疾患情報

クローン病

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Crohn's Disease 2014年4月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. クローン病について

背景

クローン病は完治不能で予期できない重度の疾患です。2つの慢性炎症性腸疾患の1つとして(もう一つは潰瘍性大腸炎)、クローン病は、口から肛門まで消化管のどこにでも病巣が形成される場合があります(従って会話表現では、歯茎(gum)からおしり(bum)までと表現されます)。発症部位として最も多いのが回腸(小腸の下部)、結腸(大腸)および、回腸と大腸の結合部です。他にも口や皮膚、関節、眼にも生じ、頻度はそれほど多くありませんが上部消化管(食道、胃、十二指腸(胃から小腸までの腸管))にも生じます。

クローン病が再発と寛解を繰り返すのは、消化管を蝕む炎症発作による為です。詳細な原因はまだ謎ですが、クローン病は多次元的な疾患であるという点で研究者の意見は一致しています。

伝統的な見方は、クローン病は身体の免疫系が消化管を攻撃する自己免疫疾患であるということ、ならびに、この間違った攻撃に至る一連の事象を、様々な遺伝的トリガーや環境トリガーが誘発させるというものです。一部の研究者は、免疫系が腸管内に存在している通常の細菌の構成(細菌叢と呼ばれる)に耐えられなくなり、遺伝的に発症しやすいヒトでは、この結果、最初に炎症が活性化され、時間が経過すると共に慢性化していくと考えています。マイコバクテリウム属やシュードモナス属、リステリア属などの感染性細菌も、この疾患の発症に関係していると考えられています。

また、遺伝的コンポーネントがあることは明白です。クローン病患者の15 – 20%には、家族歴があり、ゲノムワイド解析で、70箇所以上の遺伝子領域が関係していると考えられています。環境要因として考えられるのは、高脂肪食、肥満、喫煙、上部消化管および胃感染症、ならびに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用です。

研究が進んでくるにつれて、一部の研究者は、クローン病を、免疫系の細胞、とりわけ単球と好中球に機能障害が生じており、高レベルの細菌やウイルスを排除できないことになる免疫不全疾患と記述しています。

クローン病は通常は2つの年代に発症します。まず10代と20代であり、第二の年代は50代と60代です。症状が他の消化器疾患と重なりあうことがしばしばあるので、クローン病の診断が困難である場合があります。身体検査から始まり、大腸鏡検査や内視鏡検査、血液検査あるいはX線検査を使って診断を絞り込み、炎症を評価することまでの多数の検査の実施が必要となる場合があります。

症状と予防

クローン病の症状を最初に発表した1813年の論文では、腸が潰瘍化したことによる慢性下痢の患者について記載しています。クローン病の証明とも言える炎症が、3つの明確に区別できるフェイズで、時間をかけて激しくなります。ライニング(粘膜)に生じる最初の炎症フェイズにより下痢と疼痛が生じます。疾病が悪化し、炎症が深まると、消化管のより深い層が次第に破壊されるようになり、ついには炎症が消化管のライニング(粘膜)を突き抜けて隣接する組織まで達します。このプロセスは全層性炎症(あるいは壁貫通性炎症)と呼ばれており、消化管の炎症部分と隣接する組織や臓器との間で異常な結合(フィステルと呼ばれる)が形成されます。疾病が慢性、再発フェイズに到達すると、消化管が狭くなり(狭窄と呼ばれる)、腸を閉塞するまでに至ります。

クローン病患者の日常生活は困難なものです。腹痛やけいれん、下痢、発熱、体重減少、直腸出血、食欲低下、関節痛、眼の充血、皮膚発疹、血餅などの症状に悩まされるからです。症状には個人差が大きく見られますが、下痢が中でも最も深刻なものと考えられています。生活の質が相当に低下するからです。

治療

クローン病の薬物治療では、炎症応答を和らげ、患者に小康状態あるいは寛解をもたらすことを目的として、免疫系をターゲットにします。

従来は、サリチル酸などの抗炎症薬が薬物治療の主流でしたが、長期間持続する症状の寛解に影響を及ぼすことができるかどうかの判定については、まだ否定的です。ステロイドのほうが強力な抗炎症薬ですが、副作用が生じる可能性が高いため、極めて慎重に全身投与あるいは局所投与を行う必要があります。しかし、ステロイドの広範な使用は、多くの患者がステロイドに対して抵抗性を示すようになる可能性があるので、限定的です。

炎症を抑えるのに用いられている非ステロイド系薬剤の例としては、アザチオプリンや6-メルカプトプリン、メトトレキサートがあります。これらも副作用が生じる可能性がありますが、これらの薬剤は、ステロイドを受けていた患者やステロイド抵抗性を示している患者での寛解維持に有用です。

よりターゲットを絞った治療法を探す中で、免疫系の特異的な部位をターゲットにしたモノクローナル抗体療法を研究者たちは開発しました。最も広く用いられているものの1つが、インフリキシマブです。インフリキシマブは、腫瘍壊死因子α(TNFα)と呼ばれているメッセンジャー分子を阻害するモノクローナル抗体です。TNFαは通常は免疫系の様々なコンポーネントを賦活化させるので、これが阻害されると、免疫応答を緩和させることとなります。そうすることで、消化管の炎症を緩和させます。他の薬物治療と同様、このアプローチにも副作用が生じる可能性があります。

通常の腸内細菌に耐えられないことによりクローン病が生じる可能性があるという理論を検討しようとして、研究者は様々な抗生物質をテストすることにしました。中にはクローン病の標準治療法と比較してベネフィットがないことが示されている抗生物質もありますが、有望な結果が得られた抗生物質もあり、これらはさらにテストが進められています。腸内の“善玉細菌”のバランスを回復させるのにプロバイオティクスを使う試みが勢いを増しており、活発に研究が進められています。免疫系の様々な部分を抑制することを目的とした新しい治療法で、クローン病が、腸内に通常存在している細菌に対する免疫系の異常反応によって生じるのかどうかの検証を行っています。

クローン病を治療するのに多様な薬剤がありますが、この疾患を完治させることは依然としてできていません。クローン病が慢性疾患であることは、患者は常に新しい炎症領域に対処しなければならないことを意味しており、手術が必要になる段階にまで悪化する場合があります。時間が経過するにつれて患者は多くの手術を行う必要が出てきて、正常な腸はほとんど残っていない状態までに至ることもあります。明らかに、この重篤な疾患を治療する他の治療法が必要です。

2. 関連情報

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