iPS細胞研究の展開

第1回 iPS細胞の今

掲載日:2010年6月30日

ヒトiPS細胞樹立の発表から約3年、発表により起こった波は世界中の研究者を巻き込みその勢いをさらに増し、実用化へ向け世界各地で競争が繰り広げられています。この日本発の成果をさらに発展させるために、日本では異例の速さで研究体制、支援体制がしかれました。
世界でいち早くiPS細胞を樹立した山中伸弥教授は、その成果により、アメリカのノーベル賞ともいわれるアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を受賞しました。研究成果の大きさと世界に与えたインパクトを物語っています。
さらに、新聞・雑誌等でのiPS細胞関連研究の頻繁な報道からは、研究者のみならず、多くの人々の関心が伺え、実用化への期待は高まるばかりです。

iPS細胞は、難病の原因究明、治療法の開発を目指した疾患研究、医薬品の安全性試験などへの利用、細胞製剤の開発などの創薬研究、神経や血液、組織や臓器の機能の修復や再生を目指した再生医療への応用が期待され、研究が進められています。
多くの人々の期待を受け、日々研究が進められていますが、実用化へ向けて解決しなければならない課題が数々あり、また、研究が進むにつれ新たな課題も出てきています。

実用化へ向けて懸念されていた安全性については、山中4因子(Oct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)の中のc-Mycは、もともとがん遺伝子として知られており、がん化のリスクを抑えるために今ではc-mycを使わない作製方法が多く報告されています。
また、遺伝子導入の際に用いられるベクターについても、当初用いられたレトロウイルスではがん化する可能性が高いため、タンパク質や化学物質などを用いる手法も考えられています。
その一方で、c-Mycを使わない場合や、ベクターにウイルスを使わない場合は、作製効率が大幅に下がってしまうという問題や、できた細胞が不完全だという問題も出てきています。
世界各地でより安全なiPS細胞を目指した様々な作製方法が報告されていますが、どの方法が最適なのか、についてはまだ議論の余地が多く残されています。

最適な作製方法を定める(標準化)ためには、iPS細胞がなぜできるのか(初期化メカニズムの解明)、作ったiPS細胞がよいものかどうかを評価する方法が確立されなければなりません。
作製法、評価法とあわせて、作製効率の向上や、作製後の培養方法、保存方法の確立は、その先の疾患研究、創薬、再生医療研究といった応用研究の促進のために不可欠な課題となっており、早期の解決が求められています。

iPS細胞の実用化へ向けた研究(課題)

実用化へ向けての課題、道筋は、文部科学省が策定したiPS細胞研究ロードマップ(研究開発トピックス参照)で4つの目標((1)初期化メカニズムの解明、(2)標準iPS細胞の作製と供給、(3)疾患研究・創薬のための患者由来のiPS細胞の作製・評価、バンクの構築、(4)再生医療)として掲げられています。
この連載では、これら4つの目標の達成へ向けた研究を中心に、iPS細胞研究を取り巻く現状と課題、これまでの成果を紹介していきます。

数々の課題はありますが、その解決は時間の問題だとの見方もあります。
マウスiPS細胞樹立の報告から、ヒトiPS細胞樹立の報告までの期間は、わずか約1年。ES細胞の場合は、マウスのES細胞発見から、ヒトのES細胞の報告までは17年を要した(iPS細胞物語 第5回参照)ことからみても、iPS細胞研究の進展のスピードが伺えます。
ハワイに古くから伝わる「ホ・オポノポノ」という言い伝えがあります。これは、4つの言葉を唱えることによって過去の行いを浄化し、現在の幸福が得られるというものです。「4つ」「過去の浄化」にはiPS細胞と不思議なつながりが感じられます。山中教授をはじめ現在中心となって研究を進めている研究者たちのいち早く病気で苦しむ患者さんを助けたいという思いが、「ホ・オポノポノ」のように人々に福音をもたらすことを期待しつつ、iPS研究の今を紹介します。

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