iPS細胞物語

第3回 iPS細胞誕生の背景-2 生物の体はなぜ再生できるのか?

掲載日:2009年3月2日

画像:プラナリアの再生

プラナリアの再生

画像:イモリの再生
イモリの再生

ナミウズムシをご存知ですか?

比較的水質の良い湧水や河川に生息している生物です。英名の「プラナリア」と聞けば多くの方がその可愛らしい姿を思い浮かべるのではないでしょうか。
このプラナリア、断片に切り分けても、それぞれが一匹のプラナリアとして全身を再生できるという特徴があります。1933年にノーベル賞を受賞したトーマス・ハント・モーガン(1866~1945)による、273分の1のプラナリア断片から1匹のプラナリアが再生したという報告が、現在でも最も細かい断片から個体を再生した記録となっているようです。

また、両生類のイモリもその脚や尻尾、更には眼のレンズも再生が可能であることが知られています。
それに比べて我々人類は手足を失えば二度と再生することはありません。その違いは何から生まれるのでしょうか。今回は生物の再生の秘密に迫ります。

ヒトにもプラナリアほどではありませんが、体を再生する力があります。
例えば、垢。垢とは数十日のサイクルで脱落する皮膚表面の表皮細胞ですが、脱落した分は再生され、表皮は薄くならずに一定の厚さを保っています。転んだときにできるすり傷や切り傷も数週間で治りますし、骨折は数カ月で骨が繋がり、つめや髪の毛も切ればまた伸びます。
このようなヒトの再生能力ですが、限界があります。手足どころか、一本の指すら再生することはできません。
断片から体全体を再生できるプラナリアと、指一本再生できないヒト。この差のカギを握るのは「幹細胞」と呼ばれる細胞です。

幹という文字は樹木の幹を意味します。樹木では幹が中心となり枝や葉が伸びますが、実は細胞も同様に幹となる細胞から様々な種類の細胞が派生して生まれます。
幹細胞とはこの幹となる細胞のことで、幹細胞からいろいろな種類の細胞が生み出されます。
プラナリアの体には、この幹細胞が体全体に散らばっていて、切断されると体中の幹細胞が筋肉や神経などを作る細胞になり、失った部分を再生します。
幹細胞から何らかの機能を持つ細胞に変化することを生物学では「分化」といい、プラナリアの幹細胞のように体を構成するすべての細胞に分化することが出来る性質を「全能性(TOTIPOTENCY)」と呼んでいます。

ヒトでも幹細胞は体全体に散らばっていますが、それら幹細胞は全能性を持っていません。
しかし卵子と精子が合体し一つになった受精卵は全能性を持ち、全能性は分裂を重ねるうちに失われます。分裂が進むにつれて徐々に専門性を持つ細胞に分化し、最終的には270種類にも及ぶ細胞へと専門化するのです。
この分化の過程で、体の場所ごとに異なる種類の幹細胞が作られます。例えば皮膚には皮膚の、腸には腸の幹細胞があるのです。
これらヒトの幹細胞はプラナリアの幹細胞のように全能ではないため、皮膚の幹細胞は皮膚の細胞にはなれますが、筋肉や神経の細胞にはなれないのです。このため、ヒトの体の再生には限界があるのです。
逆に言えば、再生医療の実現のためには、全能性を持つ細胞を作り出せばよいのです。このアプローチで様々な研究が進められています。

次回は分化して様々な機能を獲得し、他の機能を持つ細胞へ分化する力を失った細胞から、さまざまな細胞に分化できる状態に戻す「細胞の初期化」という概念に触れたいと思います。

制作 : 株式会社リバネス

関連動画

動画一覧を見る

ページトップに戻る

おすすめ動画

関連動画

  • 文部科学省
  • 科学技術振興機構
ページトップに戻る