iPS細胞物語

第6回 iPS細胞、待望の誕生-1 iPS細胞の誕生

掲載日:2009年4月20日

2006年8月10日、世界トップの学術誌「Cell」に「マウスの皮膚細胞に4個の遺伝子を導入し、多能性幹細胞をつくった」という論文が掲載されました。京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授が取り組んできた研究が実を結び、世界で初めての人工多能性幹細胞「iPS細胞」誕生が報告された瞬間です。今回は山中教授がiPS細胞開発に至った経緯を追ってみましょう。

山中教授の研究は「マウスの分化した体細胞とES細胞(第5回参照)を電気的に融合させたところ、体細胞が多能性(第3回参照)を獲得した」という、同研究所の多田高准教授が行った実験結果からヒントを得ています。この実験結果から山中教授はES細胞の中には分化した細胞を多能性にする何かが存在しているのではないかと考え、ES細胞の中で働き、分化した細胞では働いていない遺伝子のリストアップにとりかかりました。
ヒトの遺伝子は2万2千個を超え、それぞれが多能性に関わっているかを判定していく実験は気の遠くなる作業です。そこで独立行政法人理化学研究所が公開しているマウスの遺伝子公共データベースを活用し、データベース上でマウスのES細胞で働き、分化した細胞で働いていない遺伝子を抽出した結果、100個程度までに候補を絞り込むことができたのです。

画像:ヤマナカファクター(山中因子)・iPS細胞・多能性細胞

その後、特定の遺伝子を破壊した実験用ノックアウトマウスを使ってこの100個の候補遺伝子の働きを調べ、候補遺伝子をさらに24個までに絞り込みました。次にこの24個の遺伝子すべてを、遺伝子の運び屋「レトロウイルスベクター」を使ってマウスの皮膚細胞に送りこんだところ、見事に皮膚細胞は初期化され、ES細胞と同じく多能性を持った細胞を作りだすことに成功したのです。

この24個の遺伝子を一つずつ皮膚細胞に導入して細胞が初期化されるかを検証しましたが、どの遺伝子も単独で細胞を初期化することは不可能でした。そこで24個の遺伝子から一つずつ抜いた23個の遺伝子を皮膚細胞に導入し、細胞が初期化されない場合は抜いた遺伝子が細胞の初期化に必須の遺伝子である可能性が高いという考え方により、遂に細胞の初期化に必要な、たった4個の遺伝子を特定することに成功したのです。

その遺伝子とは、「Oct3/4(オクトスリーフォー)」、「Sox2(ソックスツー)」、「Klf4(ケーエルエフフォー)」、「c-Myc(シーミック)」の4つで、ヤマナカファクター(山中因子)とも呼ばれています。この4個の遺伝子を分化した細胞に導入すると、細胞の初期化がおこり、ES細胞と同じく多能性を持つ細胞が作り出せることが実証されました。
こうして、山中教授は細胞の初期化を引き起こす遺伝子を突き止め、人工の多能性幹細胞「iPS細胞」が誕生したのです。

次回は共に多能性を持つES細胞とiPS細胞を比較し、今後の再生医療界を見通します。お楽しみに!

制作 : 株式会社リバネス

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