疾患情報

がん:固形腫瘍

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Cancers: Solid Tumor 2013年6月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 固形腫瘍について

がんの基礎

がん(cancer)とは、異常で無制限に増殖する細胞の塊の名前で、最終的には体組織や臓器に壊滅的な打撃を与えます。がん(cancer)と腫瘍(tumour)を同じ意味に使うことが多いのですが、実際には同じではありません。腫瘍(tumour)とは、全ての細胞の異常な増殖を指しており、無害なものもあれば有害なものもあります。無害な腫瘍は良性と呼ばれており、がん細胞を含んでいません。一方、危険な腫瘍は悪性(本質的に悪いという意味)と呼ばれています。がん細胞を含んでいるからです。

腫瘍は、身体のどこで増殖するかによって、“固形腫瘍”あるいは“液性腫瘍”と呼ばれています。がん全体の80%以上が、固形腫瘍によるものであり、特定の臓器や組織、腺において細胞の塊として増殖します。多く発生する部位は、乳房や肺、前立腺、大腸であり、そのほかの発生部位としては、脳や子宮、膵臓、皮膚、肝臓があります。一方、白血病などの液性腫瘍は、血液中で増殖し、身体のどの部位にも移動することができます(これらの一部については血液疾患の項目で扱います)。

固形腫瘍は、含まれる細胞のタイプによって、がん腫、肉腫、あるいはリンパ腫にさらに分類されます。例えば、皮膚細胞や内臓の内張りや被覆している細胞に生じる腫瘍はがん腫と呼ばれますが、肉腫は骨や軟骨、脂肪、筋肉、血管あるいは結合組織に生じます。成熟した免疫系細胞に生じるリンパ系の腫瘍はリンパ腫と呼ばれています。脳腫瘍は一般に、これらのカテゴリーには含まれません。脳だけに見つかるタイプの細胞から生じるからです。

固形腫瘍が良性(危険性がない)で、最初に生じた部位にとどまっている場合には、一般には、切除することが可能であり、長期の危険にはなりません。しかし、悪性を獲得した固形腫瘍は、血液やリンパ(免疫)系を介して、身体の他の部分に広がることができます(転移)。がんがいったん転移すると、患者の予後は不良になります。しかし、ある種の腫瘍は転移し、他の腫瘍は転移しないのはなぜかについては、現在でも謎です。

原因、リスク因子、病期判定

固形腫瘍のタイプは極めて多く、そのそれぞれについて原因やリスク因子を検討することはできません。その代わりに、がん全般の原因やリスク因子、病期判定について以下に解説します。

がんは家族性に生じる場合がありますが、現時点でわかっている限り、一部の症例(5-10%)が、受け継いだ遺伝子の変異によって生じます。残る90-95%の症例での異常な増殖、浸潤性、治療抵抗性も、遺伝子の異常もしくは遺伝子を制御する方法の異常によって生じていると考えられます。しかし、これらの異常は後天性のものであり、遺伝したのもではなく、腫瘍を発症した人に特異なものです。そのような異常は、他の遺伝子の発現調節(エピジェネティック制御因子)を含む細胞の行動の多くの面に影響を及ぼすと思われます。

特定のがんを形成する原因となる遺伝子の変化を、がん発症のリスクに影響を及ぼす因子と混同してはなりません。リスク因子は、変えられるものと変えられないものとに細分することができます。がんのリスクに影響を及ぼすと思われるライフスタイル因子の例には、喫煙や運動、体重、飲酒があります。変えることのできないリスク因子の例としては、年齢や性別、家族歴があります。がんのタイプとある種の毒物へのばく露との間に関連がある場合が時にありますが(肺がんと喫煙)、多くの場合、がんの原因は現在でも謎です。

がんは突然出現するように見えますが、多くは実際にはゆっくり増殖し、数年間は無症状のままです。その結果、かなり進行するまで見過ごされたり、偶然発見されたりすることになります。しかし、悪性を獲得したがんはどこからともなく現れるように見え、数ヶ月以内に死を招きます。残念なことに、生物学は、このようながんのふるまいや転帰の違いをほとんど説明できません。

がんの診断では、病期判定(ステージング)が重要な部分です。病期は、様々な治療を受けた後の個々の転帰についてのこれまでの経験に基づいて、治療方針の決定をガイドするのに役立つからです。TNM病期判定システムでは、腫瘍サイズ(T)、転移リンパ節数(N)、および遠隔転移が見つかるかどうか(M)をもとに、がん全体の病期0, I, II, III期あるいはIV期のどれにあるかを判定します。一部のがん細胞には増殖に有利となる特定の細胞表面受容体を持つ場合もあり、受容体の状態を知ることで、がんの病期について、さらにより詳しく評価することができます。病期判定因子に加え、予想される転帰(または予後)も、年齢や患者の健康状態の影響を受けるでしょう。

治療法

固形腫瘍の最新治療を支える標準的な治療法には、手術や放射線治療、化学療法があります。局在していて手術可能な腫瘍については、手術が最も効果的な治療法であり、腫瘍を完全に切除し、腫瘍周囲の組織端に腫瘍細胞が存在していないことを確認することで、手術の成功を見積もることができます。放射線治療は、外科切除を受ける前に腫瘍を縮小させるのにしばしば使われ、腫瘍の再発を防ぐことを期待しても行われます。しばしば放射線治療や手術と組み合わせて使うことのある化学療法は、がん細胞を死滅させ患者を延命させるのに使われている一種の全身薬剤投与です。

化学療法や放射線治療は、多くの場合はがん患者に明らかな利益をもたらしますが、それにもかかわらず毒性があり、短期あるいは長期に患者の状態が悪化し、時には死に至る場合があります。これらの副作用を緩和させる努力から、免疫治療などのより標的を絞った治療が開発されました。免疫治療の戦略は、腫瘍の増殖を抑制したり、腫瘍を免疫系が攻撃するトリガー(引き金)となるような特別な目印を腫瘍細胞につけるという強力な免疫薬剤に腫瘍細胞をばく露させるものです。細胞を基にした免疫治療では、腫瘍細胞と闘い死滅させる特定の免疫系細胞(ドナー細胞あるいは患者由来の細胞)を患者に注入するか、毒性のある標準治療で枯渇した細胞を供給します。最も多いタイプの細胞治療が、造血幹細胞移植です。

腫瘍が全身に広がった場合には、手術で取り除ける希望はほとんどなく、しばしば化学療法などの細胞毒性治療に対する抵抗性が極めて高くなります。技術的進展によって主力の治療法を改良する努力が引き続き行われており、標的(ターゲット)療法やがんワクチン、サイトカインベースの治療、分子検査法などの新しい取り組みが試されていますが、転移性固形腫瘍の大半は治癒させることができません。

2. 関連情報

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