インタビュー『この人に聞く』

広い視野での研究推進が次の芽を育む(3)-全3回-

浅島 誠 氏

広い視野から「科学する」

写真:浅島 誠 氏

聞き手:
研究活動を支援する側への提言をお願いします。

浅島:
科学というのは、国策も戦略も必要ですが、一つだけに特化するのではなく、裾野を広げるために周辺のほかの研究にも力をいれないといけません。
iPS細胞は日本発の大変重要な研究ですが、幹細胞全体、ES細胞も体性幹細胞もバランスよくそれぞれの専門家が入って情報を共有する体制をとるべきです。

重要なことは「科学する」とはどういうことなのか、ということです。科学するには、iPS細胞だけでなく、リプログラミング(初期化または再プログラム化)や脱分化など広い視野からそのメカニズムを明らかにすることが大切でしょう。
アウトプットを出すためにはより多くの周辺の研究を育てようとすることが重要です。
一生を通して何かの研究に専念することがこれまで高く評価されてきましたし、それを大切にすることはこれからも必要ですが、これからは、それだけのタテだけでなくヨコも見ながら比較検討していく視点をもった若い人が必要です。工学系、人文系、を問わず学際的な多くの分野の人との協力でやることが重要でしょう。

文部科学省から再生医療の実現化のロードマップが出ました。(iPS Trend 研究開発トピックス>> 文部科学省 iPS細胞研究ロードマップ 「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略(改訂版)の具体化」
研究者にインセンティブを与えるとともに、国民にどう治療に結びつくかの説明責任を果たすという意味では大変重要で意義があります。
しかしながら、研究というものは進められる過程でどんな障害が立ちはだかるかわからないものです。
ロードマップで縛ると、研究者は目的が達成できないときには、大きな負担を感じるものです。

写真:浅島 誠 氏

それぞれの研究者はよくやっていると思いますよ。研究者の自立性を尊重すれば、ロードマップは、努力目標であるとして出すべきでしょう。
科学というものは、周りの期待で本人が研究の進展を自己規制するようになったらとても狭いものになります。
目指していたものとは異なったブレイク・スルーする発見も多いのです。

オールジャパン体制を敷いているといいますが、拠点だけのオールジャパンではなく、裾野の広がったオールジャパン、若い人が元気よく研究できるような体制整備し、支援する環境や状況を造ることが重要なのです。
科学の発展を考えたとき、一つの発見があったときに、それをコンプリートにすることと同時に、常に「次の芽を出すための土壌」を若い人に与えておかないとなりません。単に、積み上げるのでは、新しいことは出てきません。

下村脩先生の発見されたGFP(緑色蛍光タンパク質)も、はじめは何に使おうかなんていう考えはなかった。
あれを最初に応用しようとした人はすごいし、さらに実際に生体分子を可視化するのに使われていった進展はすごいことです。
一つの扉が開かれるとぱーっと前に進んで行きます。

iPS細胞もES細胞がもとにあって、倫理と拒絶反応の問題をクリアしたことで、大きなブレークスルーがあったのです。
本当に素晴らしい大きな発見であるiPS細胞が更に大きく発展していくためには、iPS細胞研究をどのように応用に結びつけていくのか、出口を何にするのか、今本当に何をすべきかをよく考えることが大切だと思っています。


インタビュアー:本間美和子(iPS Trend 監修)、佐藤 勝昭、小長谷 幸(科学技術振興機構)
掲載日:2010年2月15日

浅島 誠(あさしま まこと)氏 の略歴

東京大学名誉教授、前・副学長、理事、東京大学特任教授、独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター 上席フェロー、産業技術総合研究所 器官発生工学研究ラボ長

1972年 東京大学理学系大学院博士課程 修了(理学博士)、ドイツ・ベルリン自由大学分子生物学研究所 研究員、横浜市立大学文理学部 助教授、教授を経て1993年 東京大学教養学部 教授、1996年 東京大学大学院総合文化研究科 教授、2003年 東京大学大学院総合文化研究科長・教養学部長、2005年 日本学術会議 副会長、2007年東京大学理事・副学長(2008年3月まで)。
この間、日本発生生物学会(会長)、日本動物学会(会長)、日本分子生物学会、日本宇宙生物学会(会長)、日本細胞生物学会(運営委員、評議委員)、国際 発生生物学会(運営委員)、日本組織工学会(理事)、日本再生医療学会(理事)、日本炎症・再生医学会(理事)、アメリカ・ニューヨーク科学アカデミー会 員、Develop.Growth Differ.編集委員、Zool Sci.編集委員、Cell Structure and Function 編集委員、Int.J.Dev.Biol.編集副主幹を務めている。

専門は発生生物学、卵から幼生への器官形成、細胞の増殖と分化についての研究を行っている。1988年には中胚葉誘導因子アクチビンを世界で初めて同定、器官・臓器誘導系の確立にも注力した。

受賞等

1990年 日本動物学会賞
1990年 井上学術賞
1990年 Man of the Year 1991(USA. ABI)
1994年 木原記念学術賞
1994年 フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞(ドイツ政府)
1999年 東レ科学技術賞
2000年 持田記念医学薬学学術賞
2000年 内藤記念学術賞
2000年 有馬啓バイオインダストリー協会賞
2001年 上原賞
2001年 紫綬褒章
2001年 日本学士院賞・恩賜賞
2002年 比較腫瘍学常陸宮賞
2008年 ERWIN-STEIN-PREIS
2008年 文化功労者

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