疾患情報

肝不全

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Liver-Failure 2013年7月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 肝不全について

肝臓は、人体内で最大の固形臓器であり最大の血液貯蔵庫です。心臓から出て行く血液の1/4は、肝臓に向かい、肝臓を血液が循環する際に、生命を維持するのに重要ないくつかの機能を担っています。肝臓は、腸から輸送されてきた栄養物を代謝し、体内の老廃物を除去し、毒性物質や薬剤を血液から濾過し、血糖や脂肪、ホルモンのレベルを維持します。肝臓は、感染症に対する免疫反応にも参加しています。

肝臓のほとんど(80%)は、肝細胞と呼ばれている細胞から構成されています。肝細胞の平均寿命は150日です。つまり、肝臓は、正常な状態下で、常に自己更新を行っていることを意味しています。肝細胞は肝臓内の発電所であり、重要な代謝機能の大半を担っています。これらの細胞はグルコースやタンパク質を血液や胆汁中に、細胞の間を走っている毛細胆管と呼ばれている細管を通じて分泌しています。胆汁は胆嚢に貯蔵され、脂肪の分解と吸収に必要です。その他の重要なタイプの細胞としては、胆管細胞や内皮細胞、肝星細胞、ピット細胞、マクロファージ(肝臓ではクッパー細胞と呼ばれている)があります。クッパー細胞は、細胞の破片や病原体、損傷を受けた血管を取り除きます。

肝臓は非常に頑健な臓器であり、過酷な使用にも耐え、機能し続けることができます。そのため、一旦肝臓が"機能不全"状態に達すると、肝臓の構造や機能に対するダメージは取り返しのつかないものとなり、身体のたくさんの必須機能が、修復できる限界を超えて消失します。肝不全を発症した患者は、診断から数ヶ月以内に死亡する場合があります。

肝不全患者は劇的に増加しており、一部の推定によると、今後20年間に3倍になると予想されています。疾病対策センターの推定では、米国では3千万人が肝臓疾患に罹患しており、毎年2万7千人が、肝疾患がもとで死亡しています。現時点での慢性肝不全の最も多い原因はウイルス性肝炎とアルコールです。カナダでは、肝疾患が第四の死亡原因です。最も多い原因は、脂肪肝として知られている状態でありますが、B型肝炎やC型肝炎も慢性肝疾患の主要な原因です。2百万人ものカナダ人が、年齢や性別、出身民族あるいは生活習慣を問わず、生涯のうちに肝疾患もしくは胆管疾患に罹ると推定されており、毎年400件近くの肝移植が行われています。

症状と原因

急性肝疾患と慢性肝疾患

100を超える肝疾患があります。その原因としては、アルコールやウイルス、肥満、遺伝、自己免疫疾患、薬剤、毒素、がんなどがあります。肝不全は、数日で生じる急性状態の結果である場合もあれば、長期にわたってゆっくり進行する慢性状態の結果である場合もあります。小児の原因は成人とは異なっています。小児では急性肝不全の主な原因は、アセトアミノフェン中毒や代謝疾患、自己免疫疾患です。小児での慢性肝不全は、胆嚢と肝臓をつなぐ管が閉塞していることにより生じる(胆管閉鎖)ものがほとんどです。これらとは対照的に、成人での急性肝不全は、ほとんどがウイルス性肝炎によるものですが、慢性肝不全の主な原因は、アルコールやC型肝炎により生じる肝硬変です。“度を超えた”ライフスタイルは肥満や中性脂肪値が高いことで特徴づけられ、脂肪肝として知られている状態になるのに寄与しています。脂肪肝は、成人の肝不全の原因として浮上しつつあります。

アルコール

世界的に見て、アルコールにより生じる肝硬変が慢性肝疾患の主な原因です。長年にわたってアルコールを過剰に摂取すると、肝臓に永続的な変化が誘発されます。肝硬変は、肝臓の多くの部分に瘢痕組織や線維症と炎症が生じることで特徴づけられます。損傷は持続的なものですが、肝臓は大型の臓器であり、一部はまだ障害をうけていない場合があります。疾病が進行すると、肝臓が瘢痕化する割合が次第に大きくなり、健全な部分を再生する能力が少なくなり、肝不全に至ります。若年層で肝疾患や肝硬変が増加していることは特に警戒すべき点であり、飲酒が関係していると考えられます。

肝炎

肝炎は肝臓の炎症であり、多くはウイルス感染により生じます。A型肝炎ウイルスは汚染された食物や水に認められます。通常は回復しますが、A型肝炎ウイルス感染症は死に至る場合があります。B型肝炎ウイルスは、母親から子へ、あるいは性的接触、薬物の使用により血液や体液を通じて伝播するウイルスです。世界中でワクチン摂取プログラムが奏効したことにより、B型肝炎ウイルス疾患の新たな発症数は、今日では減少しつつあります。C型肝炎ウイルスは、重篤で治癒不可能な肝疾患を生じさせ、世界中で感染患者が増加しています。このウイルスは、血液や薬剤使用(注射針の使いまわし)により伝播することが多く、感染すると、肝臓に慢性炎症が生じ肝硬変に至ります。C型肝炎の感染は、症状が表面化せずに進行し、ウイルスが存在していると気づく前に慢性段階まで進行している場合があります。

その他の原因

肝不全はポリ塩化ビニルや四塩化炭素などの環境毒素に過剰ばく露されることや、糖尿病や心不全、腎不全などの他の疾患の合併症としても生じる場合があります。

診断と治療

症状と診断

皮膚や血液、骨の場合とよく似て、肝臓は、通常の疲弊や損傷に応答して、自身を再生できるようにデザインされています。末期肝不全では、原因が何であるかにかかわらず、肝臓の構造や機能が不可逆的に障害され、肝臓はもはや自分自身では再生できなくなります。このような状態になると、患者は悪心や嘔吐、食欲減退、黄疸、微熱、腹痛、疲労などの症状を経験します。

肝細胞の死滅のマーカーとしての肝酵素を用いることや、ビリルビンレベル(正常に血液が廃棄される指標)を測定したり、血液凝固異常を調べたりすることで、肝疾患と診断されることが多くあります。肝不全が急性的な原因により生じるか、慢性的な原因で生じるかに関わらず、末期肝疾患であるということは、いずれ肝不全に至るのは時間の問題です。

治療

肝臓は酷使に耐え回復することができますが、遅すぎるという状態に達する前に候がほとんどありません。慢性肝疾患から末期肝疾患あるいは肝不全への境界線を一旦越えてしまうと、避けられない状況となります。腎不全を治療するように、肝臓の機能のリハビリテーションを行えるような"肝臓透析"は現時点ではありません。新しい肝臓を移植することが、現時点では肝不全の治療に唯一効果的な治療法ですが、拒絶反応のリスクや、手術に伴うリスク、ドナーが少ないなどの多くの問題点があります。1つのドナー臓器に対して待機リストには10人の患者が登録されていると推測され、多くの患者は、ドナー臓器を待ちながら末期肝疾患で死亡します。

2. 関連情報

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