ピックアップ論文紹介

miRNA screening reveals new miRNA family stimulating iPS cell generation via regulation of Meox2

miRNA screening reveals new miRNA family stimulating iPS cell generation via regulation of Meox2
Nils Praff, Jan Fiedler, Angelika Holzmann, Axel Schambach, Thomas Moritz, Tobias Cantz, Thomas Thum
EMBO Rep.2011 Oct 28;12(11):1153-9. doi: 10.1038/embor.2011.176.


本論文は、体細胞からiPS細胞へ誘導する際に、複数のリプログラミング遺伝子を導入する方法に加えて、新規マイクロRNA(miRNA)をさらに添加することで、作製効率が上昇することを報告した。
ある種のmiRNAについては、リプログラミングに関与する4または3因子に補助的に添加することでiPS細胞の誘導効率を上げることや、miRNA単独でもiPS細胞を誘導できることがこれまで報告されている。そこで筆者らは、iPS細胞の作製効率と関連するmiRNAを同定することで、リプログラミングに関与する新たな分子メカニズムを検証できると考えた。

まず、筆者らは379種類あるマウスのmiRNA中から効率よくiPS細胞が誘導できるものを探した。細胞は、多能性関連遺伝子であるOct4の発現に連動してGFPが発現する、マウス胎仔由来線維芽細胞(以下MEF)を使用した。この細胞はiPS細胞が誘導された場合に緑色の蛍光を発する。また今回iPS細胞を誘導する時に必要な遺伝子はOct4、Sox2とKlf4の3因子を使用した。379種類を調べた結果、いくつかは以前に報告があったものと同じであったが、3因子とともに単独添加するとiPS細胞の誘導効率的が上昇する14種類のmiRNA(106a, 106b,20b, 93, 130a, 130b, 301, 301b, 721, 148a, 152, 190, 19b, 669b)を新たに見出した。

次に筆者らは、miRNAを添加して効率よく誘導したGFP陽性細胞が本当にiPS細胞へと誘導されているかどうかを検討するために、細胞表面に存在するマウス多能性幹細胞の指標であるSSEA1の発現を調べた。その結果、GFP陽性かつSSEA1陽性の細胞が多数確認された。さらに、これらの細胞においては、多能性幹細胞で発現している遺伝子の1つであるNanogが発現していることも確認した。また、iPS細胞誘導後には、レンチウイルスカセットにより導入した遺伝子の発現が強く抑制されていることが示された。

さらに、筆者らは今回新たにiPS細胞誘導効率を上昇させることが確認されたmiR-130a、130b、301a、301bと721がiPS細胞誘導時に発現しているかどうかを検討した。3因子を体細胞に導入してⅠ日目には内在性のmiR-130bとmiR-301bが発現してくる一方、miR-721の上昇は見られなかった。
続いて、筆者らはこれらのmiRNAのターゲットがクロマチン関連遺伝子ではないかと考えて、これらのmiRNAで制御されるかを調べた。その結果、Meox2とよばれる転写因子がこれらのmiRNAにより発現制御されていることがわかった。miRNAの作用機序は、ターゲット遺伝子のmRNAにある3'非翻訳領域に結合し分解もしくは翻訳阻害する。実際にMeox2遺伝子の3'非翻訳領域にmiRNAの結合配列を見出した。さらに筆者らはMeox2の3'非翻訳領域にあるmiRNA結合配列に変異を入れることで、miRNAが結合できずMeox2が安定化することを示した。

iPS細胞誘導の際にmiRNA添加によりMeox2の発現が制御されることで誘導効率が上昇するので、miRNAではなくMeox2に特異的に結合し翻訳を阻害するsiRNAを添加することでiPS細胞への誘導効率が上昇するかどうかを検討した。その結果、siRNAを添加していない場合に比べて有意にiPS細胞の誘導効率が上昇した。さらに、この方法で樹立したiPS細胞でも外来遺伝子の発現が抑制され、内在性の多能性関連遺伝子の発現が上昇していた。
最後に、Meox2がiPS細胞誘導の際に発現制御されない場合iPS細胞の誘導効率がどのようになるのかを筆者らは検討した。本実験で使用したのはmiRNAが3'非翻訳領域に結合できないMeox2を発現させたMEFを用いて誘導効率を検討した。この場合、iPS細胞誘導効率は正常なMeox2を発現させた場合に比べて有意にiPS細胞誘導効率が低下した。
本実験から新たに同定された、iPS細胞の誘導効率を上昇させるmiRNAは、Meox2を減少させることがメカニズムのひとつであると示唆された。iPS細胞誘導においてはTGF−βの抑制が重要であり、その中の1つにMeox2機能の阻害があると考えられる。そして、Meox2の抑制が、iPS細胞への誘導を阻害するp21依存的な細胞周期の停止を克服する可能性が示唆された。

今後、筆者らが報告した方法から誘導したiPS細胞は、様々な組織への分化が可能か否か、および腫瘍形成の頻度などを調べる必要があると思われる。本報告のようにiPS細胞の作製効率を高める方法が開発されたことは、効率だけでなく質的にも優れたiPS細胞を作製するための選択肢が増えたことになる。このことは、より安全に医療応用可能なiPS細胞を作製することに役立つものと考える。

(出口 勝彰)

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る