iPS細胞物語


第2回 iPS細胞誕生の背景-1 生物を形作る細胞

掲載日:2009年2月18日

画像:ロバート・フック

ロバート・フック
(1635~1703)

—ゴムやばねのような弾性をもつ物体が変形するとき,その変形する大きさは加えた力の大きさに比例する—
1660年、イギリスの科学者ロバートフックが提唱した「フックの法則」。
彼はその功績から、40歳代でイギリス王立協会の初代事務局長に就任し、その後亡くなるまでその地位にあったと言われています。物理学の分野で誰もが知る法則を発見したフックは、生物学の分野でも偉大なる研究成果を残しています。それが、細胞の発見です。

フックは自作の顕微鏡でコルクを観察した際に、多数の中空の構造を発見しました。それは今考えれば死んだ細胞を囲む細胞壁なのですが、その構造のことを、小部屋を意味する "Cell(セル)"と命名したのです。
その後、他の科学者から植物や動物、ひいては全ての生物は細胞から成ることが提唱され、生物を構築する最小単位の呼称として"Cell"が定着しました。日本では江戸時代後期に美濃大垣藩出身の蘭学者、宇田川榕菴により「細胞」と訳されています。

画像:フックが自作した顕微鏡

フックが自作した顕微鏡

さてこの細胞ですが、基本的に細胞を囲む膜や染色体(DNA)、タンパク質合成に必要なリボソームと呼ばれる共通の構成要素を持っていて、1つの細胞で生命となる単細胞生物、さまざまな細胞が高度に連携しながら生命となる多細胞生物が存在しています。
例えば乳酸菌や酵母、大腸菌などが単細胞生物、植物や動物は多細胞生物です。我々人類も約60兆個【体重×1兆(個)と言われています】の細胞から構築される多細胞生物で、様々な働きを持つ細胞が集まり、繋がって組織となり、更に肺や心臓などの器官となって体の構造、機能を構成しています。
その種類は何と約270種類。皮膚の表面で体内へ細菌などの侵入を止めている角質細胞や、酸素を運ぶ赤血球、味を感じる味細胞や脳の指令を体の各部へ伝える神経細胞など、それぞれが特化した機能を持っています。

画像:コルクのスケッチ

コルクのスケッチ

これらの細胞は、もとを辿れば精子と卵子が受精した受精卵というたった1つの細胞です。
受精卵が分裂し、様々な機能を持つ細胞に変化(分化)していくことによって、細胞は多様な機能を得る代わりに、ある重要な機能を失ってしまうのです。そのせいで我々は体の一部を損傷した時にその部分を再生することができません。
自然界では細胞が一度この機能を失えば、取り戻すことができないと考えられていました。
そしてこの重要な機能失った細胞に、人工的にその機能を蘇らせた細胞が、iPS細胞なのです。

次回は多細胞生物でも体の損傷部分を再生できる、イモリやプラナリアを取り上げ、細胞が分化するに伴い失ってしまう重要な機能に迫っていきたいと思います。

制作 : 株式会社リバネス

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