iPS細胞物語 season2

第10回 iPS細胞による創薬研究

掲載日:2013年2月12日

iPS細胞が様々な細胞に分化させられることが明らかになるなかで、iPS細胞を使った創薬支援に関する研究も新たな局面を迎えています。

現在、新しい薬が医療現場で用いられるようになるまでには、まず薬の候補になる物質を探し出し、それに続くたくさんのステップの中で有効性や安全性を十分に確かめるという過程を経ています。ステップの説明に関しては、iPS細胞物語の第10話でも紹介しているので、ご覧ください。副作用のリスクを下げるためにiPS細胞から心筋細胞を作り出して試験を行う取り組みが始まっていることについても同様にiPS細胞物語の第10話で紹介していますが、それ以降に新しい展開が出てきています。

例えば、2011年に京都大学の井上治久准教授らのグループから、神経細胞へ分化誘導してアルツハイマー病治療薬のスクリーニングをしたという論文が(※1)が発表されました。論文ではアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβ(ベータ)というタンパク質の蓄積を検出できる実験系を構築しており、これを利用したアルツハイマー病の新薬の探索が期待されています。

「iPS細胞を使った創薬スクリーニング」

このように、iPS細胞を創薬研究に用いる可能性がみられるようになっている中、実際にいくつかの製薬企業においてiPS細胞を使った創薬研究に取り組むことが発表されています。例えばエーザイ株式会社は、2010年3月にiPS細胞を使って創薬スクリーニングを行うと発表しています。さらに2011年9月には慶應義塾大学との共同研究でアルツハイマー病患者の皮膚からiPS細胞を作製することに成功したと報告されました。また、大日本住友製薬株式会社は京都大学iPS 細胞研究所との2011年から5年間の共同研究を発表しています。それは、難治性希少疾患の1つに関して、患者からiPS 細胞を作成し病気のメカニズムの解明を行うとともに、治療薬の探索を行うというものです。

このように研究が活発化していくことが予測されることを受けて、iPS細胞に関連したビジネスも始まっています。ES細胞やiPS細胞の研究支援を行ってきた株式会社リプロセルでは、2009年から世界に先駆けて、創薬支援ツールとしてのiPS細胞由来の肝細胞、心筋細胞、神経細胞の販売を開始しています。
このようにiPS細胞を利用した創薬の研究・開発は、学術界だけでなく企業も巻き込んだ形で非常に活発化してきています。再生医療の研究が行われるのと並行して、iPS細胞を用いることでこれまで開発が困難だった希少・難治性疾患に対する薬などが市場に登場することが期待されます。

※1
Naoki Yahata, Masashi Asai, Shiho Kitaoka, Kazutoshi Takahashi, Isao Asaka, Hiroyuki Hioki, Takeshi Kaneko, Kei Maruyama, Takaomi C. Saido, Tatsutoshi Nakahata, Takashi Asada, Shinya Yamanaka, Nobuhisa Iwata, Haruhisa Inoue, Anti-Aβ Drug Screening Platform Using Human iPS Cell- Derived Neurons for the Treatment of Alzheimer's Disease, PLoS one 6 (9): e25788

制作 : 株式会社リバネス

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