iPS細胞研究の展開

第7回 創薬研究・疾患研究への応用3. -新しい創薬につながる道-

掲載日:2010年10月13日

iPS細胞は、創薬の効率化のみならず、これまで治療法が確立されていない病気を治す薬の開発など、創薬に新たな道を拓く可能性も期待されています。今回もアステラス製薬(株)の中島秀典氏のお話を交え、創薬に向けたiPS細胞の利用についてみていきます。

対症療法から予防、根治へ

現在市販されている薬は、すでに発症してしまった病気の改善や、進行を抑えるといった対症療法的なものがほとんどですが、iPS細胞を利用することで、病気の原因を解明することができれば、発症を未然に防いだり、原因を元から治す薬の開発ができるようになると考えられています。
創薬研究におけるiPS細胞利用の意義について中島氏は、「正常な機能を持つに至る各段階の細胞や、病気に至る各段階の細胞、といった、これまでまったく準備することのできなかった細胞が利用できるようになる可能性があること」とし、「それにより、新しい創薬につながる可能性がある」と期待を述べています。

図:疾患の再現研究による新しい創薬
疾患の再現研究による新しい創薬

先に触れた疾患モデル細胞を用いれば、病気に至るまでの過程を再現できる可能性があり、各段階における治療薬の開発が期待できます。現在は、主にこれまで治療法がなかった難病のモデル細胞の作製・研究が進められていますが、様々な病気に至る過程を再現し、そのしくみを調べることができれば、根本の原因を絶やす薬、発症を防ぐ薬、病状に合わせた薬が開発できる可能性があります。
そのためには、中島氏は、「正常な状態の細胞と、病気の細胞の標準化」さらに「分化して正常な組織や臓器になっていく各段階での標準化」が課題であるとしています。

iPS細胞を利用したテーラーメイド医療

個々人の体の中で機能している細胞の状態は、一様ではなく、また、同じ病気でも、原因やあらわれる症状は個人によって様々であり、ある患者さんに効いた薬が別の患者さんにも効くとは限りません。そこで、個々人にあった薬の投与法など、個別化治療法(テーラーメイド医療)の開発が目指されています。
iPS細胞を使ってのテーラーメイド医療としては、患者さん本人の体細胞からiPS細胞を作成し、薬の効果を事前に調べることで、個々人の体質に合い、薬効が高く、副作用などのリスクが少ない薬、を選ぶことができるようになると期待されます。究極的には、個々人に最適な薬の開発も考えられますが、現実的には個々人に特化した創薬は効率的ではありません。
そのため、それぞれの疾患について、様々なタイプの疾患モデル細胞のバンクを準備し、それぞれの病態に関するデータを集積することで、いくつかのタイプに分けることができると考えられます。それらのタイプ別に効果のある薬や治療法を開発すれば、個別化に限りなく近い治療を行うことができるようになります。

病気のタイプ分けに加え、中島氏は、「すべての人にあてはまるだろう理想(正常)の状態の細胞が設定できれば、病気になった細胞を理想の状態にすることで、病気を治すことができたと言えます。これが実現可能なテーラーメイド医療(創薬)ではないか」と述べています。

これまでも誰にでも効くことを前提に創薬は行われていますが、iPS細胞を利用することで、より細分化・個別化され、多くの人々に適合する創薬が可能となるかもしれません。

次回は、iPS細胞を使った再生医療の実現へ向けた取り組みについて、慶應義塾大学の八代嘉美先生のお話を交えてみていきます。

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