iPS細胞物語 season2

第1回 iPS細胞研究の進展

掲載日:2012年7月2日

京都大学の山中伸弥教授によって、2006年8月にマウス体細胞から、そして2007年11月にヒト体細胞からの作製が発表されたiPS細胞。その存在は、生命科学、再生医療研究の進展の方向性に大きな影響を与えました。より安全なiPS細胞作製方法の開発、iPS細胞を使った再生医療、そして疾患メカニズムの解明や治療法の開発など、国内外の研究者がしのぎを削りながら、これまで毎月のように新しい成果を発表してきました。
本シリーズ「iPS細胞物語season2」では、2009年8月以降のiPS細胞研究の発展について、それを取り巻く社会情勢の変化と共に紹介していきます。それでは、まずは2012年1月までに報告された新しい発見と成果を振り返ってみましょう。論文発表から見ていくとあまりに数が多すぎるため、ここでは国内の主要メディアで取り上げられたものをリストにしました(論文発表とはタイミングがずれているものもあります)。また、内容について区別しやすいように、区分を設けました。

区分 内容
2009年 8月 作製法 がん抑制遺伝子"p53"の働きを抑えることでiPS細胞の作製効率が飛躍的に向上
作製法 低酸素培養でiPS細胞作製効率が向上
9月 その他 全身の細胞がiPS細胞由来のマウス誕生
10月 作製法 化学物質投与でiPS細胞の培養期間を1/2に短縮、効率も200倍に向上
11月 作製法 羊膜から効率よくiPS細胞を作製することに成功
選別方法 iPS細胞から将来心筋に分化する細胞を選別する方法を発見
特許 iPS細胞から種々の体細胞を作る京都大学の技術に国内特許認可
12月 作製法 同じヒトのフィーダー細胞上でiPS細胞を培養することに成功
患者からのiPS細胞作製 筋ジストロフィー患者から異常遺伝子を修復したiPS細胞を作製
2010年 1月 iPS以外の組織細胞樹立法 iPS細胞を経由せずにマウス尾から神経細胞を直接作製することに成功
3月 組織細胞への分化 iPS細胞から腸を作ることに成功
4月 組織細胞への分化 iPS細胞から高純度な肝臓組織を作り出す方法を開発
7月 臨床応用 iPS細胞の移植で脊髄損傷マウスの運動機能を回復
作製法 がん遺伝子"c-Myc"を使わないiPS細胞作製方法を開発
8月 作製法 iPS細胞培養を妨げる細胞死のメカニズムを解明
9月 作製法 親知らずからiPS細胞を樹立
10月 作製法 mRNAを用いてiPS細胞の作製に成功
患者からのiPS細胞作製 遺伝性肝臓代謝疾患の患者からiPS細胞を樹立、病気の特徴を再現
患者からのiPS細胞作製 CAPS病患者からiPS細胞を樹立、病気の特徴を再現
11月 組織細胞への分化 iPS細胞から血小板を作製
iPS以外の組織細胞樹立法 iPS細胞を経ずにヒト線維芽細胞から造血幹細胞を作製
12月 保存方法 iPS細胞の凍結保存法を開発
臨床応用 ヒトiPS細胞移植で脊髄損傷のサルが回復
2011年 1月 組織細胞への分化 iPS細胞の大量増殖と肝細胞への分化誘導に成功
患者からのiPS細胞作製 QT延長症候群患者からiPS細胞を作製、心筋細胞への分化に成功
組織細胞への分化 ヒトiPS細胞から色素細胞の誘導に成功
iPS以外の組織細胞樹立法 胎児の線維芽細胞からiPSを経由せずに心筋細胞を作製することに成功
2月 特許 アメリカ医療ベンチャーのiPierian社から京大へiPS細胞特許を譲渡
組織細胞への分化 iPS細胞からインスリン分泌組織を分化
組織細胞への分化 iPS細胞から骨や筋肉の元になる「間葉系幹細胞」を効率よく作る方法を開発
3月 作製法 ウマのiPS細胞作製に成功
組織細胞への分化 iPS細胞から造血系幹細胞に近い性質の細胞を作製
4月 作製法 プラスミドを用いて効率よくiPS細胞を作ることに成功
作製法 歯の細胞から日本人の2割に拒絶反応無く移植可能なiPS細胞を樹立
iPS以外の組織細胞樹立法 マウス皮膚からiPS細胞を経ずに神経幹細胞を作製
5月 作製法 3種類のmiRNAを用いてiPS細胞作製に成功
6月 作製法 Glis1を用いてがん化のリスクを低く効率の良いiPS細胞作製に成功
7月 iPS以外の組織細胞樹立法 マウス皮膚からiPS細胞を経ずに肝細胞を作製
特許 京都大学、iPS作製技術の欧州特許を取得
8月 組織細胞への分化 iPS細胞から作製した精子でマウス誕生
特許 京都大学のiPS作製技術に関する米国特許が成立
9月 患者からのiPS細胞作製 アルツハイマー病患者の皮膚細胞からiPS細胞を作製
10月 臨床応用 先天性の肝臓疾患患者から作製したiPS細胞の遺伝子修復を行い、肝疾患モデルマウスに移植して治療に成功
11月 臨床応用 101歳のヒトからiPS細胞を作製、細胞の若返りを確認
特許 京都大学、米国で2件目のiPS細胞特許を取得
12月 体制構築 京都大学で「iPS細胞外来(iPS細胞臨床開発部)」発足
組織細胞への分化 iPS細胞から血小板の大量作製に成功
ビジネス iPS細胞から作った肝細胞が製品化
体制構築 山中伸弥教授がiPS細胞バンク構想を発表
作製法 ヒトの脂肪細胞から10日間でiPS細胞を作製する技術を開発
2012年 1月 患者からのiPS細胞作製 難治性てんかん患者からiPS細胞を樹立
組織細胞への分化 iPS細胞から褐色脂肪細胞の分化に成功
患者からのiPS細胞作製 進行性骨化性線維異形成症患者の細胞から作ったiPS細胞で病気の特徴の再現に成功
臨床応用 ヒトiPS細胞をパーキンソン病のサルの脳に移植、生着を確認
患者からのiPS細胞作製 アルツハイマー病患者から作製したiPS細胞で病気の特徴を確認

いかがでしょうか。ニュースになったものでもこれだけの数になります。国内でニュースになっていない研究も含めて考えてみると、とてつもないスピードで研究が進められているのが実感できます。そして、こうして並べてみると、2009年はiPS細胞の作製方法がほとんどだったのが、iPS細胞から体の組織で働いている様々な細胞を作れるようになったこと、また様々な難治性疾患の患者からiPS細胞が作られてきていること、さらに臨床応用のための研究成果が出てきているのがわかります。同時に、各国での特許成立やiPS細胞バンクなど、実用化へ向けた取り組みが進められているのです。

今回の「iPS細胞物語season2」では、全12回を通じて、科学研究の進展に加え、研究指針やビジネスの動向についても紹介していきます。今後の医療技術を大きく変える可能性を持ったiPS細胞が、現在どのようなステージに立っているのかを俯瞰する一助になればと思います。

制作 : 株式会社リバネス

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