疾患情報

関節炎

本情報は、カナダの非営利団体Stem Cell Networkが制作した「Stem Cells and Disease: Arthritis 2014年4月版 患者さんへの概要」の疾患部分について仮訳したものです。なお、現在は、Canadian Stem Cell Foundationにコンテンツが移転され、情報が更新されています。

1. 関節炎について

背景

関節炎は、“関節の炎症”を意味する言葉です。この分類にあてはまる100以上の異なる状態があり、原因は多くありますが、症状は、関節や筋肉、骨の慢性痛や硬直、腫脹と共通しています。結果として生じる障害は、腱炎のように軽度の場合もあれば、関節リウマチのように重大な場合もあります。

関節炎はおおまかに変性性か炎症性に分類されます。最も一般的なタイプである変形性関節症(OA)は変性性であり(時間の経過と共に悪化します)、関節の摩耗により生じます。変形性関節症には2つのタイプがあります。原発性変形性関節症はほとんどが高齢の患者に生じ、遺伝あるいは家族因子が関係します。続発性変形性関節症は、変形や四肢のアライメント不良もしくは急性外傷などの機械的なストレスに伴うものです。

関節リウマチ(RA)は炎症性関節炎の古典的で最も一般的な例です。関節リウマチは関節のライニングに対する自己免疫攻撃が原因で生じます。その結果生じる炎症や腫脹にも、遺伝的要因や環境要因が関与していると考えられています。その他のタイプの関節炎は、狼瘡、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、痛風です。

関節炎は特定の集団が罹患するものではありません。どの年齢でも、どの時点でも、どのような民族的背景があっても罹患する可能性があります。しかし、最も罹患患者が多いのは、高齢者(60歳以上)です。多くの高齢者は変形性関節症に罹患します。変形性関節症は、一部には人口の高齢化や肥満の増加により西洋諸国では罹患患者が増加を続けています。肥満は主なリスク因子です。肥満になると、支えなければならない関節への負荷が増加し、四肢アライメントや歩行、全身代謝因子が変化するからです。変形性関節症が生じることの最も多い関節は、手、脊椎、股、膝、足です。

関節炎の負荷は、警戒すべき速さで増加し続けています。(カナダ)関節炎学会では、カナダでは、460万人の成人が関節炎に罹患しており、2036年には、750万人、5人に一人の割合まで増加すると予想されています。医療費や生産性消失コストは合わせて、年間330億ドルと推定されており、この数値は、この18年間に倍増するものと予想されています。関節炎を完治させることはできず、状態は時間の経過と共に悪化する傾向があるので、長期障害をできるだけ少なくする機会をもたらし、患者の生活の質を改善させるには、早期診断が極めて重要です。

軟骨とはどのようなものでどのように機能するのか?

軟骨は驚異的な解剖的緩衝材です。軟骨がなければ、対向する骨の間の摩擦によって、激しい痛みが生じるでしょう。滑液と呼ばれている液体で潤滑され、軟骨マトリックスは、紙のように薄い結合組織であり、関節の両端をカバーしています。液体を含む嚢が全ての関節を包んでおり、関係する神経や筋肉、腱、靭帯、骨が、通常の日常生活や激しい活動の際に動く関節にかかる機械的負荷に合わせて調節しています。

関節マトリックスは主に2つのもので構成されます。両方とも蛋白質です。タイプIIコラーゲンは強さをもたらし、アグレカンは、組織内に水を保持することで硬さをもたらします。軟骨には血管や神経がなく、軟骨細胞と呼ばれている1種類の細胞を含んでいます。正常な関節では、これらの細胞は、マトリックスタンパク質を作成する役割を担っており、永遠に続く破壊と建設のサイクルの中で軟骨をリモデリングしています。この天然のリモデリングプロセスに干渉するものや、軟骨の硬さ強度に悪影響を及ぼすものがあると、関節炎になる可能性が生じます。

治療

関節炎の治療は全て1つの目標に収束します。すなわち、患者の痛みを和らげ、罹患した関節の機能消失を最小限に留めることです。最も簡単で侵襲性が最も低いアプローチは、痛みを生じさせるような活動を避けるかできるだけ少なくすることであり、可能であれば、関節を取り巻く筋肉の強度を高めコンディショニングするような方法で運動(エクササイズ)を行うことです。しかし、このアプローチでは必ずしも十分ではなく、炎症を軽減させ、痛みを抑えるには、経口あるいは外用、もしくは注射剤による薬物治療が必要となるでしょう。この第二列のアプローチが成功しなかった場合には、損傷を受けた関節のリアライメントをつけたりデザインし直したりする外科的処置あるいは、人工関節で関節全体を置換する方法が使えます。

過去10年間に、関節炎の生じた関節を修復するのに細胞をベースにした治療を用いる可能性について研究者は検討しました。この方向性での最初の試みは、関節にドリルで穴をあけ、スクレイピングを行って、下層の骨や骨髄にチャネルを形成するものでした。この一見すると乱暴に見えるアプローチは、実際には、傷を作って、関節に炎症を生じさせる1つの方法です。炎症は、間葉系幹細胞を含む様々なタイプの細胞にとって灯台のようなものとなり、それを手がかりに炎症した領域を探し出すことができます。これが生じると、間葉系幹細胞は最終的には軟骨細胞を作り、それによって新しい軟骨が作られます。このアプローチの問題点は、このような作用は、作成した外傷のまわりの狭い範囲にしか作用しないことと、新しく作られた軟骨は、もとの組織ほどの機械的強度がなく、摩耗する可能性があるという点です。これらの問題点があることから、研究者たちは、ACI(自家軟骨細胞移植)と呼ばれている術式を開発し、現在では、関節症の関節に軟骨を再生させる方法として広く使われています。この処置では、関節の荷重がかかっていない領域から軟骨の生検検体を採取し、そこから患者の軟骨細胞を取り出し実験室内で増殖させます。次に新しく作った軟骨細胞を患者の関節症罹患関節の荷重がかかる部位に戻し移植します。自家軟骨細胞移植を実施することで、患者に短期ならびに中期の改善を高い信頼性をもってもたらすことができますが、いくつか問題点があります。成体軟骨細胞を増殖させるのは困難であり、損傷を受けた関節の小さな領域にパッチをあてるだけでも、莫大な数の軟骨細胞が必要です。細胞の培養法を改善し、移植した軟骨細胞が体内に取り込まれるのを助ける生体工学に基づいた表面を作成することで、すこし進展が見られましたが、自家軟骨細胞移植の長期有効性については、まだ評価中の段階です。

関節炎のための効果が長期間持続する治療を行う段階までには明らかにギャップがあることから、幹細胞の力を活用した新しいアプローチを研究者が検討するドアが開かれています。

2. 関連情報

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