--> 多発性硬化症 : 疾患情報 | iPS Trend

疾患情報

多発性硬化症

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Multiple Sclerosis 2012年9月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 多発性硬化症について

多発性硬化症は中枢神経系の慢性炎症性疾患で、自己免疫疾患と考えられています。患者自身の免疫系が脳や脊髄に炎症を引き起こし、炎症の結果として、オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)が死滅します。オリゴデンドロサイトは、神経細胞の主な突起である軸索を取り巻く細胞で、軸索は神経細胞間の電気信号を伝えます。オリゴデンドロサイトにはミエリンが含まれています。ミエリンは、軸索が伝達する電気インパルスを絶縁する物質です。軸索を取り巻く絶縁体が消失すると、神経インパルス間に"短絡"が生じてしまいます。こうなると、神経系は適切に機能できなくなり、患者に障害が生じます。これを再発や発作と呼んでいます。多発性硬化症の初期段階では、炎症がおさまると、中枢神経系は部分的に治癒し、障害が少なくなり、このことを寛解と呼んでいます。しばらくすると中枢神経系は修復能力を失い、損傷は永続するものとなり、この結果中枢神経系の神経細胞が死滅し瘢痕化します。これが持続的障害として現れます。

多発性硬化症は進行を予想することができません。迅速に進行する場合もあれば、ゆっくり進行し、稀に急激な発作を示すか、一定の速度で進行する場合もあります。その結果現れる様々な臨床像はおおまかに4つのタイプに分類されています。再発寛解型多発性硬化症が症例の大多数(85%)を占めており、発作と発作の間で患者は安定な状態を保ち、しばしば完全に回復する場合があります。しかし、時が経過するにつれてそれは二次性進行型多発性硬化症に変わるリスクがあります。二次性進行型多発性硬化症では明確な再発がなく神経機能は徐々に低下します。しかし、診断された時点から二次性進行型多発性硬化症が始まるまでの期間にはばらつきがあり、5年未満から30年以上と幅があります。対照的に、悪性型多発性硬化症は、特定のタイプの疾患であり、再発率が高く、極めて早期に二次性進行型多発性硬化症に変化するという特徴を持っています。15%の患者では、一次性進行型多発性硬化症に特有の一定速度での低下を示し、この患者グループのうち5%は急性発作も経験し、進行再発型多発性硬化症と呼ばれています。

原因、症状、治療法

世界中では、250万人が多発性硬化症に罹患し、ほとんどの患者は、20歳から50歳までの間に診断されます。10%未満の症例が、18歳未満で発症しており、女性の方が男性よりも3倍罹患率が高くなります。この疾患の発症には、環境トリガーと遺伝的要因の両方が関係していると考えられています。まだ解明されていない環境トリガーが、妊娠中あるいは出生直後に生じ、青年期の別のトリガーの影響をいくぶん受けやすくなると考えられています。不思議なことに、地理が有病率と関係しており、温帯気候(例、オークニー諸島や北米、ヨーロッパ、南ニュージーランド、オーストラリア)の方が、熱帯地方よりも多発性硬化症患者が多いことが示されています。この現象は、季節の変化によって日光へのばく露量が低下する地域では、ビタミンDの産生量が低下することと関係していると考えている研究者がいます。社会経済状態が高いほど、また喫煙者ほど多発性硬化症を発症するリスクが高まります。遺伝的リスク因子に関しては、白人の方がアフリカ系やアジア系と比較して多発性硬化症を発症するリスクが高くなります。一部の家系で、多発性硬化症を発症するリスクが高いのは、複数の遺伝子が伝えられることによるもので、それぞれの遺伝子が相加的に寄与していることが原因です。50を超える多発性硬化症感受性遺伝子がこれまでに特定されており、最も注目すべき点は、T細胞やB細胞、樹状細胞の免疫反応に極めて重要な主要組織適合遺伝子複合体のDNAハウジングの伸長と関係していることです。

多発性硬化症を検査する簡便な検査法はありませんが、診断は、2回以上の症候性発作が生じたことに加えて、中枢神経系の白質に損傷が生じていることを示す徴候が2つ以上あることによってなされることが多いです。症状には個人差があり、バランスや歩行、コーディネーション障害(ぎくしゃく)、しびれ(ピリピリする感覚、感覚がない)、視覚障害(霞目、眼前暗黒、あるいは色覚の消失もしくは低下)、排尿並びに性機能障害、便秘、発話障害、顔面筋力低下、認知障害や感情障害などが含まれます。

疾病のステージや予後にもよりますが、多発性硬化症は通常は急性発作を沈める薬剤(糖質コルチコイド)で治療したり、疾病経過を改善させたり(βインターフェロン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、フィンゴリモド、ミトキサントロン)、あるいは対症療法(経口ビタミンD、カリウムチャネル遮断薬、バクロフェン)を行って治療します。少数ではありますが多発性硬化症に対する医薬品もいくつか存在しており、その多くは、免疫反応を変えて、疾病の進行を抑えるか、悪化を遅らせる作用を有します。もっと奏効する治療法があるとすれば、炎症反応の根源に作用し、ミエリンに対する攻撃を促進する記憶を持った免疫細胞を体内から取り除き、さらに、ミエリン鞘の修復や再生を行うような治療法であろうと科学者たちは考えています。

2. 関連情報

免責事項

この文書に掲載されている情報は、紹介する目的でのみ提供されているもので、医師による助言や診断ツールと考えてはいけません。また、治療目的として、この情報に頼らないでください。あなたの治療方針を決める前に、治療法については担当の医師と相談してください。

また、あなたの病気の状態についてわからないことがある場合も、医師と相談してください。本文書に書かれたことをもとに、医師による専門的アドバイスを軽視したり、アドバイスを求めるのが遅くならないようにしてください。

iPSTrendおよびStem Cell Networkは、この文書に書かれている情報が、執筆した時点で正確で信頼性の高いもので、最新の研究成果に基づくものであるよう、あらゆる努力を払っていますが、医学に関する情報は、短時間で変わってきます。そのため、本文書に掲載された情報が、最新のもの、間違いのないもの、あるいは全てを網羅したものであることを、iPSTrendおよびStem Cell Networkでは保証できません。

本文書に記載されている情報を信用したことにより直接的/間接的に生じる損害や損失、外傷、あるいは損害賠償の責務をiPSTrendおよびStem Cell Networkは有しません。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る