iPS細胞研究の展開

第9回 より多くの人々のために -医療用iPS細胞バンク構想-

掲載日:2010年12月2日

iPS細胞は、自分の体細胞から作ることができ、免疫拒絶反応が出る心配がない一方で、治療に使えるようになるまでに時間がかかるという問題があります。
それでは緊急時に対応できないため、あらかじめiPS細胞をストックして必要なときに治療に利用するためのバンク設立の構想が進められています。

医療用iPS細胞バンクの必要性

現状では、iPS細胞を作製し、目的の細胞に分化させ、安全性の確認、純化し、実際の治療に用いられるまでには、数か月~1、2年かかってしまいます。その間、病状を安定に保つことができる病気であればよいのですが、緊急を要する場合には対応できないことになってしまいます。
そこで、あらかじめそれぞれ皆各個人が自己の細胞からiPS細胞を作っておけばよいということになります。しかし、iPS細胞を作製し、保存しておくには多大な費用がかかりますので、現実的ではありません。そこで、医療用のiPS細胞バンク構想が立てられました。

多くの日本人に対応できるiPS細胞バンク

iPS細胞をES細胞と比較すると、自己の細胞を用いることからiPS細胞は免疫拒絶反応を起こす可能性が低い事が挙げられますが、バンクにある細胞は、自己の細胞ではないため、免疫拒絶反応への懸念も出てきます。

赤血球にA、O、B、AB型といった血液型があるように、白血球にもHLAという型があります。移植した際に拒絶反応が起きるか否かは、このHLA型がどの程度似ているかで決まります。
HLAには、A座、B座、C座、D座、DR座などがあり、その組み合わせは数万通りあると言われており、それらをすべて網羅するのは不可能に近いことです。
しかし、京都大学の中辻憲夫教授により、O型の赤血球をすべての血液型の人に輸血できるのと同じように、HLAにも3万人あたり1~7人程度、移植後に拒絶反応が起きにくい型が存在することが明らかにされました。この事から、特別なタイプのHLA型を持つ50人から細胞の提供を受ければ、日本人の約90%をカバーする医療用のiPS細胞バンクを作ることが可能だという試算が出されており、医療応用への実現の可能性が高まっています。

細胞をどこから集めるか

バンクの設立にあたっては、多くの人々からの細胞の提供が必要となりますが、どうやって細胞を集めるかが課題となります。
その1つの方法として、親知らずや乳歯などの廃棄物として扱われていた抜去歯から採取できる歯髄細胞の利用が注目されています。歯髄細胞からのiPS細胞、作製が報告され、バンクへの利用に向けた試みが進められています。

臨床研究と同時に、いざGOサインが出たときに、多くの人々が治療を受けられる体制の整備も着々と進められています。

次回は、iPS細胞研究を取り巻く、倫理的・社会的な課題についてみていきます。

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