iPS細胞研究 再生医療への道

2. 日米 最近の研究成果

掲載日:2010年4月27日

iPS細胞による再生医療を実現するため、世界中の研究者がしのぎを削っている。
日進月歩で研究が進んでいるが、最近、どのような成果が生まれているのか。今年に入ってからの日米の主な関連研究成果を紹介する。

効率的な分化誘導に道

再生医療を実現するためには、iPS細胞を効率的に特定の細胞に分化させる必要がある。
岐阜大学と京都大学の研究グループは1月7日、ES細胞が体のさまざまな組織に分化する際、Restと呼ばれるガン抑制遺伝子がスイッチのような役目を果たし、分化を促進していることをマウスを使った実験で明らかにした。
Restを意図的に壊すと、ES細胞の初期分化にかかわる遺伝子を持つ細胞の数が減り、Restを強制的に働かせると増える。ES/iPS細胞からの分化誘導法の開発やiPS細胞の効率的な誘導法開発につながる成果だ。

Restホモ欠失ES細胞をマウスに注入

iPSを介せず、直接、特定の細胞を作成

新たな展開としてiPS細胞を介さず、直接、特定の細胞を作成するというアプローチも始まっている。
米スタンフォード大学のグループは2月2日、iPS細胞を介さずに、マウスの皮膚細胞から直接、神経細胞(iN細胞)を作ることに成功したと発表。マウスの皮膚細胞に、最少で三つの遺伝子を導入しただけで神経細胞に作りかえる。腫瘍化の可能性が高い初期化した細胞を経ないため危険性は減らせるという。
一方、大阪大学の研究グループは3月18日、皮膚細胞に三つの遺伝子を入れて作った細胞を培養して、軟骨のような組織を作ることにマウスの実験で成功したと発表。iPS細胞作成に使う2種の遺伝子と、軟骨関連遺伝子を皮膚細胞に入れて培養したところ、軟骨に特徴的な遺伝子が現れた。この細胞をマウスの皮下に注入して4週間経過すると、直径3~4mmの軟骨様の組織ができた。
未知の部分が多いため、今後の研究が必要だが、遺伝子やウイルスを使わない方法と組み合わせれば、再生医療が大きく進展する可能性がある。

iPS細胞から臓器を作成

自治医科大学などのグループが、猫の胎児を使ってブタの腎臓原基を作成することに成功しているが、現在の技術では、試験管内で肝臓や膵臓の細胞を効率良く作り出したり、臓器のような立体構造を作るのは難しい。
奈良県立医大の研究グループは3月18日、マウスのiPS細胞から腸のような管をつくることに成功したと発表。マウスのiPS細胞を培養液に入れ、シャーレのフタに水滴のようにぶら下げて培養し、その後、シャーレの上で培養した結果、直径2mm、長さ5mmの立体的な管ができた。粘膜や筋肉の層を持ち、老廃物を押し出す蠕動運動のような動きをする。同研究グループでは、マウスのES細胞でも同様の方法で腸管を作成している。

間葉系幹細胞で歯周病を治療

広島大学と広大発ベンチャーのツーセルは3月18日、患者の骨髄液から幹細胞を採取して培養後に患部へ移植し、歯ぐきを再生させることに成功したと発表。歯周病患者の男女から骨髄液を採取。この中に含まれる間葉系幹細胞を培養・増殖させ、医療用コラーゲンと混ぜて歯周病患部へ注入した。8人中6人で、歯ぐきの回復や、歯周病で生じた歯と歯ぐきの間のすき間が小さくなった。
幹細胞が歯周組織と変化したり、もともとあった細胞の増殖を促すことで組織再生を後押ししたのではないかという。

間葉系幹細胞の研究は、生命倫理の問題から規制が厳しいES細胞や2006年に樹立されたばかりのiPS細胞と比べると、ずいぶん進んでいる。
今回のような再生治療が行われ、実績が積み重ねられていくことで、iPS細胞を再生医療に応用する際に大きな力となるだろう。

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