研究開発トピックス

iPS細胞の標準化動向に関する国際比較調査
- 国際比較調査のバックステージストーリー:日本のiPS細胞研究の歴史に織り込まれる報告書たちとともに

福士 珠美(科学技術振興機構研究開発戦略センター ライフサイエンスユニット フェロー)
掲載日:2010年06月04日

今回は、JST研究開発戦略センター(JST-CRDS)がiPS細胞の標準化に関する国際調査を行なうに至った経緯について、日本の中で起こってきたiPS細胞研究の歴史について触れながらお話ししていきます。
今からおよそ4年前、山中伸弥教授(京都大学)がマウスによるiPS細胞の樹立に成功し、論文発表を行った2006年8月10日(iPS細胞物語 第6回参照)、まさにその日に、ライフサイエンスユニットでは、当時の上席フェロー江口吾朗先生(尚絅学園理事長)の下、20名余の有識者、科学行政担当者を迎えて俯瞰ワークショップ「ライフサイエンス分野の俯瞰と重要研究領域」を開催し、今後重要となる研究領域の一つとして「幹細胞研究」を抽出しました(06WR17 / 俯瞰ワークショップ「ライフサイエンス分野の俯瞰と重要研究領域」報告書(PDF))。

JST-CRDSの成果報告書ページに掲載された情報を元にJST-CRDSが作成

さて、2009年は我が国のiPS 細胞研究における転換点となる年でした。
文部科学省によって、1月に「iPS 細胞(人工多能性幹細胞)研究等の加速に向けた総合戦略 改訂版」が決定され、6月には「iPS細胞(人工多能性幹細胞)研究ロードマップ」が策定されたのです。
このロードマップにおいては、4つの研究・技術開発課題が達成すべき目標として掲げられています。

  • 【目標1】初期化メカニズムの解明(基礎・基盤的研究)
  • 【目標2】標準iPS細胞の作製と供給(標準化)
  • 【目標3】疾患研究・創薬のための患者由来のiPS細胞の作製・評価、バンクの構築
  • 【目標4】再生医療(iPS細胞から分化誘導された細胞・組織を用いた細胞・組織移植等の治療技術の前臨床研究と臨床研究)

中でも、ヒトiPS細胞の樹立以降、iPS細胞研究の成果をより速く、効果的に産業に結びつけるために重要と考えられているiPS細胞の「標準化」に関連する技術開発について、ロードマップの中では以下の項目を今後三年以内の達成目標として設定しています。

  • iPS細胞の性質を明らかにするための評価項目の策定
  • 様々な作製方法によるiPS細胞の特性比較【1年以内】
  • 高品質でリスクの少ないiPS細胞の作製方法の確立とその最適化
  • 高品質でリスクの少ないiPS細胞の評価方法の確立
  • iPS細胞の体系的な評価結果をに関する情報を蓄積・解析する体制の構築【2年以内】
  • 高品質でリスクの少ないiPS細胞を国内外に安価かつ同条件で配布する体制の構築【3年以内】

このロードマップを作成した文部科学省をはじめとする科学政策担当者たちは、達成目標を実現するための研究開発戦略の立案に際し、臨床応用や産業化における基盤要素である「iPS細胞の標準化」に関連する技術開発、推進戦略、規制管理の国際的な動向を把握することが重要と考え、JST-CRDSが調査を行なうことになったのです。

その頃、JST-CRDSでは、発生生物学の世界的権威であり、また、JST-ICORP事業において器官構築研究開発の国際共同研究プロジェクトを率いた実績を持つ浅島誠先生(産業技術研究所幹細胞工学センター長)が、上席フェローとしてライフサイエンスユニットのリーダーに着任していました。
そして、ユニットが定常的に行なっている国際動向情報の収集活動のほか、再生医療研究を推進するための研究テーマを検討している『多細胞構築技術検討チーム』が「臓器再生の材料としてのiPS細胞の標準化」に興味を持っていました。
さらに、G-TeC(Global Technology Comparison)ユニットという、重要な科学技術領域や研究システムに焦点を当て、海外の状況を調査分析することで日本のポジションを確認し、今後取るべき戦略の立案に貢献することを調査の目的としているユニットも、ちょうど「幹細胞」をテーマに、主に幹細胞研究のビジネス展開の現状や日本のとるべき国際戦略についての調査を行なっていたのです。
そこで、ライフサイエンスユニットが中心となり、G-TeCユニットと「多細胞構築技術検討チーム」がそれに協力して、これまで行なってきた調査結果を提供し、iPS細胞の標準化に関係する内容について、さらに必要な調査分析と解釈を加えて共同の調査成果として報告書にまとめることになりました(G- TeC調査全体の成果については別途報告書にまとめ公開されます)。

次回は、どのようにJST-CRDSが国際比較調査を行なっているのか、その手法について紹介していきます。

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