iPS細胞物語 season2

第2回 iPS細胞の生殖細胞研究への応用

掲載日:2012年7月25日

iPS細胞の誕生が山中伸弥教授により世界へ向けて報告されてから、iPS細胞から様々な細胞を作り出すことに成功したという報告が世界中でなされています。造血幹細胞(赤血球や白血球などの血液に含まれている細胞のもとになる細胞)、心筋細胞(心臓を形成している細胞)、神経細胞、角膜細胞、インスリン産生細胞(膵臓にあるインスリンを作る細胞)など、体を構成する様々な細胞に分化させる技術を確立することは、未来の再生医療において非常に重要です。
さらに、iPS細胞から生存能力のあるマウスを作ったという報告がこれまで続々となされています。これはiPS細胞が全ての組織や臓器を作り出す能力を持つことを示しており、ますます再生医療などへの応用に向けて期待が高まっています。

「iPS細胞の生殖細胞研究への応用」の図

2011年8月、京都大学の斎藤通紀教授らのグループが、精子や卵子のもとになる「始原生殖細胞」を世界で初めてiPS細胞から作り出し、最終的に正常なマウス個体の産出まで成功したというニュースが報告されました(※1)。これまでiPS細胞からマウス個体を作り出すには、受精後の初期胚にiPS細胞を注入する方法が用いられていました。生命をつなげるために欠かせない生殖細胞(精子と卵子)は、他の細胞には見られない複雑な過程を経て作られます。そのため、これまで生殖細胞を作り出すのは非常に困難であると考えられていたのです。斎藤教授らの研究では、iPS細胞を特殊な条件下で培養し始原生殖細胞へと分化させ、生殖能力のない雄マウスの精巣に移植しました。すると、約10週間で精子が作られたといいます。さらにこの精子を取り出し、卵子と体外受精させ仮親のマウスに移植したところ、正常なマウスを誕生させることができました。この研究により精子を作製する技術が確立できたので、今後は卵子作製にも取り組むとのことです。

ヒトの生殖細胞を作り出すことができるようになると、これらを受精させることで人工的にヒトを作ることができてしまう可能性があることから、日本ではヒトの生殖細胞を作る研究は2010年5月まで法律で禁止されていました。しかし、生殖細胞を大量に得ることができれば不妊症の原因解明や治療法の開発研究に利用できることから、現在は受精させないことなどを条件に解禁されています(※2)。

iPS細胞を使った研究は、再生医療への応用だけでなく、なかなか得られない細胞を大量に作り出すことで、これまで困難だった生殖細胞研究などの研究領域にも画期的な材料をもたらすことができるのです。

※1
Reconstitution of the mouse germ cell specification pathway in culture by pluripotent stem cells. Hayashi K, Ohta H, Kurimoto K, Aramaki S, Saitou M. Cell. 2011 Aug 19;146(4):519-32. Epub 2011 Aug 4.

※2
文部科学省告示代八十八号「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針」

制作 : 株式会社リバネス

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