疾患情報

脳卒中

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Stroke 2013年4月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 脳卒中について

10分に1人のカナダ人が脳卒中を発症しています。世界の成人障害の主な原因であり、死亡の第2の原因です。現在、年間1500万人の人々が脳卒中を発症し、この数字は今後増加していくものと予想されています。このような傾向があるのは主に人口の高齢化によるものですが、熟年世代の患者数も、おどろくべきペースで増加を続けています。脳卒中は社会に対して極めて大きな負担を与えます。脳卒中発症者の5人に1人が死亡し、3人に1人には持続的な障害が残り、自立生活が困難になるからです。

脳卒中は脳の血管症候群です。脳卒中は脳血管疾患と呼ばれており、脳組織(cerebro-)と体内の血管(vascular)の両方とが関係する疾患であることを意味しています。脳卒中は、虚血性脳卒中(全脳卒中の85%)と出血性脳卒中(全脳卒中の15%)の2つに大別されます。虚血性とは、組織への血流がないことを意味し、脳卒中では、血餅によって脳への血液の流れが数秒間以上滞った場合に生じます。これが生じると、ニューロンやグリア細胞、内皮細胞などの脳内の複数のタイプのニューロンが、必須栄養素と酸素が供給されずに飢えることになります。時によっては、状況は極めて短時間に解消し、脳への血流が回復します。このような場合、患者は極めて短期間しか神経障害が生じず、このタイプの脳卒中は一過性脳虚血発作(TIA)と名付けられています。血流の減少した状態が長時間(数分間)続くと、ブロックされた血管から血液供給を受けていた脳細胞が死滅し始めます。死滅した組織のコア領域を“梗塞”と呼んでおり、そこでは、ニューロンが1分間に190万個の割合で死滅しています。虚血性脳卒中のもっとも重篤なものが、致死的な悪性脳梗塞です。

出血性脳卒中には2つのタイプがあります。脳内出血(全脳卒中の~7-8%)は主に、脳組織への出血です。脳動脈が破裂することにより生じます。クモ膜下出血(全脳卒中の~7-8%)は、脳動脈瘤(動脈壁が弱くなり、その部分が風船状に膨らむこと)の破裂により生じるものです。クモ膜下出血での出血は、クモ膜下腔と呼ばれている脳と髄膜(脳や脊髄を覆っている結合組織の層)の間の空間に生じます。出血性の脳卒中の死亡率は虚血性脳卒中の死亡率のおよそ2倍です。

どのようなタイプの脳卒中が生じたかに関わらず、脳への損傷を食い止めるため、直ちに医療機関を受診する必要があります。虚血性、出血性のいずれのタイプの脳卒中かを判断するため、コンピュータ断層撮影(CT)検査がルーチン的に使われており、慢性の機能障害を予防あるいは軽減させるのに何ができるかを医師が評価するのに役立ちます。

脳卒中からの生存者は、脳のどの部分に障害が生じたか、その後にどの程度の障害が生じたかによって、様々な程度の障害をこうむります。脳卒中の結果、長期入院や長期療養、リハビリテーション、収入の断絶、自立生活への障害、介護者への長期間の負担が生じる可能性があります。このようなことは、脳卒中の患者にとって莫大な損失となるだけでなく、家族や医療システムに対する大きな負担にもなります。

原因

脳への血流が止まると、通常であれば、一連の出来事が生じて、その血管から血液供給を受けていた脳の組織が死滅する引き金となります。脳卒中が生じた直後に、ニューロンが過剰刺激されるようになり、カルシウムレベルが急上昇し、酸素を奪われることによりストレスを受けた状態になります。このような事象が生じると、梗塞部に存在していた脳組織が死滅します。時間が経過するにつれて、血液-脳関門の障害が生じ、炎症が生じ、梗塞部の周囲のペナンブラと呼ばれている領域も死滅し始めます。

脳卒中のリスク因子についてはよく分かっています。高血圧が、虚血性脳卒中と出血性脳卒中の両方について、最も強いリスク因子です。心房細動(不規則な心臓の拍動)、糖尿病、喫煙、頸動脈狭窄がその他の重要なリスク因子です。高コレステロールは、脳卒中の弱いリスク因子ですが、心臓発作の強いリスク因子です。ライフスタイル因子、例えば運動や食事(ナトリウム摂取量、脂肪摂取量)、飲酒は、脳卒中リスクの大きな構成要素です。脳卒中はどの年齢でも生じる可能性がありますが、高齢になるに従ってリスクが高まってくる傾向があります。両親のいずれか一方が65歳までに脳卒中を発症した場合には、その人の脳卒中リスクも高まります。予防法に関しては、低脂肪・低ナトリウム食の摂取、血圧コントロール、健康な体重を維持すること、運動することが推奨されます。

