疾患情報

筋ジストロフィー

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Duchenne's Muscular Dystrophy 2012年8月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 筋ジストロフィーについて

筋ジストロフィーは筋力の低下と衰えを導く遺伝性神経筋疾患の一種です。筋ジストロフィーのうちで最も多く、そして重篤な症状を示すのがデュシェンヌ型筋ジストロフィーです。男児3,500人に一人が罹患し、典型的には筋肉が次第に麻痺し、20歳台で呼吸合併症や心臓合併症で死に至ります。他のタイプの筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型と比較すると軽度であり、様々な年齢の男女が罹患します。

原因

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、X染色体上に存在する最長の遺伝子として知られているジストロフィン遺伝子が突然変異することで生じます。ジストロフィンはアンカー型のタンパク質であり、筋細胞膜のすぐ内側に存在し、細胞内の構造タンパク質を、細胞膜の外表面に存在するタンパク質と結合しています。この結合があることで、筋細胞を効果的に安定化させています。筋細胞は束になって筋肉を形成しています。ジストロフィン遺伝子変異として最も多いのは、遺伝子の一部の欠損ですが、重複や単一点突然変異も生じることがあります。この結果、ジストロフィンを作ることができなくなります。ジストロフィンは日常生活で通常に生じる摩耗などから筋肉を正常に保つのに重要な役割を果たすタンパク質であり、これが作れないと、筋肉は損傷を受けやすくなります。正常な条件下では、損傷を受けた筋肉は再生しようとしますが、ジストロフィンがないと正常なパターンの変性と再生が生じなくなります。ある時点で、新しい筋肉を作り出す幹細胞のプールが枯渇化し、再生よりも変性の方が多く生じるようになります。その結果、筋肉は炎症を起こし、線維組織や脂肪組織に置き換えられ、次第にやせ衰えていきます。

X-連鎖病

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは一般的にX-連鎖病と呼ばれています。つまり、ほとんどの症例でジストロフィン遺伝子の突然変異は母親から遺伝されます。ジストロフィン遺伝子は、2種の性染色体(X染色体およびY染色体)のうちX染色体上にしか存在していません。女性にはX染色体が二本あるため、ジストロフィン遺伝子も2つ持っています。そのため、仮に一方のX染色体に欠陥遺伝子があったとしても、通常はもう一本のX染色体上の同じ遺伝子で補うことができるため、女児がX-連鎖病に罹患することは稀です。一方、男児はX染色体を母親より、Y染色体を父親よりそれぞれ1本ずつ引き継ぎます。Y染色体にはジストロフィン遺伝子がないため、X染色体上のジストロフィン遺伝子に欠陥があった場合に補う手段がありません。

症状ならびに診断

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは通常は3歳から5歳までに発見され、子供が歩行困難である、頻繁に転倒する、または同じ年齢の他の子供に遅れずについていくことができないということに親が最初に気付きます。疾病により筋肉の損傷がより進展すると、呼吸することや話すこと、直立姿勢を保つことが困難になります。8歳から10歳までの間に装具の装着が必要になり、通常は12歳までに車いすが必要となります。治療しなかった場合、20歳代から30歳代まで存命することは少なくなります。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの診断を確定するには主に3種の検査法が行われています。CKと呼ばれる酵素のレベル測定では、CKが高いレベルで存在していると、筋肉細胞が破壊されていることが示唆されます。遺伝子検査ではジストロフィン遺伝子に突然変異があることが見つけられ、筋生検では筋肉内にジストロフィンが欠落しているかどうかを明らかにすることができます。

治療

デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治癒させる治療法は現時点ではありません。治療の中心は、ステロイド、理学療法、装具と車いす、脊椎手術、呼吸補助です。これらの治療は、症状をコントロールし、筋力を鍛え、運動性を維持し、疾病によって迫り来る困難に対処することで、患者の生活の質を向上させることに役立ちます。プレドニゾンのようなステロイドが、疾病の進行を遅らせることのできる唯一の治療法ですが、それもほんの短期間(最長3年間)だけであり、体重増加や骨折リスクの上昇といった重大な副作用を伴います。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの新しい治療法が強く必要とされています。筋ジストロフィーを治療する際の最も困難な事の1つは、治療のターゲットとなる組織が身体全体に分布している骨格筋である場合に、治療をどのように行うかということです。また、遺伝子治療の場合には、ジストロフィンのような大きな遺伝子を届けるのに適したベクターを見つけることが主な目標の1つとなります。あらゆる領域での研究が進展するにつれて、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状を改善する治療薬や、ジストロフィンの遺伝子欠損を正す、あるいはまだデュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子に罹患していない(ジストロフィンタンパク質を産生できる)部分を救済する遺伝子治療薬に焦点を絞った新しくより有望な治療法が開発中です。細胞ベースの治療法は、細胞自身をベクターとするか、または固有の再生特性を活用することによりジストロフィンタンパク質を補充するか、ジストロフィンを作る細胞を補充することを狙いとしています。

細胞ベースのアプローチ、とりわけ幹細胞を用いたものが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに残された注目すべき治療法です。

2. 関連情報

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