インタビュー『この人に聞く』

「iPS細胞研究の知財戦略」を聞く(3)-全3回-

羽鳥 賢一 氏

写真:羽鳥 賢一 氏

羽鳥 賢一 氏

幹細胞出願は米国ベンチャーと大学がリード

羽鳥:
スライド15(PDF) は特許庁の特許出願技術動向調査が出典となっているものです。縦の欄は左から、日本、米国、欧州、中国、韓国への出願を示しています。
日本はさすが、JSTが最も多い出願件数を支えていますが、日本への出願総数の5分の1は米国から出されています。
米国への出願では、トップにDeltagenというLS系ベンチャー、以下、California大、Michigan大と大学が名前を連ねています。
なぜ米国ではこんなに大学が頑張れるるかというと、米国の大学には自ら出願できる潤沢な資金があることも理由になっていると考えます。

スライド15

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スライド16

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スライド17

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羽鳥:
スライド16(PDF) は大学のライセンス収入の日米比較です。
図のように150倍もの開きがあり、米国の大学では特許出願費用はライセンス収入で十分まかなえそうです。
この収入の違いは、バイドール法が米国では日本に対し20年も前に導入されたことが大きな理由と考えられます。
では、日本も20年経てば、米国と肩を並べることができるかと言えば、事はそれ程単純ではないと考えます。

聞き手:
日米の研究者には、特許マインドの違いがあるので、そこまで行くのはむずかしそうですね。

羽鳥:
MITはバイオのシーズを中心に年60億円のライセンス収入があります。SeattleのWashington大も年40億円ありますし、Stanford大はGoogleの収入が累計で300億円以上あります。
これに対して日本では東京大学ですら1億数千万円ですから、とても特許申請にお金を掛けられません。
当面、JSTのより理解のあるご支援に期待したいです。

一方、大学の基礎的な研究成果を実用化に繋げるためにベンチャーに期待される役割は大変大きいです。
in vitroからマウス、さらに霊長類での検証と、道のりは遠く、時間も資金もかかる上、途中で倒れるリスクもあります。
しかし、うまくいけば投資効果も上がり、期待がかかります(スライド17(PDF) )。
昨年、Wisconsin大で、Stem Cell Summitがありましたが、そこでは、州知事が中心となって、大学・企業・投資家さらにはエンドユーザである患者さんまで全体が集まってみんなで連携して総合力で実用化を推進するという雰囲気がありました。
日本では、なかなかできないことです。

聞き手:
やはり米国の民主主義の底の深さを感じますね。

日本のiPS国際戦略と知財戦略

スライド18

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スライド19

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羽鳥:
iPS細胞の文科省研究拠点として、京都大学、東京大学、慶應義塾大学、理化学研究所の4機関が選ばれています。
スライド18(PDF) を見てください。
慶應義塾大学では、国際競争力に繋がる知財戦略が重要ということで知的資産センターの中に「iPS細胞研究知財戦略チーム」を作りました。
岡野研究室のミーティングには、毎回、当知財戦略チームのメンバーが同席して、研究成果の一番上流のところで重要な知財の発掘を行っています。
これは、岡野先生が、知財戦略に強い決意をお持ちであればこそ可能なことです。
さらには、慶應義塾大学の代々の医学部長や研究科委員長に、特許についてご理解のある方がが多いということもありがたいことだと思っています。

聞き手:
特許の専門家にとって、ライフサイエンス系の言葉はわかりにくいのではないでしょうか。

羽鳥:
iPS知財チームのうち3人は企業などの研究所の出身で、PhDを持っています。
また、ライフ系に強い特許事務所とうまく連携を取ることも重要です。そこにもPhDをもつ弁理士がいます。
米国の特許事務所でもこうした分野の特許に関わる人材の多くはPhDを持っています。

聞き手:
PhDのキャリアモデルとしても、知財は重要ですね。

羽鳥:
また、これからはリスク対策への支援も重要な仕事になっていくと考えています(スライド19(PDF) )。
大学において、外国のリサーチツールやマテリアルを使うときに、知財権侵害のリスクを抱えることも場合によってはあるかもしれませんので、そうした啓発活動も必要です。

聞き手:
研究者への知財教育も重要ですね。

羽鳥:
私も大学や大学院で知財の授業を持っていますが、iPS細胞というトピックを使って、実例ベースで知財の取扱いを話すと、学生の興味も強く理解も進むようです。

聞き手:
ご多忙のところ、お時間をとっていただき、興味深いお話をお聞かせいただき有り難うございました。

(注意:ここで掲載したスライドは、各スライドに記載の機関に帰属するものであり、コピー並びに無断転載は全てについて禁止とさせていただきます。ここでは、内容の理解を助けるために掲載させていただきました。)


インタビュアー:本間 美和子(iPS Trend 監修)、佐藤 勝昭、森本 茂雄(科学技術振興機構)
掲載日:2009年07月14日

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