イベント報告

第8回In vivo実験医学シンポジウム
消化器疾患における動物モデルを用いた病態解明と治療への応用

2014年11月13日 学士会館

掲載日:2014年12月25日
(独)科学技術振興機構 再生医療研究推進部

公益財団法人実験動物中央研究所(実中研)が主催する『第8回In vivo実験医学シンポジウム 消化器疾患における動物モデルを用いた病態解明と治療への応用』が11月13日、東京都千代田区にある学士会館で行われました。わたくしども科学技術振興機構(JST)の再生医療実現拠点ネットワークプログラムで支援している先生方も講演されました。

“In vivo”すなわち動物の“生体内”を利用して行う実験は、医学の発展には欠かせません。安全性試験などでは、動物を使わないで培養細胞を用いたin vitro実験、iPS細胞由来の分化誘導細胞を用いたin vitro実験法の開発も行われていますが、ヒト疾患の治療/再生などに関連する高度な実験では、できるだけヒトの環境を再現した状態を使わないとできないことが多々あります。近年、新たな実験動物の作成には遺伝子組み換え技術を用いることで特定の性質を際立たせたり無くしたりして、ヒトの正常な代謝や病態を再現することが盛んに行われています。実中研では、ヒトの正常な代謝や疾患を再現する動物モデル開発のパイオニアとして、多くのヒト型実験動物を大学などの研究機関に供給しています。

今回のシンポジウムでは、消化管、肝臓疾患について動物モデルを使った最先端研究7件が紹介されました。オーガナイザーの渡辺守・東京医科歯科大学教授は「日本でも消化器疾患の研究がここまで進んでいることを知ってほしい」と挨拶しました。

渡辺守・東京医科歯科大学教授

渡辺守・東京医科歯科大学教授
提供:(公財)実験動物中央研究所

消化管分野では、中村哲也・東京医科歯科大学教授が『培養細胞移植マウスモデルを用いる腸管上皮幹細胞解析』について発表しました。中村教授は、渡辺教授のリーダーシップのもと実施しているJST再生医療実現拠点ネットワークプログラム・拠点B(培養腸上皮幹細胞を用いた炎症性腸疾患に対する粘膜再生治療の開発拠点)に参画しています。難治性腸疾患の革新的な治療を目指し、中村教授らは、正常な成体マウスから大腸上皮細胞を採取して体外培養する技術を確立しています。この方法で大腸上皮細胞を無血清培地で、しかも三次元的に長期培養が可能になりました。大腸上皮の幹細胞であるLgr5も増やすことができます。この手法は、慶應義塾大学の佐藤俊朗特任准教授(当時:オランダ・Hubrecht研究所博士研究員)が2009年に発表した研究成果(マウス小腸での腸管上皮幹細胞培養に成功)を改良したものです。体外で増やした大腸上皮細胞が、再び生体内に戻されたときに大腸上皮組織として再構築するのかどうかを検討しました。実験的に大腸炎マウスを作成した後、大腸上皮幹細胞から増やした細胞を移植する方法を使用しています。その結果、炎症部に細胞生着が認められ、長期的に幹細胞としての能力を保持できることがわかりました。この移植された幹細胞は炎症で欠損した上皮を再生させながら大腸上皮組織を構築します。正常な大腸上皮は『クリプト』と呼ばれる構造に幹細胞が存在し、大腸上皮が傷害を受けるとその幹細胞が再生に関与します。中村教授らが確立した培養細胞は球形の構造体オルガノイドの形で成長し、クリプト構造を再現することができます。この研究は、ヒト難治性腸疾患における培養上皮幹細胞を用いた再生医療技術の基礎として極めて重要な意義を有しています。

続く講演では、佐藤俊朗・慶應義塾大学特任准教授が超免疫不全マウス(NOGマウス)等を用いた『ヒト大腸がんミニ組織技術による新しい生体内がん再構築モデルの確立』について、妹尾浩・京都大学講師は『消化器癌モデルマウスにおける癌幹細胞マーカーの意義』と題して、遺伝子組み換えマウスを用いて癌幹細胞マーカーを発見した研究について発表しました。

肝臓分野では、柿沼晴・東京医科歯科大学講師が『ノックアウトマウスを用いた肝前駆細胞の分化制御機構の解析』、末水洋志・実験動物中央研究所研究副部門長が『バイオメディカルリサーチに有用なヒト化肝臓マウスの開発』と題して講演し、NOGマウスに、ヒト肝細胞を移植するとマウスの肝臓が90%以上ヒトの肝細胞に置き換わることを明らかにしました。また、今村道雄・広島大学病院診療講師が『ヒト肝細胞キメラマウスを用いたウイルス性肝炎の病態解明と治療法開発』について講演しました。

JST再生医療実現拠点ネットワークプログラム・拠点B(iPS細胞を用いた代謝性臓器の創出技術開発拠点)を実施している谷口英樹・横浜市立大学教授が『iPS細胞を用いたヒト肝臓創出技術の開発』について紹介しました。現在、絶対的なドナー臓器の不足が生じており、移植医療の代替としてヒト臓器の人為的構成を実現する革新的な技術が求められています。従来法では肝臓は内胚葉細胞から三次元器官原基(臓器の芽)を形成するようにしますが、この器官原基作製は効率が非常に悪いことが問題でした。谷口教授らは、正常の肝臓発生プロセスを模倣し、ヒトiPS細胞から肝臓原基を創出する三次元培養技術を確立しました。現在、前臨床研究として、ヒトiPS細胞由来の肝臓原基の大量調整・品質評価(GMP準拠)・移植操作技術の開発を推進しています。このように精製され肝組織をヒト肝臓細胞が生着するTK-NOGマウスを利用して、移植した肝臓原基が生体内で肝細胞として機能するかどうかを確かめています。細胞から臓器を作成し、新たな早期移植の治療概念の実証を目標にしています。

谷口英樹・横浜市立大学教授

谷口英樹・横浜市立大学教授
提供:(公財)実験動物中央研究所

再生医療を実際に臨床応用する前段階では、様々な動物モデルが活用されています。今後も、それを行う上で、動物実験の3R(代替、削減、改善)を厳守しつつ、研究を進めねばなりません。

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