研究開発トピックス

文部科学省 iPS細胞研究ロードマップ 「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略(改訂版)の具体化」

掲載日:2009年07月21日

2006年に京都大学山中伸弥教授のグループがiPS細胞作製技術を最初に報告し、新たな再生医療への道を拓く革新的な技術として世界中を驚かせた。
それ以来、2007年に初めてヒトiPS細胞の作製に成功すると同時に、我が国発の重要な研究成果をもとに、医療への応用ならびに生命機能の根幹を解明する研究の推進へ向けて、国を挙げた支援体制が動き始めた。

まず2007年12月に「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略」を当時の渡海文部科学大臣が策定し、JST戦略的創造研究推進事業「iPS細胞等の幹細胞に特化した基礎研究」への支援が開始された。京都大学再生医科学研究所を中心とする「再生医療への実現化プロジェクト/ CiRA」、「iPS細胞等研究ネットワーク」、等により日本全体のiPS細胞等研究の推進体制を確立するとともに、「医療応用加速化」と「毒性評価系構築」のための「スーパー特区」を設置するなど、基礎から臨床への研究開発支援体制が整備された。
平成19年度(2007年度)は2.7憶円であった予算が、20年度(2008年度)は45億円、21年度(2009年度)は145億円の予算措置が計られている。

このような状況の中、2009年6月24日に「iPS細胞研究ロードマップ」が文部科学省により策定された。
その目的は、下記の4分野について10年後までの具体的な到達目標を設定することで、iPS細胞研究に必要とされる基盤を十分に整備し、基礎から臨床研究までの開発研究全体を加速化することにある。

(1)初期化メカニズムの解明
一度分化した体細胞が多能性幹細胞へ初期化される仕組みは未解明の分野であり、基礎生物学、再生医学にも寄与する課題である。
(2)標準iPS 細胞の作製と供給
iPS細胞としての客観的な評価方法を確立することは、臨床応用を見据えて喫緊に対応すべき課題である。iPS細胞評価方法を策定し(目標1年以内)、異なる方法で作製されたiPS細胞の特性を比較できる体制を構築したうえで(2年以内)、高品質で安全なiPS細胞を国内外に配布する(3年以内)。
(3)疾患研究・創薬のための患者由来iPS 細胞の作製と評価、バンクの構築
疾患特異的iPS細胞の作製にあたり、その最適な方法と評価法を確立すれば(2年以内)、それを国内外の研究者へ配布し(2年後以降)、疾患発症メカニズムの解明、治療方法の研究、創薬開発に資することが期待される。また、それに付随して患者データ等の収集と評価、作製されたiPS細胞ならびにその素となる細胞の保存を行なうバンクを整備する(2年以内)。
(4)再生医療
目的の細胞・組織への分化誘導、腫瘍化しない安全性を確保した上で、細胞・組織移植の安全性・有効性を確認し、前臨床研究(動物を用いる実験)、臨床研究(ヒトへの治療研究)を速やかに実施する。さらに、再生医療への応用を考慮したiPS細胞バンクを整備する(5年以内)。具体的な組織として、中枢神経系、角膜、網膜色素上皮細胞、視細胞、血小板、赤血球、造血幹細胞、心筋、骨・軟骨、骨格筋、肝・膵・腎臓細胞、の11種類が挙げられており、早くて5年後以降に、安全性を優先した上でヒトへの臨床研究を開始できる段階と想定している。

これらの中では、特に「(2)標準iPS細胞の作製と供給」が喫緊の目標であると記されている。国際的な競争の中、多様な作製方法が試みられている。先端技術によりiPS細胞作製までのハードルを低くすると同時に、得られたiPS細胞を客観的に評価する指標を確立することは、我が国発の研究技術を確固たるものとし、安全性を担保するためにも、最優先されるとの判断であろう。
また、iPS細胞だけではなく、ES細胞、体性幹細胞の研究も併行して進める必要があるとしている。
今後は、ここに策定されたロードマップの目標達成に向けて、文部科学省は総合科学技術会議や関係府省と連携すること、また、このように多額の公的研究資金が再生医療実現のために投資される状況について説明責任を果たしていくこと、についても付記された。
(解説:本間美和子)

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