疾患情報

心不全

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Heart Failure 2012年11月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 心不全について

心不全(HF)は慢性の心臓病であり、心筋の損傷により、血液を正常に充たしたり送ったりできなくなります。様々な原因で心不全が生じますが、最終的な転帰は同じで、身体の各臓器が適切に機能するために必要な血液供給が不足します。 “不全”を起こした心臓は働き続けますが、本来あるべき能力は発揮できず、静脈を通って心臓に戻ってくる血液が滞るため、組織や腎臓にうっ血が生じます。この結果、全身にむくみ(浮腫)が生じ、特に脚やくるぶしにむくみが見られます。

時間とともに、心臓は拡張することで、血液供給の不足を代償しようとします。他の筋肉と同様に、心臓も収縮しようとしますが、心臓の拡張が進むと収縮力が弱まり、血液を身体に送り出す効率がさらに低下します。最終的には、心臓が血液を身体に循環させる能力が極めて低下し、血圧が降下し始め、肺に水がたまって呼吸不全が起こり、特に横たわっている際に息切れを起こすようになります。

心不全は、先進国でも発展途上国でも大きな医療負荷となっています。5年死亡率は50%近くになりますが、これは、乳がんや大腸がんの死亡率よりも高い数字です。アメリカ心臓協会(AHA)が2010年に出した報告によると、米国だけでも、心不全と新たに診断される患者数は、毎年50万人を超えると推定されています。心不全患者は20歳以上で580万人と推定されており、米国での年間医療コストは392億ドルに達します。驚くにはあたりませんが、これらの数字は、人口が高齢化するにつれて増加すると推定されています。他の冠動脈性心疾患の治療法の進歩によっても患者数が増加します。これらの疾患の生存者は、将来心不全を発症するリスクがより高いからです。

原因

心不全の発症リスクを高める条件がいくつかあります。先進国での最も多い原因は、冠動脈疾患(心筋梗塞と心筋虚血)であり、心臓に血液を供給している動脈が狭窄あるいは閉塞することにより生じます。うっ血性心不全の主要な危険因子としては、冠動脈疾患があり、心不全全体の60〜75%を占めます。その他に高血圧があり、高齢者ではこの因子が重要になります。糖尿病や心臓弁異常(リウマチ熱や先天性心疾患が関係する)、心臓の炎症(ウイルス性)、心臓弁の感染症(心内膜炎)、あるいは筋肉の感染症(心筋炎)も心不全発症に寄与します。

症状と治療

心不全で最も多い徴候は、疲労と息切れ(呼吸困難)です。慢性心不全をかかえている人々は、水分貯留によるむくみも経験するでしょう。脚やくるぶしのむくみとして多く観察されます。他にも、咳の持続(肺に水がたまるため)や腹部での水分貯留により体重増加が生じることがあります。これらの症状は、高塩分の食事や水分の過剰摂取、あるいは水分もしくは塩貯留の原因となる薬の服用によって悪化し、風邪やインフルエンザでも悪化します。

心不全を根治させることはできませんが、その原因となっている状態を治療することで、病状のコントロールができます。治療の目標は次の3つ:症状の改善、心不全の悪化を食い止めること、そして延命です。

心不全の進行した症状を示す人々に対する標準的な治療法は、薬物治療と生活習慣の改善です。第一線で使われている薬剤は、水分貯留を減らす利尿薬、ならびに心臓拡張の進行を防いだり遅らせたりするアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やβ遮断薬です。アルドステロン拮抗薬は腎臓に作用して尿量を増加させるとともに、心臓の瘢痕形成を減少します。一方、ジゴキシンのような薬剤は、心拍を制御するのに役立ちます。生活習慣の改善も極めて重要で、休息をより多くとること、食事の塩分摂取を減らすこと、日々の活動を改めることを重点的に取り組みます。

心不全の根本原因にもよりますが、よく行われている心臓手術のうちの1つが必要になる場合があります。心臓手術の中には、患者の心臓を一時的に止める必要があり、この場合には、人工心肺装置が血液を全身に送る代わりとなります。他の処置はより侵襲性が低く、局所麻酔下でカテーテルを使って実施できます。心臓手術の例としては、異常な心臓弁を人工弁に置き換えたり、機械式ポンプを植えこんだりするものがあります。動脈が詰まっている場合には、患者の腕あるいは胸部の動脈、もしくは脚の静脈の一片を用いて詰まっている部分の迂回路を作ったり(冠動脈バイパス手術)、バルーンカテーテルで狭窄部の血管を広げ、そこにステントを埋め込んで動脈が開いた状態を保つようにしたりします。

心臓の損傷が極めて大きくて修復不可能な場合には、心臓移植が唯一の選択肢となります。重大な病変や損傷が生じた心臓の代わりに死亡直後の他人の健康な心臓を移植します。最新の心臓移植法が、1980年から実施されて成功しており、今日では心臓移植を受けた患者のおよそ85%が手術後に1年生存し、75%は5年、36%は20年生存しています。しかし、心臓の提供数は不足しており、心臓移植を受けるまでに長期間待機しなければなりません。さらに、心臓移植を受けた患者は、移植された心臓に対して身体が拒絶反応を起こさないように、免疫系を抑制する強力な薬剤による免疫抑制治療を生涯受け続けなければならず、様々な疾病に罹りやすくなります。これらの既存の治療法に加え、手術法や装置の改良、心筋の再生に役立つような遺伝的関連や薬剤を見つけることなど、心不全の新しい治療法の研究や試験が継続して行われています。しかし、進行を遅らせたり症状を緩和させたりする治療法は多数ありますが、いずれの治療法でも心臓の組織を再生させることはできません。永続的な治癒を達成できる新しい治療法は少なく、幹細胞は、この高い目標を達成できる将来の治療法として有望です。

2. 関連情報

免責事項

この文書に掲載されている情報は、紹介する目的でのみ提供されているもので、医師による助言や診断ツールと考えてはいけません。また、治療目的として、この情報に頼らないでください。あなたの治療方針を決める前に、治療法については担当の医師と相談してください。

また、あなたの病気の状態についてわからないことがある場合も、医師と相談してください。本文書に書かれたことをもとに、医師による専門的アドバイスを軽視したり、アドバイスを求めるのが遅くならないようにしてください。

iPSTrendおよびStem Cell Networkは、この文書に書かれている情報が、執筆した時点で正確で信頼性の高いもので、最新の研究成果に基づくものであるよう、あらゆる努力を払っていますが、医学に関する情報は、短時間で変わってきます。そのため、本文書に掲載された情報が、最新のもの、間違いのないもの、あるいは全てを網羅したものであることを、iPSTrendおよびStem Cell Networkでは保証できません。

本文書に記載されている情報を信用したことにより直接的/間接的に生じる損害や損失、外傷、あるいは損害賠償の責務をiPSTrendおよびStem Cell Networkは有しません。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る