疾患情報

パーキンソン病

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Parkinson's Disease 2012年5月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. パーキンソン病について

パーキンソン病は中枢神経系(CNS)の慢性疾患で、ドパミンを産生する脳内のニューロンが次第に失われていくという特徴を有しています。ドパミンは黒質緻密部のドパミンニューロンからのメッセージを線条体に伝達する重要な神経伝達物質です。脳のこの部分は、運動のコントロールとコーディネーションを行っています。

世界的に見ると、パーキンソン病は全ての人種や職業のおよそ5百万人が罹患しており、最も多い神経変性疾患の1つで、アルツハイマー病に次いで第二位を占めています。ドパミンニューロンのおよそ80%が消失するとパーキンソン病の症状が現れます。このような発症は60歳までは認められないのが通常ですが、20歳の患者が発症したという症例報告もあります。他の神経変性疾患と同様、パーキンソン病の大半は孤発性であり、わずか10-15%の症例が家族性のものであり、家族間で遺伝できる複数の遺伝子と連関しています。

症状と原因

パーキンソン病の原因は現在でも謎であり、症状や進行パターン、治療応答には極めて大きなばらつきが見られます。ドパミンが欠乏することが主な寄与因子であることは以前からわかっており、一部の諸例では、遺伝や環境も寄与因子になっています。

パーキンソン病の明らかな徴候は手や足、顔面にコントロールできない振戦が生じること、固縮、運動がゆっくりになること(運動緩徐)、動きを開始することが困難であること、およびバランスや歩行、姿勢の障害が増加することです。これらの症状は、ドパミンニューロンが消失することと関係しています。しかし、まばたきが少なくなることや、ソフトボイス(小声)、嚥下困難(嚥下障害)、無動、嗅覚消失(無嗅覚)、疼痛、気分障害、睡眠障害、認知障害、血圧、消化器障害、泌尿器障害、性機能障害などのドパミンの消失とは関係のない症状もあります。転倒や認知症は、疾病の後期段階で生じるという特徴があり、これらもドパミンニューロンの消失とは関係のない症状です。

科学者たちは、パーキンソン病に何らかの役割を果たしている遺伝子を16個特定しました。そのほとんどは、タンパク質の折りたたみ異常や集積あるいはミトコンドリアの機能障害に寄与するものです。パーキンソン病を生じさせる明確な環境因子は現在のところまだ確定していませんが、そのようなリスク因子と考えられているのは、殺虫剤、非都市部での生活、井戸水を飲むことです。予想とは反対に、喫煙やカフェイン摂取は、実際にはパーキンソン病のリスクを低減させます。双生児に関する研究で、様々な発達年齢での、環境因子と遺伝因子の相対的重要性について少し解明されてきています。高齢者では環境因子のほうが大きく寄与していますが、若年者では、遺伝因子が疾病の発症により多く寄与しています。

治療

多くの症状はドパミンが欠乏することによるものであるため、パーキンソン病の治療のほとんどでは、ドパミン補充療法に焦点が絞られています。パーキンソン病を治療する基準となる薬剤は、レボドパと呼ばれている薬剤です。レボドパはドパミン前駆物質で、多くの場合、身体がレボドパをドパミンに変換させるのにより多くの時間をもたらす薬剤と合わせて投与されます。しかし、レボドパには副作用や合併症があることから、他の薬剤を探す研究が熱心に行われるようになりました。それらの薬剤はレボドパよりも効果は低いが、ベネフィットを示します。そのような薬剤としてはドパミンアゴニスト(ドパミン受容体を賦活化する薬剤)や、ドパミン代謝をブロックする薬剤(ラサギリンなど)があります。その他の治療法としては、脳自身のドパミン産生ニューロンの死滅を防いだり、遅らせたりすることを狙いとした神経保護治療があります。深部脳刺激法は、症状を抑えることをねらいとして、電気インパルスを使って脳の特定の領域を刺激する外科的テクニックです。

神経保護薬療法がターゲットとしているのは、脳内でドパミンニューロンが死滅するのに寄与していると思われるメカニズムです。そのようなメカニズムには、炎症、細胞内カルシウム蓄積、酸化ストレス、過活動神経伝達、ミトコンドリアの機能障害、タンパク質分解ストレス、ならびにアポトーシス(ある種の細胞死の形態)が含まれるでしょう。しかし、疾病の進行を遅らせることのできる薬剤はまだなく、そのため、科学者たちは、遺伝子治療や栄養因子ならびに幹細胞のデリバリーにもとづく新しい治療アプローチを開発する努力を熱心に行っています。

2. 関連情報

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