インタビュー『この人に聞く』

細胞の品質保証技術開発
~問題になるウイルスや細菌、造腫瘍化遺伝子などを迅速に同時検出~(2)

森尾 友宏 氏

聞き手:微生物や遺伝子異常をどのように捕らえるのですか。

森尾:“体系的迅速微生物検出系”では、検出を目指しているウイルスや細菌、マイコプラズマを1つの条件で同時検出できるようなキット開発をしています。方法としては、調べたいサンプルを入れるチューブに、各微生物を検出するための試薬を固相化(固定化)して、PCR装置に入れて、どんな微生物がいるかを検出します。この過程を全自動化することを検討しています。“遺伝的安定性検証系”では遺伝子増幅法や次世代シーケンサー、フローサイトメータなどを用いて、遺伝子の変異や欠失などの情報を読み取ります。

全微生物同時検出系の開発(拡大)
細菌や真菌は、抗生剤で殺された菌ではなく、生きた菌を捕まえる必要がある。短時間培養で菌の増加を検出したり、メッセンジャーRNA(mRNA)を測定したりすることでその課題を解決していく。ウイルス、マイコプラズマとの同時測定を試みている。

聞き手:ウイルスなどを検出するキットは既存のものがありますね。開発中のキットとの違いはなんですか。

海外のメーカーがウイルスの検出キットを販売していますが、検出結果が出るまでに時間がかかるうえに、高価です。また、一度に多数の微生物を選んで検出することができません。私たちが開発しているものは、迅速(検査日当日)に、安価で、同一条件で多種類の微生物を検出するものです。

微生物を検出するのに必要な試薬を順次加えていく方法だと作業者の操作により、検出結果にばらつきが出てしまう可能性があります。1本のチューブにあらかじめ必要な試薬をいれておくとそのばらつきも是正できます。現状では、ウイルスの検出キットや、その検査サービスは、海外メーカーが独占状態で、もしその供給がストップすると、日本でウイルス検査ができなくなってしまいます。そういう意味でも国産の検出キットが重要になります。

また、国内ではこれらのウイルス検査を委託できるGLP(優良試験所基準)適合施設が非常に少ないことも問題です。そのため、多くは海外に検査委託をしています。昨年9月に、本事業の成果として、ウイルス安全性試験サービスの受託とウイルス検出のための試薬の販売を開始しました。これは清水先生とタカラバイオ株式会社の共同研究から生まれた成果です。

聞き手:徐々に成果が出ているようですが、微生物検出の技術開発で難しいところはありますか。

森尾: チューブ内に試料を安定的に固相化することが1つの課題です。今は、固相化した試料を温度が異なる条件で、どのくらいの期間、安定化できるか試験をしています。

聞き手:この検出技術では、微生物のいる/いない、あるいは微生物の量(定量化)について、どのような検出結果が得られますか。

森尾:まず、微生物がいる/いないを判定する検出技術を開発します。例えば、おおまかな分け方(微生物がたくさんいる、少しいる、ほとんどいない等)を提示することはできると思います。定量化も検討しています。大事なことは、細胞の培養中や移植後に微生物が増えるかどうかです。微生物が増えていないというデータを見れば、患者さんは、安心感が得られると思います。

聞き手:検出する微生物の種類については何か工夫する点がありますか。

森尾:まず、再生医療における移植細胞に各種ウイルスを添加して、感染するかどうかを確認します。これをスパイク試験といいます。感染しなければ、そのウイルスを検査対象から取り除いて、確実な検査項目を確立することができます。細胞の種類によって感染しやすいウイルスが異なります。アデノウイルスや肝炎ウイルスは肝臓細胞で、ヘルペスウイルスは眼や神経細胞で感染しやすいのです。細菌と真菌の検出については理論検証をしている段階です。死んだ菌も含めて検出するのであれば簡単ですが、生きている菌のみを検出するのは難しく、今はmRNAを使って検出する方法などを検討しています。

大きな問題として検出に使う試薬の原料が細菌や真菌由来ということがあり、これらに由来する核酸を捕まえて陽性(微生物がいる)としないように、考慮しなければなりません。     

写真:次世代シーケンサーの前で

写真:次世代シーケンサーの前で


取材日:2015年2月12日

森尾 友宏(もりお ともひろ)氏の略歴

1983年東京医科歯科大学医学部卒業後、小児科に入局。1985年同大学大学院に入学、1991年からはHarvard医科大学に留学。一貫して原発性免疫不全症の基礎と臨床に従事。2004年より、東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野(小児科)准教授、医学部附属病院細胞治療センター長。細胞治療センター設立以降、再生医療関連の基盤技術や新規免疫細胞治療法の開発に従事。2014年6月より現職。

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