iPS細胞物語

第13回 iPS細胞が切り拓く未来-3 再生医療と生命倫理

掲載日:2009年8月4日

1953年にワトソンとクリックがDNAは2重らせん構造をしていることを発見し、分子レベルで生命の仕組みを解き明かす分子生物学が誕生しました。その後DNAの働きを調べるためにDNAを取り出し、組換える技術が発達しました。2008年にオワンクラゲのGFP(緑色蛍光タンパク質)の発見に対しノーベル賞が与えられましたが、GFPの遺伝子を他の生物に組換えることで、ガンなどの疾患治療研究をはじめとする生物学研究が飛躍的に進歩したことが評価された結果でした。
一方、遺伝子組換え技術は生命をある程度人間が好きなようにデザイン出来る可能性を秘めていると考えられ、倫理的問題の議論も引き起こしています。

生命をめぐる倫理的問題はそれ以外の分野でも議論が活発になされています。
例えば安楽死や脳死の問題、ガン告知や末期医療の問題。そして先日国会でも審議されて注目が集まった臓器移植も非常に繊細な問題です。脳死者の臓器を移植すること、ヒトの臓器をブタなどの動物に作らせる技術など、移植を受ける患者さんの立場に立てば非常に有用な打ち手になりますが、その倫理的問題は未だ明確に解決出来ていないのが現状です。

再生医療の研究でも倫理問題の議論があります。
これまで述べてきたように、ES細胞はそのまま成長すれば胎児となる可能性をもつ胚を壊して作製しますので、アメリカのブッシュ前大統領のように宗教上の問題から研究をサポートしないという判断も起こります。(第5回 iPS細胞誕生の背景-4 ES細胞とその問題点参照)

画像:再生医療と生命倫理

一方iPS細胞はES細胞が抱えている上記のような問題は回避できますが、iPS細胞を精子や卵子に分化させる研究や、それらを用いたクローン胚の作製などの研究も原理的には可能です。iPS細胞はES細胞に比べて容易に作製することが出来るために監視が困難となり、非倫理的な研究が人知れず進んでしまう恐れも考えられます。

時として技術は、我々の想像を超えたインパクトをもたらします。
16世紀に発明され、17世紀に改良された蒸気機関は、繊維産業、鉄鋼業の動力源として産業革命をもたらす一因となりました。一方で急速な環境破壊も引き起こし、住環境の悪化などの新たな社会課題も生まれました。このように新たな技術が普及すると、想定以上の問題が発生することは私たちの歴史が教えています。
私たちはiPS細胞を含む再生医療技術を出来る限り正しく捉え、未来のポジティブな可能性、そしてネガティブな可能性を考えて、技術が正しく発展するように見守っていく必要があるのではないでしょうか。

次回はオールジャパンのiPS細胞研究についてお伝えします。

制作 : 株式会社リバネス

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る