症状と治療

脳卒中は緊急医療事態です。しかし症状を認知するのは困難ではなく、迅速に治療することで、障害を回避できるか、最小限に留めることができる場合があります。主な徴候は、突然の筋力低下、突然の発話障害、あるいは会話理解力の障害、ならびに突然の視力低下です。しかし、障害が生じた脳の部位に応じて、他の症状が生じる場合もあります。そのような症状としては、バランスがとれなくなること、運動のコーディネーションがとれなくなること、ならびに、激しい頭痛が突然生じることです。

虚血性脳卒中の最も効果的な治療法は、脳への血流を回復させることです。これを達成できる薬剤を血栓溶解薬と呼んでいます。これらの薬剤は血管をつまらせているものを溶かしたり分解したりするからです。残念なことに、現在の治療法は完治させるまでには至らないため、多くの場合に死亡するか障害が残ります。なぜなら血栓溶解薬を使って栄養物の流れを回復させ、下流の損傷を最小限に抑えることのできる時間的な機会は、極めて短いからです。ほとんどの患者で、血餅を溶解する酵素tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)が役立ちますが、脳卒中発症から4.5時間以内に投与した場合に限ります。適切な医療で、迅速に(4.5時間以内に)投与する包括的システムがないため、tPAの広範な普及に限界があります。血栓溶解薬を使用したことにより望ましくない副作用が生じることもあります。tPAを使った治療の場合には、脳内出血を発症するリスクが高まります。

tPAのような急性的治療介入の他にも、脳卒中患者の治療後の経過や結果を向上させることをねらいとして、他の治療法を使うこともできるでしょう。外科的手法を用いて、閉塞した血管を開通させること、血液をサラサラにする抗血小板薬(例、アスピリン)や、血餅の形成を止める抗凝固薬(例、ヘパリン)を用いることなどがあります。脳卒中の間に蓄積される組織を破壊するフリーラジカルを吸収することでニューロンを保護するという観点から神経保護薬(例NA-1)もデザインされています。いずれの薬剤についても、現在までのところ、臨床試験では大きな恩恵が得られることがまだ実証されておらず、神経保護薬と血栓溶解薬を組み合わせた治療法が現在検討されています。

脳卒中発作から生存した患者の回復は長い道のりとなります。脳のどちらの半球に損傷が生じたかによりますが、あらゆる脳の機能に障害が生じる可能性があります。例えば、記憶や意思決定、発話能力や筋肉を動かす能力、推論、簡単な計算を行う能力、身体の機能や感情をコントロールする能力、他人から指示されたことを理解する能力、新しい情報を獲得する能力、それに読み書きの能力などです。脳卒中で最も多い治療後の経過や結果の1つが片側の筋力低下もしくは麻痺です。損傷は脳の特定の領域に局在しているので、リハビリテーションの戦略も、特定の機能を回復させるのに極めて特有なものになります。運動療法や作業療法、言語療法が、損傷を受けた領域で失われたニューロン回路の代わりとなるものを脳に教えることで、多くの人々がある程度の機能を回復するのに役立ってきています。普遍的に有効な治療法がないことから、損傷した組織を修復し、回復を促進させる新しい治療法が緊急に必要であることは明白です。

2. 関連情報

免責事項

この文書に掲載されている情報は、紹介する目的でのみ提供されているもので、医師による助言や診断ツールと考えてはいけません。また、治療目的として、この情報に頼らないでください。あなたの治療方針を決める前に、治療法については担当の医師と相談してください。

また、あなたの病気の状態についてわからないことがある場合も、医師と相談してください。本文書に書かれたことをもとに、医師による専門的アドバイスを軽視したり、アドバイスを求めるのが遅くならないようにしてください。

iPSTrendおよびStem Cell Networkは、この文書に書かれている情報が、執筆した時点で正確で信頼性の高いもので、最新の研究成果に基づくものであるよう、あらゆる努力を払っていますが、医学に関する情報は、短時間で変わってきます。そのため、本文書に掲載された情報が、最新のもの、間違いのないもの、あるいは全てを網羅したものであることを、iPSTrendおよびStem Cell Networkでは保証できません。

本文書に記載されている情報を信用したことにより直接的/間接的に生じる損害や損失、外傷、あるいは損害賠償の責務をiPSTrendおよびStem Cell Networkは有しません。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る