iPS細胞物語 season2

第12回 特許の動向や創薬ツール、再生医療などに向けたiPS細胞利用のまとめと今後

掲載日:2012年8月25日

世界中の研究者たちが、iPS細胞の大きな可能性に惹かれ、研究を進めてきました。そしてここまで見てきたように、わずか数年で医療への応用の可能性を次々に示していったのです。また同時に、それらの研究成果に下支えされながら、実用化に向けた産業界の動きもすでに始まっています。
医療技術を実用化して世の中に普及させる際、「産業化・ビジネス化」は非常に重要です。営利企業がその技術から利益を得られるしくみを作ることで、投資を促し、規模を拡大し、広く展開していくことができるのです。iPS細胞についても、京都大学が保有する特許を元に、世界各国の企業が事業展開を始めています。

会社・団体名 ライセンス契約日 事業
リプロセル株式会社 日本 2009年3月31日 iPS細胞由来の各種組織細胞の作成・販売、薬効・安全性毒性試験などの受託
タカラバイオ株式会社 日本 2009年4月7日 iPS細胞作製キットの製造・販売および研究受託
ディナベック株式会社 日本 2009年10月8日 iPS細胞作製キットの製造・販売
Cellular Dynamics International, Inc. アメリカ 2010年5月7日 iPS細胞由来の各種組織細胞の作成・販売
Axiogenesis AG ドイツ 2010年8月3日 iPS細胞由来の心筋細胞の作成・販売
Cellectis フランス 2010年10月19日 再生医療を目的としたiPS細胞の作成・販売
iPierian, Inc. アメリカ 2011年1月27日 iPS細胞およびiPS細胞由来の分化細胞を使用した、ヒト用治療薬の研究開発
Univercell-Biosolutions フランス 2011年2月25日 iPS細胞由来の心筋、血管内皮細胞の作成・販売
American Type Culture Collection(NPO) アメリカ 2011年6月14日 ヒトiPS細胞の貯蔵と配布
VECTALYS S.A.S フランス 2012年1月11日 iPS細胞作製用ウイルスベクターの開発・販売
Sigma Aldrich Co. LLC. アメリカ 2012年2月21日 iPS細胞およびiPS細胞由来の分化細胞およびそれらの作製キットの販売、薬効・安全性毒性試験などの受託

中でもアメリカのiPierian社は、もともとiPS細胞作製に関わる技術特許を持っていたバイオベンチャーです。アメリカやイギリスを始めとした各国で特許申請を行なっており、京都大学の特許との係争が心配されていました。しかし2011年1月、その特許を京都大学に譲渡し、同時に使用のためのライセンス契約を結んだのです。特許係争よりも、研究開発にこそ時間をかけることが、人類の利益に通じるのだと考えた結果かもしれませんね。

iPS細胞の医療応用は大きく分けて、疾患メカニズムの解明、薬効・毒性試験、そして再生医療という3つの方向性があります。
アルツハイマー病やポンペ病、CAPSのような、未だ詳細なメカニズムがわからず、有効な治療法もない疾患では、患者から樹立したiPS細胞を用いたメカニズム解明がこれから進んでいくでしょう。そして病態を示す細胞を用いることで、開発途中の薬がどのように作用するのかを詳細に解析することができるはずです。
再生医療については、まずはiPS細胞から分化させた細胞を注射などによって移植することか始まるでしょう。働きが低下してしまった組織に正常な細胞を投与することで、その機能を取り戻すのです。この治療の世界初の事例として、平成25年には理化学研究所の再生科学総合研究センターが、目の中にある網膜の働きが低下してしまう「加齢黄斑変性症」の治療を目指す臨床研究を実施する計画です。またいずれiPS細胞を元にして立体的な臓器を作る技術が発展すれば、現在の臓器移植の代わりになるかもしれません。自分自身の細胞から作った臓器を移植することで、他人の臓器を使うのに比べて、免疫拒絶の可能性が低くなるのです。

2007年、ヒトiPS細胞の作製を初めて発表した山中教授の論文には、次のような記述があります。

「この研究成果は、患者から、病態を示す多能性細胞を作れる可能性を示すものだ。ヒトiPS細胞は疾患メカニズム、創薬、そして毒性試験に役立つだろう。そして安全性の問題が克服されれば、再生医療にも利用できるはずだ。」

今、世界の研究はまさにこの予測の方向性に向けて進んでいます。iPS細胞を利用することで、様々な疾患の治療法開発が可能になるでしょう。今後、この研究がどこまで発展するか、期待しながらニュースを追いかけてみてください。

制作 : 株式会社リバネス

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