研究開発トピックス

先天性角化異常症患者よりiPS細胞作製 - テロメア短縮を乗り越える

掲載日:2010年03月03日

真核生物染色体末端に存在するテロメア領域は、核内での染色体存在様式を決定し、染色体複製と細胞分裂のサイクルを繰り返す度ごとに少しずつ短縮することから、有限分裂の一つの指標になっている事が示唆されている。
テロメア領域に特異的な反復DNA配列は、鋳型RNAと逆転写酵素活性を持つテロメラーゼ複合体(TERT)により伸張することが明らかになっており、継続的な分裂能力とテロメラーゼ活性との相関あることが指摘されている。

先天性角化異常症(DC)はテロメラーゼの異常によりテロメア長が短縮し、骨髄形成不全を伴う遺伝性の疾患である。したがって、疾患モデル細胞が樹立したとしても、増殖させる際の困難さなど、ハンドリングの難しさが予想されていた。

本論文では、ヒト体細胞から作製したiPS細胞(レトロウイルスベクターを用いた4因子導入により作製)では、TERTの誘導が起ることにより、もとの体細胞に比してテロメア延長が起きており、それが多能性の獲得と相関があることを確認した。 次に、TERT因子のうちRNA結合タンパクをコードする遺伝子の変異によりテロメラーゼ異常があるDC患者体細胞からiPS細胞作製を試みたところ、効率は低く時間もかかったものの作製に成功し、驚くべきことに正常体細胞から作成した場合と同様の形態、遺伝子発現、テラトーマ形成能などの表現形を示し、多能性を獲得していた。
DC細胞株は3-4代しか継代できないが、iPS化したDC細胞は継代を続ける事が出来、しかもテロメアRNA因子 (TERC) レベルの上昇(正常細胞の10-15%だったものが6-8倍に上昇)、テロメア長の延長が観察され、自己複製能力を取り戻した。
リプログラムに伴いこのTERC上昇と多能性の発現には相関があることから、iPS作製に必要な転写因子の作用機序として、テロメラーゼ複合体がターゲットとなっている可能性が示唆された。
さらに、常染色体優性DCの場合、TERC遺伝子3'側の821bp決失によりテロメラーゼが抑制されているため、外来遺伝子としてTERTを導入してもテロメア延長は起こらないにもかかわらず、iPS細胞作製を試みたところ自己複製能と多能性を有する複数のクローンを得ることが出来た。 それらのクローンではTERCレベルがおよそ3倍に上昇していた。

このように、リプログラムの生物学的なメカニズムを考察する上でも、興味深い知見が報告された。
また、遺伝的なDC疾患由来細胞のリプログラムにも成功したことから、今後のDC治療に向けた戦略としてはTERC発現レベルを回復させることが有効であるとの方向性が示された。
(解説:本間美和子)

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