疾患情報

自閉症

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Autism 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 自閉症および自閉症スペクトラム障害(ASD)について

自閉症とは脳の発達に悪影響を及ぼす一連の神経発生障害で、コミュニケーションや社会的スキル、行動スキルに一生続く障害を引き起こす障害です。自閉症の子供は、出生時には正常に見えますが、生後36ヶ月以内に症状が発現することが多く、男児の方が女児よりも4倍罹患率が高くなります。自閉症を完治させることはできないので、本人や介護者、医療システムに極めて大きな負担が掛かります。早期発見が極めて重要であり、生後36ヶ月でのスクリーニングを行うことが推奨されます。この早期段階で実施する介入やサービスによって、症状を緩和させるのに役立つことがあるからです。

診断

自閉症を検出する検査法はありません。親は、“診断の旅”に出発することが多く、専門医は、身体検査や個人歴、臨床評価ツール、必要なら遺伝子検査などの一連の検査を使い、陽性診断を行います。しかし、これは簡単なことではありません。米精神科医カナー(Leo Kanner)によって1943年に書かれた自閉症に関する最も初期の記述の中でも、患者間の大きなばらつきがあることが一貫したテーマでした。10年間にわたる観察研究で、カナーは小児11例(男児8、女児3)の“自閉性障害”について記述しました。 “自身と関連付けることができない”、“自閉的孤独”や“同じことに対するこだわり”が強いという点で、小児は、“本質的に共通の特性”を共有しますが、障害の重篤度や、時間的にどのように形成されてきたかにつてのばらつきがかなりありました。

カナーの時代以来、無数の専門家が、自閉症の小児の研究を行い、診断を行うための判定基準を改良することに寄与しました。しかし症状の連続体や機能レベルのばらつきが極めて多いため、臨床施設が様々な自閉症関連障害に一貫した診断を行うというのは困難でした。現在では、臨床家は精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)を使って臨床判断のガイドとしており、最新版のDSM-5(DSM-IVからの改訂版)では、統一した自閉症スペクトラム障害(ASD)の新たな定義を尽くし、その定義のもとに自閉性障害(古典的自閉症としても知られているもの)、その軽度の障害であるアスペルガー障害、小児期崩壊性障害(CDD、ヘラー病とも呼ばれる)、ならびに特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)の4つの障害を含めました。自閉症スペクトラム障害としてのレット症候群の先の分類は、自閉症スペクトラム障害に存在する場合もあれば存在しない場合もあるという事実を説明するため変更されました。

DSM-5にもとづいて、自閉症スペクトラム障害であると陽性診断するには、社会/コミュニケーション行動や制限的かつ反復的行動に関するいくつかのコア症状が患者にあることを実証する必要があります。Autism Canada(自閉症カナダ)では、コミュニケーション障害や、意識の欠如、窮迫状態を慰めるため異常な行動、真似るスキルの障害、おもちゃでの異常な遊び方、友人関係の構築不能、ルーチンへのこだわり、感覚刺激に対する応答異常、行動障害、知的機能のばらつき、不均等な発達プロファイル、睡眠障害、免疫障害、消化器障害の見出しのもとに、自閉症スペクトラム障害の無数の症状をまとめています。自閉症スペクトラム障害者は多くの弱点を示しますが、推論や読書、運動、絵画、コンピュータ、記憶、視覚/空間認識ならびに音楽のカテゴリーに関して、年齢の割に非凡なスキルを持つ場合もあります。

新しいDSM-5ガイドラインが医療界でまとめられるのに併せて、自閉症患者へのサービスに障害が生じたり、これまでの臨床試験から得られたデータをまとめる機能に問題が生じたりすることなく診断確度を向上させ、医療、教育、社会の分野間での診断の一貫性を向上させるという総合的な目標を満たすことができるかどうかの評価が続けられています。

原因

自閉症スペクトラム障害の正確な原因は現在でも謎のようなものですが、遺伝的構成要素と環境構成要素の両方があることを示す多数のエビデンスがあります。遺伝が何らかの役割を果たしていることは疑いがありません。特定された突然変異の50%がde novo変異です(家族の中に初めて生じたという意味)。しかし、遺伝性自閉症スペクトラム障害も高い(37 – 90%)リスクです。様々な染色体異常が特定されており、いくつかの単一遺伝子病(例、レット症候群や脆弱X症候群)が自閉症スペクトラム障害と共通の症状を有しています。加えて、自閉症スペクトラム障害への感受性を予測する数百の自閉症スペクトラム障害連鎖遺伝子を、科学者は特定しました。

自閉症スペクトラム障害連鎖遺伝子がどのように機能するのかについて研究者は解明しようと努力しています。遺伝子の中には、ニューロンシナプスの装置の一部であるタンパク質を産生することがわかっている遺伝子もあり、胚発生時の脳内に正常なシナプス・ネットワークを形成するのに寄与しています。他の遺伝子は、免疫系のシグナル伝達や活性化、制御の機能に重要な役割を果たすことが知られています。自閉症スペクトラム障害で遺伝子が正常に機能しなくなることに関する理論の1つは、そのような遺伝子が胚発生中に不適切な時点と場所で過剰に活動すると、ニューロン回路の形成に障害が生じ、異常な脳の発達につながるというものです。研究者は引き続きこれらの遺伝子の機能的効果を特定しようと努力していますが、困難な点の1つは、様々な人にこのように広いスペクトラムの症状がどのようにして生じるのかを解明することです。これらの疑問に答えるため、遺伝子発現の総合的時空間マップやマイクロアレイ、次世代シーケンシング法などの新しいテクノロジーを応用しています。

自閉症スペクトラム障害に遺伝子が寄与していることを示すエビデンスはありますが、全ての症例に遺伝子が寄与しているとすることはできず、自閉症スペクトラム障害を発症する特定の原因がない人も多数います。事態を一層複雑にすることに、1%以上の自閉症スペクトラム障害に寄与しているものと思われる遺伝子欠損は、1つも見つかっておらず、自閉症スペクトラム障害だけに関係のある遺伝子はなく、他の知的障害や発達障害でもそれだけに関連している遺伝子はありません。最近の双生児を対象にした研究で、環境因子も重要であることが示され、研究者は、毒素、感染エージェント、活性化による免疫系のインバランス、自己免疫、neuroinflammation(神経炎症)、アレルギー、および血液-脳関門の制御不良の役割について調べています。自閉症スペクトラム障害の素因となる遺伝的要因と環境要因の複雑なからみあいを解くのは、簡単な作業ではありませんが、研究者たちが積極的に調べているテーマの1つです。

治療

自閉症の治療は、行動療法、栄養療法、薬物療法に分類されます。行動介入と社会スキルトレーニングが最も大きな治療後の経過や結果をもたらしますが、自閉症スペクトラム障害患者が経験する全ての症状を改善させることはできません。まだ有効な薬剤はありませんが、症状を改善させることを目的として、興奮薬や抗けいれん薬、向精神病薬、抗うつ薬を、医師は処方しています。いくつかの代替療法が提案されているので(ハーブ、ビタミン、ミネラル、食事、食物サプリメント、鍼、感覚トレーニング)、医療システムでは、それらの有用性を評価し解明しようとしています。有効な治療法は明らかではないため、幹細胞が何らかの寄与をすることができるかどうかに、一部の研究者は焦点を絞ろうとしました。

2. 関連情報

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