研究開発トピックス

タンパク質を導入しiPS細胞作製

掲載日:2009年04月27日

Zhou et al., Cell Stem Cell 4, May 8 (2009)
【Title】 Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins
【Summary】 Generation of protein-induced pluripotent stem cells (piPSCs) from murine embryonic fibroblasts using recombinant cell-penetrating reprogramming proteins.

iPS細胞の作製には、これまで4つの初期化遺伝子(Oct4, Klf4, Sox3, c-Myc)を体細胞の外から導入し、細胞内で発現させる事が必要であった。細胞への遺伝子導入に当たっては、ウイルスベクター利用以外の比較的安全な手法が開発されてはいたが、内在する遺伝子情報を直接改変するために、結果として起こる癌化などの危険性を回避する事が難しい。そのため、遺伝子導入によって得られたiPS細胞集団の中から、安全と考えられるクローンを選別するなど、細心の注意を払う必要があるために時間と手間がかかる。

そうした開発競争が進む中、昨日、米独グループが、初期化に必要な遺伝子産物すなわちタンパク質を細胞の外から導入する手法を利用して、マウス体細胞(繊維芽細胞)を初期化しiPS細胞を得ることに初めて成功した。

具体的には、4つの初期化遺伝子がコードするタンパク質を大腸菌で調製した後、培養中のマウス繊維芽細胞の培地へ9日間にわたり繰り返し4回添加する。培養30-35日後には、細胞の遺伝子情報が初期化された兆候が見られ、マウスiPSやES細胞と同等の遺伝子発現パターンと、分化・発生能を有すると思われる細胞が得られた。同グループは、それをprotein-induced pluripotent stem cells(piPSCs、タンパク質により誘導された多能性幹細胞)と名付けた。

piPSCsは、その後の特性が変化することなく30代以上も継代できる増殖能を有しており、また、従来から用いられているマウスES細胞と形態的にも良く似ている。広範な遺伝子発現パターン、ならびに特定の遺伝子発現制御領域のメチル化パターン(遺伝子発現の制御に関与する)もES細胞と非常に良く似ているが、体細胞とは全く異なっているという。さらにin vivo キメラ法という手法を用いると、8細胞期のembryoと細胞塊を成して胞胚の内細胞塊に取り込まれ、擬妊娠マウス体内で少なくとも胎生13.5日まで分化した。また、piPSCsから分化させた心筋様細胞が培養条件下で拍動する様子も発表された。

以上のことから著者らは、マウス体細胞遺伝子を操作することなく、タンパク質を細胞外から導入する手法によって体細胞を初期化し、従来のES細胞と同等の多能性を有するiPS細胞を作製することが出来たと結論づけた。簡便・迅速かつ安全に作製できたことから、iPS開発に大きな進展が生まれたとみられ、今後さらにchemical biologyと関連する低分子化合物利用などが期待される。
(本間美和子)

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