iPS細胞研究 世界の潮流

5. しのぎを削る先端領域、世界の研究グループ

掲載日:2009年8月10日

2006年8月、京都大学の山中教授が世界で始めてマウスの皮膚細胞からiPS細胞の樹立に成功したと発表したのを契機に、世界中で研究開発競争が繰り広げられています。
今回は世界中の研究者の研究成果をまとめ、iPS細胞がどのように発展してきているのかを見ていきましょう。なお、ここで示している発表月は、各学術誌の発刊月です。

まず、山中教授の代表的な競争相手といえば、米国マサチューセッツ工科大学のRudolf Jeanischらの研究チームです。
2007年6月に、ハーバード大学幹細胞研究所のKonrad Hochedlingerらのグループと同タイミングでマウスの細胞からiPS細胞を樹立したという報告をしています。Jeanischらのグループはそれを契機に、2009年7月現在までにiPS細胞に関する学術論文を13報も報告しています。これは、世界中の研究グループで最も多い報告です。2007年12月にはiPS細胞を用いて貧血マウスの治療を行ったことを報告するなど、その研究内容にも注目が集まっています。

先述のハーバード大学幹細胞研究所のKonrad Hochedlingerらのグループも、2008年5月・6月にそれぞれ膵β細胞、神経細胞からiPS細胞樹立するなど、これまでに6報の報告をしています。薬剤により山中ファクターの発現を誘導してiPS細胞を樹立するなど、先進的な研究も行っています。

また、米国ウィスコンシン大学のJames A Thomson教授の研究チームはヒトES細胞を樹立したことで世界中に知られていますが、2007年12月に山中教授とほぼ同じタイミングでヒトiPS細胞の樹立を報告しました。

米国スクリプス研究所のDingらのグループは、遺伝子をウイルスベクターで導入する方法が主流であったiPS細胞の樹立法において、低分子化合物を用いてより効率的で安全な樹立法を報告しました。さらに、タンパク質を直接細胞に導入することでiPS細胞を導入するなど、安全性の高いiPS細胞の樹立法研究者として注目を集めています。

一方、iPS細胞を用いた治療法の開発のため、ヒト以外のモデル動物によってiPS細胞を樹立するという研究も競争が激化しています。
京都大学の山中教授らが2006年8月にマウス、京都大学の山中教授らとウィスコンシン大学のThomsonらによって2007年11月にヒト、中国科学院のLei Xiaoらが2008年12月にラット、北京大学のDengらが同時期にアカゲザル、中国科学院のPeiらが2009年4月にブタの細胞を用いてiPS細胞を樹立したという報告がなされています。
霊長類のモデルとしてアカゲザル、またヒトと臓器のサイズが似ているブタは再生医療の治療法確立に向けた非常に重要な実験系です。

山中教授も非常に示唆に富んだ研究を行っています。2008年10月にはウイルスを用いずにプラスミドという小型のDNAを用いてiPS細胞を樹立したという報告があります。また、2009年7月に入り、iPS細胞の安全性についてまとめた報告をしています。
同じく京都大学の中辻教授は2008年7月に、iPS細胞バンクについて報告しています。臓器移植の際に重要となる白血球の表面にあるHLAというタンパク質のタイプによってiPS細胞を分類するという考え方を示しています。

以上のように、世界中の研究者がiPS細胞の研究に参入し、しのぎを削っています。
日本の優位性がなくなってしまうのではないか、という議論もありますが、山中教授は競争が激しくなることにより病気で苦しむ患者を救う治療法が少しでも早く確立されることのほうが重要である旨を繰り返されています。安全性が高く、効率的なiPS細胞の樹立法と、それを用いた治療法の確立にむけ、これからも世界中の研究者が実験台に向かうことでしょう。
これからもiPS細胞の研究発表に目を向け、その動向を見守っていきましょう。

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る