iPS細胞研究の展開

第6回 創薬研究・疾患研究への応用2.
-病気のしくみの解明を目指す取り組み-

掲載日:2010年9月15日

疾患モデルが無い稀少疾患や治療法が開発されていない難病がいくつもあります。iPS細胞の応用によって、これらの難病の原因解明や、治療法の開発に可能性がみえてきました。疾患研究も創薬研究と並び、早期の実現が期待されています。今回は、iPS細胞を用いた疾患研究について紹介します。

病気のしくみの解明を目指して―疾患特異的iPS細胞の作製―

これまでも、病気を発症した患者さんの組織や血液を用いた研究、遺伝子を改変してヒトの病態を持たせたマウス等動物(疾患モデル動物)を用いた研究が行われています。しかし、すでに病気を発症した患者さんの組織等を調べても、病気の原因や病気に至るまでの過程は必ずしも解明されるとは限りません。また、動物とヒトの種差により、治療法の開発が困難な病気が数々あります。

そこで、これまで治療法のなかった難病や、症例数が少ない稀少疾患の研究について、患者さんご自身の細胞に由来するiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)を用いる取り組みが進められています。

iPS細胞は一度未分化の状態に戻った細胞ですので、病気の原因と考えられる組織の細胞に分化誘導させることで、病気に至る道をもう一度辿らせることが可能となるのです。

発症の過程がわかれば、各段階における治療法・治療薬の開発が期待できます。これを実現するために、疾患特異的iPS細胞を病気の元となる細胞に分化誘導する「ヒト疾患モデル細胞を作製する研究」が進められています。
現在、これまで治療法がなかった難病であるパーキンソン病、ハンチントン病、ダウン症、筋萎縮症、I型糖尿病などの患者さん体細胞からiPS細胞の樹立が報告されており、病気の原因となる例えば神経細胞などの細胞に分化させ、病気のメカニズムの解明と治療法の開発へ向けた研究も進められています。
あらゆる病気のしくみを明らかにすることができれば、検査法、治療法、そして予防法が劇的に進歩する可能性が期待されます。

図:iPS細胞を用いた疾患研究
iPS細胞を用いた疾患研究

疾患研究用バンクの設立

同じような症状を示しても、患者さん個々人では、原因や発症のしくみが異なる可能性があります。そのため、より多くの患者さんから組織等の提供を受け、比較研究をする必要があります。現在、疾患研究用の組織試料を収集し、研究へ利用するためのバンクの設立が進められています。
文部科学省では、研究用iPS細胞バンクの設立を2012年の予定で進めており、患者さん由来のiPS細胞も取り扱うとしています。また、厚生労働省は、難病患者の細胞やDNAなどの生体試料を保管する「難病研究資源バンク」を設立し、難病の原因解明や治療法の開発を目指して、研究者や製薬企業へ生体資料の提供を始める計画を発表しました。これらのバンク事業では、提供される細胞等からiPS細胞を作製し研究者への配布も進められます。
iPS細胞の作製により、限られた量の組織等を、増やすことができるようになるため、病気の発症過程を再現できる可能性のほか、治療薬の開発など、多くの研究者への提供を可能とし、将来の研究利用を広げることができるというメリットもあります。

次回は、iPS細胞を用いた疾患研究が進むことにより可能性が広がる、新しい創薬のシステムについてみていきます。

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