シンポジウム等

文部科学省iPS細胞等研究ネットワーク
第2回合同シンポジウム「再生医学研究の最前線」

パネルディスカッション要約

パネリスト

山中 伸弥(京都大学 iPS細胞研究所長)

妻木 範行(大阪大学 大学院医学研究科 骨・軟骨形成制御学独立准教授)

中内 啓光(東京大学 医科学研究所 幹細胞治療研究センター長 幹細胞治療分野教授)

畠 賢一郎((株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 常務取締役研究開発部長)

谷 伸悦(厚生労働省 医政局研究開発振興課再生医療推進室長)

荒木 由季子(経済産業省 製造産業局生物化学産業課長)

石井 康彦(文部科学省 研究振興局ライフサイエンス課長)

髙坂 新一(再生医療の実現化プロジェクト プログラムディレクター)

中村 雅也(慶應義塾大学 医学部講師)

須田 年生(CREST「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤技術」研究領域 研究総括)

西川 伸一(さきがけ「iPS細胞と生命機能」研究領域 研究総括)

司会者

石田 勲(朝日新聞社東京本社科学医療グループ次長)

«事前質問より»

石田:iPS細胞からどのような組織の細胞でも作ることができますか。

山中:目的とする組織の細胞によって、状況はかなり違います。効率よく作ることができるものもあれば、そうでないものもあります。

石田:高齢の方から作ったiPS細胞と子どもから作ったiPS細胞は違いがありますか。

山中:違いはほとんどありませんが、全く一緒かどうかは、今後も研究が必要です。

石田:どんな年齢の細胞がよいのか、皮膚細胞や血液の細胞、臍帯血など、どの細胞からつくるのがよいのか、というような研究も進めていますか。

山中:色々な観点から検討しています。国内外の報告で、血液からつくったiPS細胞は血液になりやすいというような報告もあります。1、2年で解決したいと考えています。

石田: 山中先生が世界に先駆けてiPS細胞を作られましたが、日本のiPS細胞研究は今もトップランナーを走っているのでしょうか。

山中先生

山中:我々が報告した2006年は、論文発表は日本のみでした。2007年の論文数は日本3、海外5でした。2008年、日本は4、海外67と10倍以上の差になりました。ただし、アメリカは国に加えて州や民間から多大な支援があり、日本の10倍以上の研究費が投与され、研究者の数も10倍以上います。そのような状況で、2010年は論文数が日本43(08年の10倍)、海外198(08年の3倍)となり、かなり盛り返していると言えるでしょう。今後も日本の研究者が協力して研究を進めていくことが大切です。

石田:臨床応用に向けてどのような課題があるのでしょうか。

中内:ES/iPS細胞のように、長期間培養した細胞を使った治療はこれまで経験がありません。長期間培養した細胞の機能について正確に調べることと、安全な細胞かどうか確認することが重要な課題です。

石田:妻木先生の、皮膚から直接軟骨細胞を作るという研究の実用化に向けた課題はどういった点でしょう?また、どのようなタイムスケジュールを目指していますか。

妻木:マウスでしか行っていないので、ヒトで成功させたいと考えています。また、軟骨としての性質・性能を充分なものにしたいです。入れた遺伝子が原因で腫瘍ができてしまう問題もあるので、安全性の問題を克服したいと思います。応用方法としては、①再生医療を行うこと、②病気の仕組み解明・創薬応用の2点が挙げられますが、②は比較的早くに実現可能ではないでしょうか。①の実現のためには、安全性の問題をクリアするためのブレークスルー的な研究結果が必要です。

石田:臨床応用に向けての再生医療の課題についてはいかがお考えでしょうか。

西川:まず臨床応用に向けて強い意志を持った研究者がリーダーシップを発揮して取り組む必要があります。そこに国などのサポートの下に、強い意志を持った患者や(ベンチャー)企業などが集まり、知財やプロトコール管理を含めて一体化することが重要だと思います。

石田:再生医学に関して、国の支援についてはどう思われますか。

西川先生

西川:臨床研究で治療が有効であることがわかっても、莫大な経費がかかり研究が続けられないような場合、臨床研究段階で企業が参加していることが必要です。このような戦略のためには、全ての省庁のシームレスな支援が必要になります。今回の文部科学省・厚生労働省・経済産業省の連携体制による「再生医療の実現化ハイウェイ(PDF)」は、そういうことが想定されています。

須田先生

石田:世界に伍していくための人材育成は進んでいるでしょうか。

須田:臨床応用には課題も多く、一朝一夕では解決しません。人材を育てて長い期間研究を続ける必要があります。若い研究者には自立した気持ちで研究に取り組み、トップダウンではなくボトムアップを図ってほしいと思います。

西川:日本の若い研究者は、海外の研究者と比べても、しっかりしたコンセプト、アイデアを持っていると感じています。

石田:第2、第3の山中教授が続くのでしょうか

山中:私自身、35歳で独立させてもらって、自分の考えを自分の責任でやるようになったということが今につながっていると考えています。そういう機会を30代の研究者に多く与えていくことが大切ではないでしょうか。

