概要

iPS細胞を肝実質細胞や膵内分泌細胞へ分化させることについては、実験レベルのシャーレを用いた単層培養系で成功しているが、生体内のように複雑極まりない3次元的な臓器の構築には至っていない。本論文は、ヒトESおよびiPS細胞を、フィーダー細胞を用いずに内胚葉から発生初期の後腸へ分化誘導させ、次いで球状細胞塊(spheroids)が観察されたところでマトリジェルを用いた3次元培養を行ない、ヒト小腸様組織を形成させることに初めて成功した。


書誌情報
Nat Genet. 2010 Dec;42(12):1113-1117.
著者
Loewer S, Cabili MN, Guttman M, Loh YH, Thomas K, Park IH, Garber M, Curran M, Onder T, Agarwal S, Manos PD, Datta S, Lander ES, Schlaeger TM, Daley GQ, Rinn JL.
論文概要

本論文では、large intergenic non-coding RNA (lincRNA)の発現がヒトiPS細胞作製の効率と品質の向上に関与していることを明らかにした。

lincRNAとは非翻訳(タンパク質をコードしない)RNAの一つで、哺乳類のゲノムには広く保存されており1,000以上が見つかっている。lincRNAは、クロマチン修飾コンプレックスと相互作用しており、細胞周期、免疫監視機構、ES細胞(胚性幹細胞)の多能性の維持などに関与していることが報告されているが、機能やそのメカニズム関しては未だ不明な点が多い。そのようなことから本論文では、筆者らはiPS細胞作製時のリプログラミングにおける、lincRNAの機能の重要性について解析を行った。


書誌情報
Nat Biotechnol. 2010 Oct;28(10):1079-1088.
著者
Meissner A.
論文概要

遺伝子のエピジェネティックな発現制御は、遺伝子配列の変化を伴わずにDNAまたはヒストンのメチル化等の化学修飾により行われ、その制御は細胞分化や疾患に関与している。山中教授らにより初めて作製されたiPS細胞では、E-RasやDax1などの未分化特異的遺伝子は発現していたが、内在性のOct4のプロモーターはメチル化されており、このようなiPS細胞を用いた場合にはキメラマウスは作成できなかった。しかしその後、内在性のOct4とNanogが発現しているiPS細胞を選択して調べたところ、それらの遺伝子プロモーターは脱メチル化されていることが確認され、さらにキメラマウスの生存および、生殖細胞への分化が確認された。これらの事実から、エピジェネティック修飾の観点からも、iPS細胞の特性を検証することが大変重要であると考えられている。本論文では、細胞の分化とリプログラミングにおけるエピジェネティックな制御について、DNAとヒストンのメチル化に重点を置き、これらの役割や制御メカニズムについて解説している。


書誌情報
Cell Stem Cell. 2010 Nov 5;7(5):618-630.
著者
Warren L, Manos PD, Ahfeldt T, Loh YH, Li H, Lau F, Ebina W, Mandal PK, Smith ZD, Meissner A, Daley GQ, Brack AS, Collins JJ, Cowan C, Schlaeger TM, Rossi DJ.
論文概要

米国ハーバード大学ロッシ博士らのグループが、合成したメッセンジャーRNA(mRNA)を用いてヒトiPS細胞の作成に成功した。これまでヒトiPS細胞作成にあたっては、作成効率が低い事と、遺伝子変異を誘導することが臨床応用への障壁となっていた。ロッシ博士らは、より安全かつ高効率なiPS細胞作製法の開発を目的として、生体の自然免疫反応も回避できるように改変した合成mRNAを用いた。その結果、従来法よりも優れた効率でヒトiPS細胞の作成に成功した。このようにして出来たiPS細胞をRNA-induced pluripotent stem cells (RiPSC)と名付けた。さらに、同様に合成RNAを用いて、RiPSCを筋原細胞に分化させることにも成功した。本論文の内容は、ヒト体細胞から、より安全で効率の良いiPS細胞を作成するだけでなく、細胞の運命を方向付けるための新たな手法として注目され、今後、幅広い基礎研究分野への応用をはじめ、疾患モデル細胞の作成や臨床応用に向けた研究を加速する成果と期待される。


書誌情報
Cell Stem Cell. 2010 Oct 8;7(4):508-520.
著者
Li F, He Z, Shen J, Huang Q, Li W, Liu X, He Y, Wolf F, Li CY.
論文概要

米国コロラド大学の研究グループは、アポトーシスに関与するタンパク分解酵素として知られるカスパーゼ3、カスパーゼ8の二つが、ヒト線維芽細胞の初期化に深く関与していることを発表した。


書誌情報
Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Sep 7;107(36):15921-15926.
著者
Hargus G, Cooper O, Deleidi M, Levy A, Lee K, Marlow E, Yow A, Soldner F, Hockemeyer D, Hallett PJ, Osborn T, Jaenisch R, Isacson O.
論文概要

パーキンソン病は、振戦・無動・筋固縮・姿勢反射障害を主症状とする慢性進行性疾患である。中脳黒室においてドーパミンニューロンが変性脱落するという病態であるため、以前からドーパミンニューロン及びその前駆細胞の移植による治療法が検討・研究されてきた。これらの細胞の入手方法として中絶胎児に由来する細胞の利用や、神経幹細胞やES細胞から誘導する研究が進められてきたが、iPS細胞の登場によってパーキンソン病患者自身の体細胞からiPS細胞を作成し、ドーパミンニューロンに分化させて自家移殖ができる(自分の細胞を自身に移植すること)可能性が開かれた。しかし、治療に用いるためには、分化させた細胞の安全性や機能性の評価が重要であり、それらを検証するための研究が盛んに行われている。


書誌情報
Nature. 2010 Jun 10;465(7299):808-12.
著者
Carvajal-Vergara X, Sevilla A, D'Souza SL, Ang YS, Schaniel C, Lee DF, Yang L, Kaplan AD, Adler ED, Rozov R, Ge Y, Cohen N, Edelmann LJ, Chang B, Waghray A, Su J, Pardo S, Lichtenbelt KD, Tartaglia M, Gelb BD, Lemischka IR.
論文概要

罹患患者さんの細胞から作製したヒトiPS細胞は、遺伝性疾患、希少疾患や、複数要因による疾患発症メカニズムを理解するための、新たな治療法開発を加速化する重要なツールとなる。レパード症候群(LEOPARD syndrome)は、常染色体優性の発達異常を伴う疾患で、主な症状は、肥大型心筋症の他、心電図異常、黒色素班、高眼圧性網膜症、肺動脈弁縮窄症、異常性欲、発達遅延、難聴、の発症を特徴とする疾患である。ヌーマン症候群(Nooman syndrome)と同様にRas-MAPキナーゼ系の情報伝達異常が関与していると考えられている。チロシン フォスファターゼ(脱リン酸化酵素)のひとつSHP2をコードするPTPN11遺伝子は、レパード症候群の90%、ヌーマン症候群の45%で変異があり、責任遺伝子と考えられている。ゼブラフィッシュとショウジョウバエにおいてレパード疾患モデルが作成され、分子レベルでの発症メカニズムの研究が進められている。本論文では、患者皮膚からiPS細胞を作成し心筋細胞に分化させたところ、ヒトES細胞や患者の家族のような健常人由来のiPS細胞から分化させた心筋細胞に比べて形態が異なり、肥大症の特性が観察でき、細胞の核にはNFATC4分子の集積が見られた。また、シグナル伝達の異常という観点から得られた知見を考察した。

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