iPS細胞物語 season2

第7回 iPS細胞登場後に改訂された研究指針

掲載日:2012年12月7日

iPS細胞は体の中にある様々な細胞に分化する能力を持つ「幹細胞」の1つです。幹細胞の利用に関する国の指針(法律とは異なりますが、このルールに従って物事を進めましょうという方針)はiPS細胞の登場以前から存在していましたが、iPS細胞の登場で、その応用を促進する意味で、改正がなされています。今回はそのことについて見てみまましょう。

幹細胞を用いた医療は、目的の細胞に分化させることにより病気や怪我などで失われた機能や臓器の再生をもたらす可能性を持っています。しかし、幹細胞をヒトの体の中に入れるわけですから、実際にヒトに対して使用するためには、薬剤と同様の安全性に対する規準を設ける必要性があり、またこれまでにない新しい治療なので、科学的な根拠に基づいた独自の使用規準の整備などが重要になってきます。
実は、iPS細胞が登場するよりも前の2006年、主に体性幹細胞を対象とした「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」が厚生労働省より出されています。体性幹細胞とは、体の中に存在している幹細胞で、ある特定の細胞(神経や血液、毛髪など)へと分化する能力を持つ細胞のことです。この指針の中では、ヒト幹細胞を用いた臨床研究が行われるときに守るべき事柄、例えば細胞を採取する前に必ず患者に対して説明を行って同意を得ること(インフォームドコンセント)や、臨床研究の適応範囲や研究計画書の内容などが定められています。

この指針が出された後、2007年のヒトiPS細胞作製の報告や、基礎研究での使用に限られていたヒトES細胞の技術開発の進展があり、幹細胞による治療の可能性が一気に拡大されました。そのため、厚生労働省では全面的な見直しが行われ、2010年に改訂版が出されたのです(※1)。
改訂により、体性幹細胞だけではなくヒトiPS細胞とヒトES細胞にまで適応が拡大されました。その変更点は主に以下の2点です。1つは、現時点ではiPS細胞が腫瘍化してしまう可能性があるため、それを否定するのに十分な動物実験の結果を求めることが明記されました。2つ目は、治療に関わる研究者だけでなく基礎系の研究者も含めた研究体制を作ることが求められている点です。これには基礎研究の段階から被験者となりうる患者達と意見交換をしたり、研究成果などの情報を公開したりすることで、患者や国民の理解を得ながら新しい治療の開発を行っていくことへの配慮があります。

iPS細胞を使った基礎研究から臨床研究へ、そのための法的な整備を現状に即して整えていくことで、実際の医療への応用がまた一歩近づいていくのです。

※1
厚生労働省「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」平成18年7月3日 (平成22年11月1日全部改正)

制作 : 株式会社リバネス

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