石田:再生医学の実用化はいつでしょうか。

髙坂:疾患によって異なります。網膜疾患を対象とした色素上皮細胞移植については、3年後には臨床研究まで進む可能性があります。実際の臨床応用までには10年近くかかるのではないでしょうか。心臓疾患については5年後に臨床研究、その5~10年後に臨床応用の可能性があると考えています。脊髄損傷を含めた神経系の疾患、血液あるいは糖尿病疾患がその後に続くのではないかと考えられています。

石田:国の立場から、実用化スケジュールについてどのようにお考えですか。

谷:はっきりとはわからないのが現状です。ただ、安全性の認可や安全性審査にあたっての試験体制を拡充するなど、加速できるような周辺整備は可能であると考えています。3省合同で早い段階での臨床を目指し、可能な限りのことをやっていきたいと思っています。

石田:文部科学省としては、実用化についてどのような認識をもっておられますか。

文科省ライフサイエンス課長:石井康彦

石井:基礎研究というよりも実用を目指した応用研究として、そして、これを臨床研究と一体となって進める体制を作ることで、研究を加速し、国民の皆様の期待に応えたいと考えています。

石田:アメリカでは昨年からES細胞を使った脊髄損傷の臨床研究が始まっています。日本では慶應大学の中村先生のチームが脊髄損傷のマウスを使った実験で成果をあげておられますが、今後の展望はいかがでしょうか。

中村先生

中村:脊髄損傷の病態は多様で、その多様な病態に対して一つの治療法だけで治すことはできず、様々な治療を組み合わせることが必要になります。iPS細胞による治療も治療法の一つですが、それだけで治るわけではないので、それ以外の治療の研究も進めています。iPS細胞による治療には、安全性・コスト等の面から山中先生が取り組んでいるバンク化が有意義です。私としては、臨床にもっていくためには、実際に動物に移植する際の腫瘍化の問題が解決できれば、実現可能だと考えています。安全性を検証しながら、近い将来には患者さんに再生医療を提供できたらという熱い思いで研究に取り組んでいます。

石田:安全性についての今後の研究の見通しはいかがでしょうか。

須田:腫瘍化しないメカニズムを考えることが必要です。どうやって細胞の環境側から抑え込むのか、あるいは腫瘍化した場合に除き得るのか考える必要があります。

山中:万が一腫瘍が起こった時の対応を考えて臨床研究をする必要があります。その際の対応は疾患によって異なるため、個々に考えなければいけません。

石田:実用化するときに、どれくらい産業化が進むと考えられますか。

畠:再生医療というものが産業として成立した場合、どのような波及効果を生むのか、広がりを充分とらまえる必要があります。iPS細胞を中心とした再生医療がどう広がっていくか、患者さんがどれくらい助かるようになるか、それによって企業がどれくらい必要になるかということが決まってきます。

司会:石田勲

石田:iPS細胞を利用して生殖細胞を作成すれば、クローン人間ができる可能性もあります。どういった段階で規制が必要でしょうか。再生医学を研究する上で、倫理的な部分についてルールは必要なのでしょうか。

石井:生命倫理上の問題に対する規制には、法令に基づく規制、ガイドラインによる規制、学会等の研究者による自主的な規制があります。クローンに関しては、クローン技術規制法という法律で定められています。iPS細胞を使った生殖細胞作成は、国の通達により、当面禁止しておりましたが、昨年、ガイドラインを定め、手続きを経れば可能となりました。

西川:倫理については色々な意見があり、一つの考え方にはまとめられません。対話を繰り返して一定のアグリーメントをとっていくしかないのです。

須田:科学の進展と倫理の変化というものは、少しずつ変わっていきます。安全性や人間の認識の問題です。

石田:倫理の問題について、外国に比べてどのように思われますか。

中内:日本発の研究でも、独自の倫理観により規制され、日本では行うことができない研究を、海外ではどんどん進めてしまうような状況もあります。倫理的な判断は、日本の医療・国益・経済とも密接に関連しているのです。また倫理観は時代によっても大きく変わります。倫理的な規制を作るときは一部の限られた専門家集団の意見によるのではなく、一般市民から何人かを無作為に選び、研究内容についてメリットや危険性を充分説明した後に可否を問い、策定の指標として使ってはどうでしょうか。

«会場から»

パネルディスカッション会場

Q1:ES細胞がiPS細胞より優れている点はありますか?

山中:ES細胞のほうが安全性は高くなっています。

Q2:厚生労働省の難病に対する予算について、どのような進展があるのか公開されることもなく、どうなっているかわかりません。どのように再生医療の分野を支援していくのでしょうか。

谷:難病は患者さんの数が少ないため、どういう病気なのか、原因は何かを蓄積し、治療法の解明を目指す研究を支援しています。再生医療についても、そのような研究に支援を行っています。

Q3:山中先生のバンクのHLA型について、我々も協力したいと思っていますが、どのような状況か教えてください。

山中:臍帯血か、未梢血か、皮膚細胞か、どの細胞を使うかを最終決定しようとしているところです。どうやってドナーを探すかはそれによっても変わってくるので、現在検討しています。決定すればホームページ等で公開しますので協力をお願いしたいと思います。

Q4:バンク実現に向けたタイムスケジュールはどのようにお考えですか?

山中:この1年間で、どの細胞からどの方法で作成するか、技術面を完成させたいと考えています。その後、まずは、数名の頻度の高いHLAホモ型のiPS細胞を作りたいと思っています。少数の人数からのiPS細胞でも日本人の半分近くをカバーできると考えています。

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