疾患情報

脊髄損傷

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Spinal Cord Injury 2012年3月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 脊髄損傷について

中枢神経系(CNS)は 脳と脊髄から成り、私たちが感覚で得た情報を全て処理し、臓器や反射機能を保ち、運動や思考、気分を司る役割を果たしています。

脊髄は、束ねられている長い神経線維に沿って電気信号を運ぶことで、脳と全身をつなぐ極めて重要な臓器です。

脊髄から枝分かれして全身に至る神経が、末梢神経系(PNS)です。末梢神経は信号を受け取ることと運ぶことを行い、それによりフィードバック・ループを形成し、私たちが刺激を感じたり運動したりすることを可能にします。

神経細胞(ニューロン)には、軸索と呼ばれる細長い突起があり、細胞のコントロールセンターからの信号を伝える電線の役目をします。軸索の直径は顕微鏡でしか見ることができないほど細いものですが、長さは数フィートになる場合があります。神経線維にはミエリンと呼ばれている脂肪性の物質が取り巻いています。これは電話線の絶縁体のようなものです。ミエリンは、電気信号が伝わる速度を速め、神経を保護する神経系の重要な要素です。ニューロンに加え、脳にはグリア細胞があり環境を安定化しミエリンを造りニューロンを支え保護する重要な役割を果たしています。

脊髄損傷(SCI)は、頸部から腰までいずれの部位でも生じる可能性があります。脊椎が骨折や脱臼の初期の外傷を受けたときに、柔らかい脊髄に激しい力が加わります。脊髄自身は折れなくても、その中にある小さな神経線維束の多くが切断されます。この最初の機械的損傷の後に、炎症、腫脹その他の代謝反応が引き起こされ、神経線維がさらに損傷を受け破壊されます。患者が経験する麻痺の程度は、脊髄に受けた損傷の程度に依存します。損傷部より下部の感覚がなく運動させることもできない“完全麻痺”の症例であっても、脊髄そのものは完全には切断されておらず、実際、損傷を受けていない損傷部位を通過する軸索が一部存在しています。これらの損傷を受けていない軸索の一部は、ミエリン鞘(絶縁体)を失っており、そのため電気信号をうまく伝達させることができません。

原因と治療

脊髄損傷は、多くは若年成人に生じ、およそ80%が男性です。交通事故が症例のおよそ50%の原因です。スポーツでの事故、激しい転落、外傷、二分脊椎などの脊椎疾患も、脊髄に永続的な損傷を引き起こすことがあります。北米では、100万人以上の人々が、何らかのタイプの脊髄損傷のため、障害を抱えて生活していると推定されています。

脊髄損傷は激しい事故の結果生じることが多く、それまでは健康な若者を麻痺させる結果となるため、影響が重大で長期間持続する可能性があります。受傷の程度によりますが、リハビリテーションは多くの人々がある程度の機能を回復させるのに役立つでしょう。

皮膚や血液、筋肉、その他の臓器とは異なり、さまざまな理由で中枢神経系は損傷を受けた後に再生することはふつうありません。そのため、脊髄損傷により生じた障害は、長く困難なものとなるでしょう。これとは対照的に、末梢神経系の神経は、受傷後に再生する傾向があります。末梢神経系はもともと再生できるようにプログラミングされていて、また末梢神経細胞の軸索をミエリン化する細胞(シュワン細胞)は再生を促進させる傾向があるからです。

脊髄損傷が生じた後、治療を行うことで障害を軽減できる機会(数時間、あるいは数週間)がわずかながらあります。脳と脊髄の間の電気信号の伝達を回復させるには、損傷を受けたニューロンのまわりのミエリン鞘を修復する必要があり、重症例では切断された神経線維を、損傷部を通じて、損傷部より下位のニューロンネットワークまで再成長させる必要があります。身体が損傷に応答して生じさせる傷その他の細胞損傷によって、受傷後の損傷部位を通じて線維が連絡することが困難になることがしばしばあり、多くの症例ではリハビリテーションに頼るしかなくなります。

2. 関連情報

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