インタビュー『この人に聞く』

骨髄細胞により肝臓再生能力を取り戻す新たな肝硬変治療を目指す(2)

坂井田 功 氏

聞き手:
坂井田先生は2013年、2014年と続けて、異なる手法による肝硬変に対する自己骨髄細胞投与法に関する臨床研究を開始されました。2つの臨床研究はどのようなものなのでしょうか。

坂井田:
まず2013年に承認を受けた臨床研究は、厚生労働省から先進医療Bとして認められたものです。わかりづらいので、2013年に開始した臨床研究を「非培養法」で行う臨床研究、2014年に開始する臨床研究を「培養法」で行う臨床研究としましょう。

2013年に開始した「非培養法」による臨床研究は、C型肝炎ウイルスを原因とする重症度が中程度の肝硬変の患者さんを対象にしています。骨髄液を約400mL採取するのに全身麻酔が必要なため、これに耐えられない患者さんは受けることができません。2003年に行った臨床研究と基本的に同じ条件で、効果を厳密に調べるための臨床試験となっています。具体的には、正確に解析するために、信頼性の高い「ランダマイズド・コントロール・スタディ(無作為比較試験)」という手法で、山口大学医学部附属病院と、国立国際医療研究センター、山形大学医学部、先端医療振興財団臨床研究情報センターと複数の施設で行い、患者さんを2つの群に分け、一方の群に(骨髄間葉系幹細胞を含んだ)骨髄単核球細胞投与と標準的な治療を行い、もう一方の群には標準的な治療のみを行い、2群の治療効果を6か月後に比較検討します。
骨髄の採取自体は、既に一般的に行われている別の疾患の治療、例えば骨髄移植などで行われている手法と同じであるため、安全性は確認されています。採取する骨髄液もそれらと比較して少な目で、自身の骨髄細胞を移植するため、免疫抑制剤を使用する必要はありません。細胞投与治療は静脈から点滴で行い、半日程度の短い時間で終了します。これまでの研究で採取後に大きな痛みなどの副作用が残るような大きな問題は生じておりません。

しかし、リスクもあります。肝硬変の発症ピークが50~60代なので大抵の患者さんは比較的高齢ですし、既に肝硬変であるため、脾臓の肥大により血小板が減少することで血が止まりにくくなっています。そのため患者さんの血小板の数が治療の可否にも関わるため、治療可能な患者さんは限られています。
そして「非培養法」で投与する骨髄単核球には造血幹細胞や間葉系幹細胞が含まれていますが、「培養法」では培養過程で血球成分は除かれるため、造血幹細胞は含まれていません。非培養、培養いずれの臨床研究でも、投与後6ヶ月間は定期的に診察を受けてもらいます。

写真:坂井田 功 氏

写真:坂井田 功 氏

聞き手:
「非培養法」の適応は限られているとおっしゃいましたが、適応する患者さんの数はだいたいどれくらいなのですか。

坂井田:
山口大学医学部附属病院に、肝硬変の治療で来院される患者さん、他の医療機関からの紹介で来院される患者さん、webサイトをご覧になって来られる患者さんを合わせた中で、適応するのは10人に1~2人でしょうか。肝がんがある患者さん、全身麻酔が不可能な患者さんも適応外になるのでそれくらいだと思います。

聞き手:
現在、「非培養法」の研究の進捗はいかがですか。

坂井田:
「非培養法」の臨床研究は、共同研究機関全てが臨床研究用の保険加入を済ませ次第開始します。今年度中に1~2人の患者さんに、治療を実施したいと思っています。 患者さんには待って頂いている状況ですが、候補となる患者さんも順調に集まってきてくださっています。

聞き手:
では2014年に承認を受けた「培養法」についてお聞かせください。

坂井田:
「培養法」は山口大学だけで行う非盲検の第一相試験なので、ごく初期の臨床研究と考えて頂ければよいと思います。「培養法」は中期~後期の患者さんを対象にし、血清総ビリルビン値で言えば3.0~5.0mg/dLの患者さんです。5.0mg/dLは、重症度でいえば肝移植が適応される段階の手前くらいで、全身麻酔は不可能です。また、「培養法」では肝硬変の成因も限定していません。
局所麻酔で腸骨から骨髄液を約30mL採取し、精製した骨髄単核球を培養皿に播種して間葉系幹細胞を増やして、「非培養法」と同様に末梢静脈から点滴投与します。臨床研究では入院して頂くことになりますが、将来的に有効性と安全性が確認できれば、通院で治療可能になります。
動物実験では、有効性と安全性を確認しています。


取材日:2014年8月18日

坂井田 功 (さかいだ いさお)氏の略歴

山口大学 大学院医学系研究科 消化器病態内科学 教授
日本肝臓学会認定指導医、日本消化器病学会指導医、日本内視鏡学会指導医、日本内科学会指導医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医

1984年山口大学医学部卒業後、1989年大学院修了、(1987年-1990年までの3年間米国トーマスジェファーソン医科大学留学)。山口大学医学部第一内科医員を経て、山口大学医学部第一内科助手、山口大学消化器病態内科学講師 、同助教授、2005年より現職。山口大学医学部附属病院光学医療診療部部長も併任。 2012年より、医学部長・医学系研究科長併任

日本門脈圧亢進症学会(理事) 日本肝臓学会(評議員)、日本消化器病学会(評議員)、日本内視鏡学会(評議員)、日本内科学会(評議員)、日本病態栄養学会(理事)、Imperial College of London客員教授(英国)、新エネルギー産業技術総合開発機構NEDO審査委員

受賞等

  • 1995年 山口大学霜仁会(そうじんかい)本賞
  • 1999年 味の素アワード(奨励賞)
  • 2003年 ニューフロンテイアプロジェクト(奨励賞)
  • 2006年 日本消化器病学会奨励賞
  • 2006年 宇部興産学術財団賞
  • 2007年 Emerging Leader Award (Journal of Gastroenterology & Hepatology)

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