研究動向調査レポート

再生医療分野における論文と特許の関係

平成23年2月24日
慶應義塾大学 研究連携推進本部
羽鳥 賢一

(要約)

再生医療のうち神経再生の分野では、論文よりも米国等の特許文献において先に公開される件数が想定以上に多いことがわかった。しかもこれらの特許は内容的にも看過できないものである。
再生医療のうち神経再生に例をとって、最近の1年半で、日本、米国、PCTで公開された特許文献を検索するとともに、そのうち特に注目した案件については、対応する論文も調査し特許文献と比較・分析した。

※PCTとは、Patent Cooperation Treatyの略。一度の手続で、ほぼ世界中の国に出願可能な権利を得ることができる。

(1)検索年範囲

2010年3月1日−2011年9月30日(約1年半)

(2)検索データベース及び検索式

今回の検索は試行として、当分野に代表的に使用される技術用語を選定の上、特許出願の請求の範囲を対象に検索することで、網羅性よりもノイズを少なくすることを優先した。検索ツールは、日本出願と米国出願については商用DBを使用し、PCTに対してはWIPOが提供する検索サービスを使用した。その結果、神経再生に関する分野では、最近の1年半で米国を中心に600件以上にのぼる多数の出願がなされる大変ホットな分野であることが、今回の調査からも裏付けられた。

日本出願(請求項を対象に検索):
神経*幹細胞 190件
神経*再生 151件
米国出願(請求項を対象に検索):
(neural+nervous+neuronal+nerve+neuron+neurons)*(iPS+ES+stem+pluripotent) 638件
(neural+nervous+neuronal+nerve+neuron+neurons)*(regenerate+regeneration+regenerated+regenerating+regenerates) 194件
PCT出願(WIPO 請求項):
iPS+ES+stem+pluripotent (2010年3月~10月30日まで) 558件
(neural+nervous+neuronal+nerve+neuron+neurons)*(iPS+ES+stem+pluripotent)
(2010年11月1日~2011年9月30日) 76件

(3)関連案件の抽出

「神経再生医療に係る特許と論文」の図

スライド(拡大表示(PDF)

上記検索でピックアップされた出願から、その概要等の記載を見て特に関心のある案件を抽出したところ、20件見出された。PubMedを用いて、論文発表の有無を調査したところ、11件は対応する論文が発表されており、9件は対応する論文が発表されていなかった。即ち注目した20件のうち約半分は、現時点では特許文献からしか情報を取得できないものであった。

(4)対応論文のある11件について

「再生医療分野における論文と特許の関係 研究動向調査レポート」の図

スライド(拡大表示 PDF

この11件について、特許出願の優先日と公開日、論文の投稿日と公開日を比較したところ、以下の知見が得られた。
①5件は、特許公開の方が早かった(内1件は、一部のみ公開)。しかも、多くは1年以上も早く公開された。
②6件は、論文公開の方が早かった。
③そのうちの1件は、論文公開後に少し違えた内容で特許出願されたが、国際調査では、先に公開された論文が引用され、特許性無し(進歩性なし)と判断された。

(5)対応論文の無い9件について

この9件については、実施例の内容を解析し、出願情報、発明の要旨とともにまとめた。この内容を研究者に確認したところ、情報提供が必要なものであることがわかった(スライド PDF

(6)メッセージ

再生医療のうち神経再生の分野では、論文よりも特許文献において先に公開される件数が想定以上に多いこと、およびそれらの多くは米国を中心とする海外の大学・研究機関からのものであることがわかった。しかもこれらの特許は、その分野の研究者の目から見ても看過できないものであることが確認された。よって、これらの特許文献は、公開後タイミングよく研究者に提供されることが必要で、その後の研究企画や戦略策定に参考とされるべきものである。今後タイミングよく研究者に情報提供する手法を検討していきたい。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る