インタビュー『この人に聞く』

再生医療の普及に貢献する自動細胞培養装置(3)

中嶋 勝己 氏

聞き手:
現段階での開発進捗状況としては、凝集塊を作って、培養液を交換するところくらいまでですか。

 図:培養液交換での難しさ

図:培養液交換での難しさ

中嶋:
そうです。凝集塊ができるところまでです。私たちは装置の開発だけでなく、キーとなる道具の開発も行っています。住友ベークライトが容器の開発を行っていますが、プレート表面に細胞非接着コーティングを施したり、培養液の交換の際に細胞が出ないようにするなどの容器形状の工夫をしています。大日本住友製薬と住友化学には、装置で培養した細胞と、人間が培養した細胞とを比較してもらい、その比較結果を装置の改良につなげています。
現在、ようやく96ウェルプレートの培養液を交換するところまでできました。そこから、容器を替えるためにスポイトのような装置(チップ)で吸って移動させますが、ようやく吸い込みすぎないで壊さず凝集塊を移動することができるようになってきました。さらに容器の工夫を重ねることにより百発百中でうまく交換できるようになると思います。

聞き手:
最終的にはどこまで自動化できそうですか。

中嶋:
細胞培養の大変な作業だけを自動化するか、全自動化するか、様々な意見があります。ただ、共通しているのは“大変な作業は自動化”したいということです。この大変な作業というのは、培養液の交換などです。例えば、A培養液は半分だけ交換すればいいけれど、B培養液は9割以上交換しないといけない。培養液を減らしすぎても凝集塊がおかしくなってしまうので、どこまで培養液を減らして交換できるか、検討している段階です。

図:自動化を目指す培養工程

図:自動化を目指す培養工程

聞き手:
細胞自動培養装置の将来的な市場についてどのようにお考えですか。

中嶋:
今、研究用の培養装置を作っている会社は海外にもあります。その会社が臨床用を作ることまで考えているかはわかりませんが、おそらく、来たるべき日に備えているかとは思います。例えば、米国FDA(食品医薬品局)では、いくつかの細胞医療について承認がおりていますが、すべて人の手による培養方法によるものだけなのです。自動培養装置では、作り方が変わりますので新たに承認を得なければなりません。そこまできている装置はまだ世界中どこにもないのです。現在、この自動細胞培養装置事業の米国での展開を目指し、パートナーを探しています。

聞き手:
日本では11月に再生医療等安全性確保法が施行され、細胞培養ができる施設が増加すると見込まれています。その影響などについて考えをお聞かせください。

中嶋:
川重は再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)という再生医療分野の工業会のような組織の会員になっています。その中で、医療用の細胞培養装置の業界標準、最終的には国際標準の策定に関わる活動をしています。
再生医療等安全性確保法に伴う政令や省令では、細胞培養施設に関する新たな標準が決められていますが、そのままでは自動培養装置は当てはまりせん。
そこでFIRMとして、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)と交渉して、自動細胞培養装置について標準を作っていきたいと考えています。そういうことも行いながら、海外での承認もスムーズに通るようにしたいと思っています。

聞き手:
今後の目標について教えてください。

中嶋:
2020年ごろになればiPS細胞等を利用した再生医療についての臨床研究がどんどん始まると考えられます。その頃までには、この自動細胞培養装置の実用化ができていればと思います。我々の作った装置によって培養した細胞を患者さんに移植できるように、実現化に向けて開発を精力的に進めたいと考えています。


取材日:2014年9月24日

中嶋 勝己(なかしま かつみ)氏の略歴

1981年京都大学大学院修士課程精密工学専攻修了。同年、川崎重工業株式会社に入社、技術開発本部にて、ロボットを中心とした自動機械の開発に従事。2004年より、自動培養システムの開発に取り組み、2013年より、マーケティング本部MDプロジェクト部MD技術開発室長(現職)。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る