疾患情報

血液疾患

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Blood Disorders 2013年4月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 血液疾患について

血液は様々な異なる細胞から構成されており、そのいずれにも疾病が生じる可能性があります。私たちの血液中にある細胞は、骨髄に存在している造血幹細胞(HSC)によって作られます。造血幹細胞は信じられないほどの数(700万個以上)の細胞を次々と毎日生み出し、通常の摩耗により失われた赤血球や白血球を補充しています。このプロセスを造血と呼んでいます。造血幹細胞で作られる細胞の一部は骨髄に留まりますが、多くは血液中に入りそこで一生を過ごします。他の細胞は骨髄を離れ、血液を介して移動して、組織に住み着きます。造血プロセスを数十年間研究してきた結果、造血幹細胞が成熟、多様化し、私たちの日々の生活において骨髄や血液中で働く細胞を形成するまでの運命を追跡することが可能となりました。

血液形成についての知見が深まるにつれて、幹細胞がどのように成熟するかを記述するモデルが精緻なものとなっています。しかし、極めて初期のステップは、完全に予想できます。幹細胞は自身を更新するか、成熟して、より特殊化された前駆細胞と呼ばれるものに変化します。これらの前駆細胞は、一連の発達をさらに一歩進めた細胞であり、他の細胞を作る能力が次第に制限されます。造血幹細胞の場合には、ひとたび成熟を開始したら、その子孫は、もはや造血幹細胞を作ることはできず、より特殊化された血液系細胞しか作れなくなります。造血幹細胞の初期の前駆細胞は、“骨髄系”か“リンパ系”のいずれかにカテゴリー分けすることができ、それらが作る細胞は、骨髄リネージュもしくはリンパリネージュのいずれかに属すると言われます。リネージュとは、共通の先祖を持つ細胞集団のことです。

骨髄リネージュに属する細胞で、私たちがよく知っているのは、赤血球と巨核球(血小板を作る大型の細胞)です。赤血球は酸素を体内の組織に運び、二酸化炭素を肺に送り、そこで放出されて呼吸で排出されます。巨核球が砕かれて血小板が形成され、血小板が一緒に接着すると血餅を形成します。骨髄リネージュにはマクロファージや樹状細胞、顆粒球などの他の細胞がいくつかあります。これらの細胞はあまり知られていませんが、同じように重要です。それらの細胞の役割の1つとして、一般的な病原性の脅威に対する最初期の最前線の免疫応答に関与しており、リンパリネージュと呼ばれている別の血液リネージュを形成させる免疫応答の“大砲”をキックスタートすることも助けます。これらの細胞は一般的には、B、T、NK、NKT細胞などとイニシャルで表現されており、特定の病原体やがんに由来する自分自身の細胞・組織をターゲットにすることで機能します。

原因

血液疾患は、一般にはhematological disease(血液疾患)とも呼ばれ、骨髄リネージュに属する細胞でも、リンパリネージュに属する細胞でも、いずれの細胞からも生じる可能性があります。原因は多くの場合、先天性欠損や免疫欠損、自己免疫メカニズムならびにがんに伴うものです。

出生時に存在している遺伝的状態は先天性として知られており、遺伝子の特定の突然変異や、遺伝子の一部あるいは全部が存在しないこと(欠失)あるいは、特定の遺伝子が多すぎる(重複)の結果生じるものです。例えば鎌状赤血球症は、ヘモグロビンβ鎖の1箇所の突然変異により生じます。その結果、ねじれたようなヘモグロビンタンパク質となり、そのため血液細胞が酸素を組織に効率的に運んでいくことができなくなります。サラセミアは別のタイプの遺伝性血液疾患であり、赤血球の産生に障害が生じます。この疾患では、ヘモグロビンを作る遺伝子の突然変異あるいは欠失が生じているのが原因であり、死産から黄疸や貧血、疲労、さらには骨変形まで症状は多岐にわたります。

血液の免疫不全は、先天性の場合であれ、感染症や薬剤、手術などから後天的に生じたものであれ、免疫系に障害をもたらし、感染症を阻止する能力に障害が生じます。様々なタイプの免疫不全があり、軽度のものから死に至るものまで多様です。“バブルルーム(無菌室)の中の少年”として有名になったDavid Vetterを覚えておられるでしょう。彼は1971年に生まれ、重症複合免疫不全(SCID)であり、正常な数のT細胞やB細胞を作り出すことができませんでした。つまり、この少年は、感染症と闘うことができませんでした。健康な人であれば決して病気にはならないような軽い感染(人の体内で軽い感染は頻繁に生じています)に対しても闘えませんでした。無菌室の中で生活することだけが、Davidを日常生じる感染症から防ぐ方法でしたが、悲しいことに、救急治療を受けるために無菌室から出て12歳で死去しました。

自己免疫疾患も免疫系が関係しますが、この場合に問題なのは、免疫細胞自身が、何に向かって攻撃したら良いかを誤ってガイドされています。私たちの身体に侵入してくる外部からの病原体と闘うのではなく、免疫系の細胞は、自分自身の組織を攻撃するように仕向けられ、組織を大きく破壊し、その結果、死に至ることがあります。血液の自己免疫疾患は稀です。1つの例が、突発性血小板減少症紫斑病と呼ばれています。この疾患に罹患した人は、血小板が極めて少ないため、血液を正常に固まらせることができず、血管から血液が遊出して、皮膚が紫色になることがあります。

血液疾患の原因リストの最後を締めくくるのは、おそらく、現代で最も話題にされ研究が進められているがんです。免疫系のがんは、造血幹細胞から、骨髄リネージュやリンパリネージュの成熟細胞に至るまで、血液系のどの細胞からも生じる可能性があります。白血病は、骨髄や血液中に存在している造血細胞に存在しているがんです。障害が生じる細胞のタイプによって、骨髄性白血病かリンパ性白血病に分類されます。骨髄腫はプラスマ細胞に生じるがんです(特殊なB細胞で、抗体を賛成し、病原体に付着し、破壊対象のマークとなります)。骨髄腫は骨髄コンパートメントに壊滅的な打撃を与えるだけでなく、異常な抗体を産生し、それが腎臓内に留まることがあります。このがんに罹患した患者は、貧血や腎不全、高カルシウム血症、骨損傷を経験することになるでしょう。リンパリネージュの細胞に形成される固形がんは多くがT細胞もしくはB細胞に生じるものであり、リンパ腫と呼ばれています。リンパ腫はリンパ節に多く見つかりますが、リンパ腫は、脾臓や胸腺などの他の部位でも増殖できます。リンパ腫が増殖し、播種されると、リンパ腫は隣接する組織や近隣の臓器を侵害し、それらが正常に機能するのを妨げます。

治療

血液疾患の最も一般的な治療法は、輸血や薬物療法、造血幹細胞移植です(HSCT;一般には骨髄移植として知られています)。輸血は、患者に欠落している血液成分や細胞を直接的に補給するものです。エリスロポエチン(EPO)などの薬剤は、患者が本来持つ赤血球の産生を刺激しますが、リツキシマブのような他の薬剤は、白血病やリンパ腫でがん性のB細胞を死滅させます。造血幹細胞移植(HSCT)は、より長時間持続する効果を生じさせることを狙っています。なぜなら幹細胞のソースを補給するものであり、それによって、新しく健康な赤血球や白血球を体内で生産することが促進されるからです。

2. 関連情報

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