研究開発トピックス

Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を利用した効率的なターゲティング

掲載日:2009年09月09日

Dirk Hockemeyer et.al., Efficient targeting of expressed and silent genes in human ESCs and iPSCs using zinc-finger nucleases.

マサチューセッツ工科大学Rudolf Jaenischらのグループは、Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使うことによって、ヒトES細胞およびiPS細胞ゲノムの効率的なターゲティングに成功した。

ES細胞など胚性幹細胞を、「多分化能」(多様な器官・組織に分化できる能力)を保ったまま増殖するためには厳密な培養条件が必要であるが、さらに増殖した幹細胞のゲノムがもつ遺伝子機能を解析するには、技術上のさまざまな工夫が必要となる。
ある遺伝子の機能を知るためには、その変異体を人工的に構築して、正常な機能の変異との因果関係を解析する手法がとられる。しかし、複雑なゲノム構造の中で、特定のゲノム部位を標的として外来遺伝子挿入などの変異を誘発させる技術(ターゲティング)は大変難しい。従来から用いられてきた「相同組み換え技術」では、ヒトES細胞ゲノムを自由に効率よく操作するところまでは及ばない。

こうした状況のなか、本論文は、特定のDNA部位に結合する「Zn(亜鉛)-Finger タンパク質」を、二本鎖DNAの傷を修復する酵素「Nuclease:ヌクレアーゼ」と融合させた、新しいヌクレアーゼタンパク質(ZFN)を利用することで、特定のゲノム領域での相同組み換えを効率よく起こさせる技術を報告した。

具体的には、初期化遺伝子(山中因子)のひとつOct4遺伝子座を標的として、Oct4遺伝子が発現するとeGFP(増感緑色蛍光タンパク)も同時に発現されるような相同組み換えをZFNを利用して行うことによって、最高で95%以上という高効率で作製することに成功した。
その結果、この融合タンパクの蛍光を指標として、初期化遺伝子の発現レベル(ヒトES細胞が多能性を保持した状態であること)をモニターすることが可能となった。
実際に、多能性細胞の状態から分化した状態へ進むと、初期化遺伝子であるOct4 EX1-eGFPタンパク発現レベルが低下することも示された。
また、普段は発現抑制されている初期化遺伝子AAVS1座を標的として、化学物質を添加すると標的遺伝子の過剰発現がオンになる、すなわち初期化を誘導するような、ゲノム変異の導入にも成功した。

具体的には、初期化遺伝子(山中因子)のひとつOct4遺伝子座を標的として、Oct4遺伝子が発現するとeGFP(増感緑色蛍光タンパク)も同時に発現されるような相同組み換えをZFNを利用して行うことによって、最高で95%以上という高効率で作製することに成功した。
その結果、この融合タンパクの蛍光を指標として、初期化遺伝子の発現レベル(ヒトES細胞が多能性を保持した状態であること)をモニターすることが可能となった。
実際に、多能性細胞の状態から分化した状態へ進むと、初期化遺伝子であるOct4 EX1-eGFPタンパク発現レベルが低下することも示された。
また、普段は発現抑制されている初期化遺伝子AAVS1座を標的として、化学物質を添加すると標的遺伝子の過剰発現がオンになる、すなわち初期化を誘導するような、ゲノム変異の導入にも成功した。


やさしい解説・Q&A

Q.ターゲティングとは何ですか?
A.ターゲティング(Targetting)は、「標的にする」という意味で、この場合は目的の遺伝子を変異させる、欠失させる、発現の目印となるように蛍光タンパクとつなげるなど、標的とする特定の遺伝子を改変する手法の意味で使われます。

Q.Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)とは何ですか?
A.Znフィンガーは、その特徴的な立体構造と親和性のある特定のDNA配列を見つけて結合する機能を持つタンパク質の一種です。遺伝子発現に関与する転写因子の中に、こうした構造を持つものが多く見られます。一方、ヌクレアーゼはDNAの修復を行う酵素で、DNAの鎖を切ったりつなげたりします。 ZFNは両方の機能をあわせ持つよう工夫して作成された融合タンパク質で、Znフィンガーが標的を見出して結合するとヌクレアーゼが働く仕組みです。

Q.今回、何をターゲティングしたのですか?
A.細胞が多能性を維持するために必要な遺伝子であると同時に、初期化する際に発現される重要な遺伝子です。京都大学の山中教授は、iPS細胞をつくる時には、外から4つの遺伝子を人工的に導入させる方法を見出しましたが、そのうちの1つOct4遺伝子をターゲットにしました。 Oct4遺伝子に続けてeGFPという蛍光タンパク質の遺伝子を挿入し、他でもないOct4遺伝子が働くと、eGFPも作り出される技術を開発したということです。

Q.今回の研究成果はどのように役立つのですか?
A.eGFPは紫外線を当てると緑色に光ります。その結果、蛍光を発する細胞を探すだけで、その細胞の中で初期化遺伝子の一つOct4が発現しているかどうかを、判定できるようになります。つまり、培養条件を変えればいろいろな細胞へと分化する能力、すなわち多能性があるかどうかについて、本来必要とされる4つの遺伝子のうちOct4だけではありますが、細胞が光っていることを目印に簡単に区別することができるようになります。
また、細胞の分化が進んでいくと、Oct4遺伝子の働きが弱まってくるので、蛍光強度により、細胞が分化の方向へシフトしたか否かを知ることもできるようになります。

Q.最近、iPS細胞をつくるのにOct4遺伝子を使わない方法も報告されています。すると、この方法は意味がないのですか?
A.大きな技術上の進歩があったという点で非常に意味があります。なぜなら、iPS細胞を作製するときに仮にOct4遺伝子を使わないとしても、同じ技術でZF部分を工夫しさえすれば、別の標的遺伝子を変える事が可能となるからです。最初に述べたように、ある遺伝子の働きを調べるには、その遺伝子の配列を変えたり(変異)、欠失させたり、発現の目印となる別の遺伝子をつなげたりすることが必要で、ZFN法は標的を見つけるカギとなる部分をうまく設計することで、DNA上の別の場所でも効率的にターゲティングを行うことができる方法として有用性が高いのです。
今回の報告でも、Oct4以外にも、AAVS1遺伝子をターゲットとして、普段は働かないAAVS1遺伝子が特定の化学物質を加えるとONになるように、すなわち外から加える化学物質によって標的遺伝子のONとOFFが操作できるように、遺伝子を組み換えることにも成功しています。

Q.この方法でつくったiPS細胞をヒトの治療に用いると、ヒトも緑色に光るのですか?
A.この実験方法は、実験室の培養条件下でiPS細胞を作製したり増やしたり、多能性を選別する条件などを詳しく研究するための、あくまでも基礎的な研究に用いられるものです。 iPS細胞を効率的で安全につくり出す方法を見つける目的で開発された技術であり、実際にヒトへ応用する際にこの方法をそのまま使うわけではありません。

(解説:本間美和子)

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